↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声無きゼウスと冥府のハデス 〜学園最弱の僕は思考だけで無双する〜  作者: 狐月
【第一部】学園トーナメント・覚醒編 〜ボロスマホと嘲笑された少年が、0.000秒の思考で学園の頂点を踏み荒らす〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/30

第五話:【泥濘】―三十分の絶対領域と、神速の閃光―

「Fランクの怪物を炙り出すには、相応の『罠』が必要でね」


放課後の第一特別リング。周囲を鉄格子状のホログラム障壁が厳重に囲んでいた。

頼斗の目の前に立ちはだかるのは、2年生トップランカーの一角――神条じんじょう 錬牙れんが。2年生ランク第3位、使用端末は重装甲型のB+ランク『ヴァルカン』。


「生徒会から『十五分から三十分の長期戦に持ち込め』と命じられてな。お前の『瞬間発動』には種があるはずだ。プロンプトの隙を突く不意打ち……なら、最初から無敵のバリアに籠もればどうなる?」


『申請受諾。両者端末接続確認――学内公式デュエル、承認(APPROVED)。制限時間30分』


審判教員の声とともに、神条の頭上に巨大な防御プロンプトが多重展開された。


《プロンプト認識――【金剛神域イージス・ディフェンス】発動》


ガキンッ! と重厚な音が響き、神条の全身が層を成した超高密度のホログラム装甲に包まれる。

攻撃を一切行わず、ただ三十分間の時間切れによる『残存パラメータ判定勝利』を狙う、完璧な泥沼の耐久戦術。


「ハハハ! これで俺の防御強度は学園随一だ! お前の正体不明の奇襲も、この『絶対不可侵』を突破できなきゃ判定でお前の負けだ!」


(判定負け……っ!)


頼斗は両手でバキバキのスマホを固く握りしめた。

相手は攻撃してこない。ただ圧倒的な防御壁の奥で嘲笑っている。

『Z.E.U.S.』の思考直結(Zero-delay)は圧倒的だが、頼斗自身は「何を出力すればこの巨大な城を崩せるのか」という戦闘経験が圧倒的に不足していた。


時間の経過を示すカウントダウンが容赦なく削られていく。


[ REMAINING TIME: 24:15 ]

[ REMAINING TIME: 18:30 ]


(どうしよう……! 相手の装甲が厚すぎて、消すイメージが湧かない……! 思考イメージが曖昧だと、『Z.E.U.S.』でも出力がブレちゃう……!)


「どうしたFランク! 制限時間はあと十分だぞ! 声も出さずに震えてるだけか!?」


焦りで頼斗の額から冷や汗が流れる。

三十分という制限時間が、じわじわと首を絞める投げ縄のように頼斗の精神を削っていく。


[ REMAINING TIME: 05:00 ]


残り時間、わずか五分。

観客席の生徒たちから「なーんだ、やっぱり時間稼がれたら何もできないじゃん」「Fランクのハッタリか」と落胆の声が漏れ始める。


だが、極限の焦燥の中で、頼斗の思考は逆に冷たく研ぎ澄まされていった。


(イメージが湧かないなら……『城を壊す』んじゃない)

(あの装甲の……『分子の隙間』を、ただ通すんだ)


頼斗は目を閉じた。

相手の巨大な装甲、高密度のプロンプトエネルギー。そのすべてが『Z.E.U.S.』の解析視界の中で、ただの数値データへと還元されていく。


ビキッ――。


スマホのヒビ割れた画面から、漆黒と赤のデジタルノイズが溢れ出した。


[ SYSTEM: Z.E.U.S. FULL OVERRIDE ]

[ TARGET: AEGIS DEFENSE - ATOMIC PENETRATION ]

[ Direct Brain Synchronized: 120% ]


「な、なんだ……!? 端末のノイズが……!?」


神条が怯えたように後ずさる。

頼斗はゆっくりと目を開けた。そこには、泣き虫な中1男子の面影はない。


思考発動(Zero-delay)。


言葉はいらない。プロンプトの詠唱も、構成時間もゼロ。


(透過して――中心を叩け)


[ EXECUTION COMPLETE: 0.000s ]


ドッ……!!!!


空間が、歪んだ。

頼斗の指先から放たれたのは、破壊の力ではない。神条の『金剛神域』を構成するプロンプトの隙間を、完全に「すり抜ける」干渉波動。


「なっ……!? 装甲が……威力を殺してない……!? 貫通して――」


神条が叫ぶ猶予すら与えられなかった。

絶対の防御を誇る重装甲の内側、神条の胸元で直接ショックウェーブが炸裂する。


ズドォォォンッ!!


「がハッ……!?」


外側のバリアは一切傷つかないまま、内部の神条だけが激しい衝撃を受けて崩れ落ちた。

ホログラムの城が霧のように霧散し、神条は白目を剥いてリングに伏した。


[ REMAINING TIME: 02:15 ]

[ WINNER: YORITO TAKANASHI ]


「……はぁ、はぁっ……!」


頼斗は膝から崩れ落ち、荒い息を吐いた。

三十分の耐久戦を、残り二分で『概念の貫通』という次元違いの思考出力で粉砕してみせたのだ。


静まり返るリング。

審判教員は震える手で端末を握りしめ、二度目の [ NO PROMPT LOG ] を見つめて絶句していた。


「頼斗ぉっ!」


障壁が消えた瞬間、可憐な影が飛び込んできた。

白波葵だ。彼女は頼斗の小さな体を強く抱きしめ、その首筋に顔をうずめる。


「すごかったよ、頼斗……! 本当に、本当にかっこよかった……!」


歓喜の声を上げる葵。

だが――頼斗の背中に回された葵の指先が、怒りで白く強張っているのを頼斗は知る由もなかった。


(頼斗をこんなに疲弊させて……三十分も苦しめた『上層部』……絶対に許さない)


葵のポケットの中で、Aランク端末『ファントム』の画面が禍々しく赤黒く光る。

頼斗が『Z.E.U.S.』の力を魅せるたびに、葵の内に潜む『H.A.D.E.S.』の歪んだ支配欲が、着実にその産声を上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。