第二十八話:【深淵】―腐食の迷宮と、絆の突破線―
「ここから先が、光の届かない街――【旧地下回廊】だ」
ルカの言葉とともに、重厚な鉄格子が軋んだ音を立てて跳ね上がった。
足元を流れるのは、緑色に怪しく発光する廃棄プロンプトの泥水。
頭上を張り巡らされた無数の高圧ケーブルからは、パチパチと火花とノイズが撒き散らされている。上層部の華やかなネオンとは対照的な、データと廃材の墓場だ。
「……空気が重いね。プロンプトそのものが毒みたいに腐食してる」
葵が手元の『ファントム(H.A.D.E.S.)』の出力を微調整し、紫黒の薄い防壁で頼斗たち全員を覆う。
だが、暗がりの中からジジジ……と不気味な起動音が幾重にも響き渡った。
「ヒヒッ……迷い込んできたぜ、上層部のお坊ちゃんたちがよぉ!」
「アヌビス様へのお土産だ! そのデバイス、置いていきな!!」
闇の中から現れたのは、顔をサイバーマスクで覆った数人の『闇のデュエリスト(ネクロシス構成員)』たち。
彼らが掲げた不法改変デバイスから、空間の物理法則を無視した【違法ノイズ罠】が一斉に解き放たれた。
通路の壁や天井がウニのように歪み、鋭いデータの刺突となって頼斗たちへ襲いかかる。
「頼斗、下がって! 罠の解析は僕たちがやる!」
「ルカ、並列演算スタート! 罠の制御コード、0.002秒で解読!」
ルカとリアの【ジェミニ】が青と赤の光を放ち、二人の脳波が同調する。
「左の壁の刺突、判定コードは『0x4F』! 葵さん、そこを遮断して!」
「了解ッ……! 『H.A.D.E.S.』・精神干渉切断!」
葵の紫黒の波動がルカの指し示したピンポイントのノイズを正確に打ち消し、襲いかかるデータの刺突が一瞬で煙となって弾け飛んだ。
「なっ……罠が一瞬で破られただと!?」
動揺する闇のデュエリストたち。
その隙を、頼斗は見逃さなかった。
頼斗の手の中で、再創世された『Z.E.U.S.』が蒼白の極光を放つ。
(言葉も、予知も要らない……ただ、道を開く!)
[ CODE: URANOS - CREATION ]
頼斗は一歩踏み出し、まっすぐに手を翳した。
[ EXECUTION COMPLETE: 0.000s ]
ズガァァァァァンッ!!
遅延ゼロ、不可避の蒼き概念衝撃波が地下通路を一直線に駆け抜けた。
闇のデュエリストたちが展開していた違法障壁も、不法改変デバイスも、まとめて存在の定義を奪われて一瞬で粉砕・沈黙する。
「グアァァァァッ!?」
「バ、バケモノかよ……っ!?」
闇のデュエリストたちは蜘蛛の子を散らすように地下の暗がりへと逃げ去っていった。
「すごい……頼斗の『コード・ウラノス』、以前よりずっと身体に馴染んでる……!」
リアが感動したように目を輝かせる。
「うん……葵ちゃんやルカ、リアがボクの周囲を守ってくれてるから、ボクは攻撃だけに全神経を集中できるんだ」
頼斗は蒼く輝くスマホを力強く握り直し、前方の真っ暗な闇の奥を見つめた。
その深淵の先で、アヌビスの冷酷なプレッシャーが徐々に高まっていくのを感じる。
「みんな、行こう! アヌビスのいる最深部へ!」
「「「おう!!」」」
頼斗(創世の超火力)、葵(絶対防御と妨害)、そしてルカ&リア(高速解析と並列サポート)。
完璧な役割分担を果たした四人の絆は、地下スラムのあらゆる罠を破り、ついにアヌビスが待つ【漆黒の祭壇】へと進撃していくのだった。




