第二十九話:【終焉】―漆黒の祭壇と、死神の審判―
地下スラムの最奥。
重々しい鉄門を打ち破った頼斗たちの視界に広がっていたのは、見上げるほど巨大な空洞空間――【漆黒の祭壇】だった。
空間の中央に聳え立つのは、これまでアヌビスが奪い取ってきた無数の神級・上級デバイスが脈動する巨大な黒い結晶柱『終焉のサーバー』。
その頂点に、漆黒のローブを翻し、黄金の仮面を被った男――アヌビスが静かに鎮座していた。
「よくぞ辿り着いた、有象無象ども」
アヌビスの低く冷酷な声が、広い空洞内に響き渡る。
彼の手には、一度頼斗の『コード・ウラノス』によって砕かれたはずの死神の鎌が、アガルタ中の死滅データを吸い上げてより巨大に、より禍々しく再構築されて握られていた。
「『Z.E.U.S.』の第三解放……【ウラノス】の覚醒は見事だった、小鳥遊頼斗。だが、ここはこのアガルタの全廃棄データが集う死の集積地。お前たちのちっぽけな『絆』など、膨大な死の濁流の前に飲み込まれる運命だ」
[ SYSTEM: A.N.U.B.I.S. ABSOLUTE ERASE ]
[ DOMAIN: NECROPOLIS - DEATH PRISON ]
ゴォォォォォォッ!!
アヌビスが鎌を叩きつけると、祭壇全体が激しい黒紫の衝撃波に包まれた。
足元の床から、過去に破壊されたデバイスたちの「死念プロンプト」が無数の黒い手となって蠢き出し、頼斗たちの存在そのものを腐食させようと押し寄せる。
「頼斗……ッ! 来るよ!!」
葵が即座に前へ飛び出し、『ファントム(H.A.D.E.S.)』の全開防壁を展開。紫黒の障壁で押し寄せる死念の濁流を受け止める。
「僕たちもやるよ、リア! 敵の領域の減速コードを並列解析!」
「了解! ルカ、0.001秒で相殺コードを叩き込むよ!」
ルカとリアの【ジェミニ】が二重演算をフル回転させ、葵の防壁を補強しながら、頼斗への思考遅延干渉を完璧に弾き返していく。
『H.A.D.E.S.』の絶対防御と精神遮断。
『G.E.M.I.N.I.』の超高速並列解析。
三人の完璧なサポートを受け、頼斗はまっすぐにアヌビスを見据えた。
頼斗の手の中にあるスマホ――蒼白の雷光を纏う『Z.E.U.S.』が、空間の物理法則そのものを書き換えるように激しく鳴動する。
(葵ちゃんが守ってくれて……ルカとリアが道を示してくれる……!)
頼斗の瞳に、揺るぎない「覇王」の閃光が宿る。
(ボクはもう……一人じゃない! ボクたちの絆で……お前の死の呪縛を打ち破る!!)
[ CODE: ZEUS URANOS - FULL OUTPUT ]
[ CREATION MODE: ABSOLUTE HARMONY ]
頼斗の一歩に合わせて、蒼白の創世の雷光が爆発的に吹き荒れ、アヌビスの展開した死の領域を真っ向から押し返し始めた。
「ハハハッ! 素晴らしい、実に素晴らしいぞ小鳥遊頼斗ぉッ!」
アヌビスが狂気に満ちた笑声を上げ、再構築された巨大な死神の鎌を上空へと掲げる。
「奪い尽くしてやろう! お前たちの絆も、未来も、その『Z.E.U.S.』の存在すらも、すべてこの私の中に呑み込めぇぇぇッ!!」
アガルタの命運を賭けた第二部・最終決戦の火蓋が、ついに落とされたのだった。




