第27話:【誓明】―繋がる絆と、深淵への梯子―
新拠点のコンソールルーム。
窓の外には、アガルタの不夜城が放つ眩いネオンが広がっている。
「本当に……ごめん、僕たちのせいで頼斗や白波さんまで命を落としかけて……」
「ごめんなさい……僕たち、プロンプト・ネクロシスの恐ろしさを甘く見てた……」
応急手当を終えた銀髪の双子、ルカとリアが深々と頭を下げた。
手の中で沈黙を守る二人の【ジェミニ】は、アヌビスの侵食によって機能が停止しかけていたが、頼斗が放った『コード・ウラノス』の蒼雷の余波(再構築コード)によって、奇跡的に最悪の破損を免れていた。
「顔を上げてよ、ルカ、リア」
ソファから立ち上がった頼斗は、まだ全身に痛々しい包帯を巻きながらも、穏やかな笑みを向けた。
「ふたりが無事でよかった。それに、僕たちがアヌビスの攻撃を退けられたのは、最後までルカとリアが諦めないでいてくれたからだよ」
「頼斗……」
葵も温かい紅茶のカップを二人に差し出し、優しく頷いた。
「ボクたちはもう、アガルタで争う敵同士じゃないでしょ? ……でしょ、頼斗?」
「うん! これからは『仲間』だ」
頼斗がまっすぐに差し出した手に、ルカとリアは目を見開き、そしてポロポロと涙をこぼしながら、その手を力強く握り返した。
「ありがとう……小鳥遊頼斗、白波葵! 僕たちの力、全部君たちに貸すよ!」
「僕たちの【ジェミニ】の並列演算なら、地下スラムの不法プロンプト障壁も解析できる!」
「よし、それなら早速作戦会議だ」
ルカが新拠点のホログラムモニターを操作すると、アガルタの立体マップが展開され、その最下層――光の届かない黒い落ち窪みが赤く明滅し始めた。
「アヌビス率いる『プロンプト・ネクロシス』の本拠地は、アガルタの地下最深部……【旧地下回廊】だ」
リアが画面上の構造図を指でなぞる。
「あそこは街の排熱と廃棄プロンプトが渦巻く完全な無法地帯。アヌビスはそこに各国のデュエリストから奪い取ったデバイスを集め、十二神将を束ねる『絶対言語プロンプト』を完成させようとしているみたい」
「十二神将の統合……。そんなことをさせたら、この街だけじゃなく、世界中のプロンプトシステムが死滅させられる……!」
葵が手に握る『ファントム(H.A.D.E.S.)』の出力を確かめるように、鋭い視線を画面へ注ぐ。
頼斗はポケットからスマホを取り出した。
幾重ものひび割れが消失し、神秘的な蒼い光を宿した『Z.E.U.S.』。
アヌビスの消去を跳ね返した『第三解放』の力が、静かに、だが確実に頼斗の脳と共鳴していた。
(言葉を上書きするんじゃない……存在そのものを創り出す力。これなら……アヌビスの消去コードにも抗える!)
頼斗は固い決意を込め、仲間たちを見回した。
「行こう、みんな。プロンプト・ネクロシスの野望を打ち砕いて、アガルタに……ボクたちの未来を取り戻すんだ!」
「「「おおっ!!」」」
頼斗、葵、そして新しく加わったルカとリア。
『Z.E.U.S.』『H.A.D.E.S.』『G.E.M.I.N.I.』の三権限が集う最強のチームが結成され、一行はついに暗黒の深淵――地下スラムへの決戦へ向けて歩み出すのだった。




