第三十話:【創世の双星】―螺旋の極光と、黎明の明日―
「ハハハハハッ! 消え去れ、有象無象どもぉッ!!」
アヌビスの絶叫とともに、黒い結晶柱『終焉のサーバー』から吸い上げられた無数の死念プロンプトが、巨大な死神の鎌へと収束していく。
空間そのものがメキメキと音を立てて裂け、次元のヒビから一切の光を呑み込む【絶対消去】の黒い渦が噴出した。
[ SYSTEM: OMEGA ERASE EXECUTION ]
[ ALL EXISTING DATA: 0.00% TARGETED ]
「頼斗……ボクの全存在をかけて、この攻撃の『死念』をカットする……ッ!!」
葵が両目をカッと見開き、『ファントム(H.A.D.E.S.)』の限界を超えた紫黒の全開防壁を展開する。
だが、死神の鎌から放たれた黒い渦の前に、葵の防壁が激しく火花を散らし、幾重にも亀裂が入り始めた。
「葵さん、一人で背負わせない!! 僕たちの二重並列演算を……葵さんの防壁のデータ構造にリンクさせる!」
「ルカ、リア……っ!?」
「僕たちの思考波形を全部使って、絶対消去のノイズを完全に中和・解析してみせる!」
ルカとリアの【ジェミニ】が眩いばかりの青と赤の極光を放ち、二人の全精神波形が葵の『ファントム』へと流れ込んだ。
[ LINK RATE: 300% - GOD SYNCHRONIZATION ]
[ COMBINED SYSTEM: H.A.D.E.S. + G.E.M.I.N.I. ]
紫黒と青赤の三色の光が織りなす「絶対精神要塞」が完成し、アヌビスの【絶対消去】の直撃を真っ向から受け止めて食い止めた。
「ぐぁぁぁぁぁっ……!」「耐えて……見せる……ッ!」
血を吐きながらも、頼斗のために道を作り続ける葵、ルカ、リア。
「バカな……!? 私の【絶対消去】が……押し留められているだと……!?」
アヌビスが驚愕に目を見開く。その「絶対の隙」に、頼斗の一歩が踏み出された。
「みんな……ありがとう!!」
頼斗の胸の奥底で、創世の雷光が黄金と蒼白の螺旋を描いて限界突破する。
葵の「守り」、ルカとリアの「導き」。
三人の全精神データが、頼斗の『Z.E.U.S.』へと集約されていく。
言葉による命令も、未来の予測すらも超えた――『心と絆の再創世』。
頼斗の手の中で、バキバキだったスマホが真の姿を解き放ち、アガルタの天井を突き破るほどの蒼天の極光の柱となって天空を貫いた。
[ CODE: ZEUS URANOS - GENESIS MODE ]
[ EXECUTION COMPLETE: 0.000s ]
「創世の雷光――【真・創世撃】!!」
頼斗の手から放たれたのは、黄金・紫黒・青赤の四色の絆が一つに溶け合った、巨大な螺旋の極光大砲だった。
ドガアァァァァァァァァンッ!!
「な……なにぃぃぃぃぃっ!?」
アヌビスの【絶対消去】の鎌が、螺旋の極光に触れた瞬間に粉々に砕け散った。
勢いは止まらない。極光はアヌビスの身体を貫き、『終焉のサーバー』を破壊し、漆黒の祭壇そのものを包み込んでいった。
「私が……この私が『絆』などという不確定なバグに……破れるというのかぁぁぁぁッ!?」
アヌビスの叫びとともに、黄金の仮面が砕け散る。
アガルタの地下を覆っていた死と腐蝕の黒いノイズが、頼斗の放った蒼天の光によって一瞬で洗い流され、清らかな光となって消滅していった。
エピローグ:黎明のアガルタ
地鳴りが止み、崩れかけた祭壇に静寂が戻った。
『終焉のサーバー』は消失し、アヌビスの姿はどこにもなかった。
ただ、アガルタ中の死滅しかけていたデバイスたちが息を吹き返し、空中回廊に暖かな本来の街のネオンが一つ、また一つと灯り始めていく。
「勝った……んだよね……?」
リアが呟き、ルカと顔を見合わせる。
「うん……僕たちの勝ちだ……!」
二人は笑い合い、そのまま膝から崩れ落ちそうになった葵を頼斗がしっかりと抱きとめた。
「頼斗……やったね……」
「うん、葵ちゃん。みんなのおかげだよ」
頼斗の手の中で静かに輝く『Z.E.U.S.』。
崩れた天井の隙間から、アガルタの夜空を切り裂いて、澄み渡る黎明の光が四人の顔を優しく照らし出していた。
闇の組織『プロンプト・ネクロシス』の野望を打ち砕き、頼斗たちは自らの絆でアガルタの未来を創り出したのだった。
ー第二部・完ー




