第二十一話:【情報】―水面下の覇権と、十二神の座標―
「よし、接続完了。神代さんから預かった暗号化データを展開するよ」
新拠点のメインコンソール。頼斗がホログラムカードをスロットへ差し込むと、リビングの中央に巨大な立体ホログラムマップが浮かび上がった。
アガルタの立体都市模型を中心に、無数のデータウィンドウとデュエリストたちの高解像度顔写真、そして禍々しい神々の紋章が展開されていく。
「これが……アガルタの裏に潜む『十二神将デバイス』の分布データ……!」
葵が温かい紅茶の入ったマグカップを片手に、頼斗の隣に並んでモニターを見つめた。
「聖プロンプト学園にいた頃とは、スケールがまるで違うね。学園はただの『テストエリア』で、ここアガルタこそが本実験場ってわけだ」
頼斗はモニターをスワイプし、アガルタを牛耳る主要な三大勢力のデータを画面中央へ引き寄せた。
「神代さんのメモによると、アガルタは大きく分けて三つの区画に分かれていて、それぞれに『オリジン』の所有者が君臨しているみたいだ」
ホログラムマップの「ウォーターフロント区」が青く発光する。
「まず、港湾部と地下水路網を完全に手中に収めているのが【ポセイドン(P.O.S.E.I.D.O.N.)】を駆る1年・海動航。彼らの勢力は『海洋派』と呼ばれていて、領域内のあらゆるデータを泥濘化・液体化させる流動侵食コードを使う」
「ボクの『H.A.D.E.S.』の催眠領域も、頼斗の『コード・アポロン』の未来予測も、思考の波形そのものを『水に沈められて遅延させられる』可能性があるんだね……」
葵の瞳が冷たく鋭い光を宿す。頼斗は頷き、次にマップ中央の「中央高層タワー区」を指し示した。
「そして、アガルタの経済と通信インフラを握っているのが、2年の双子・ルカ&リア。彼らの持つ【ジェミニ(G.E.M.I.N.I.)】は、二人の脳波を完全同調させて0.000秒の並列演算を行う。思考の処理速度だけで言えば、ボクの『Z.E.U.S.』と同等かそれ以上かもしれない」
「二人がかりで一つの思考を多重展開してくるなら……ボクの『H.A.D.E.S.』で片方の意識を妨害して、同調を乱すのが効果的かな」
葵は早くも頼斗との連携パターンを脳内で構築し始めている。
「そして……一番謎に包まれているのが、旧市街地の地下深くを拠点にする闇の組織『プロンプト・ネクロシス』」
マップの最深部が不気味な漆黒に染まり、仮面をつけた異形の男のシルエットとともに、血のような赤い文字が浮かび上がった。
[ CODE: A.N.U.B.I.S. - DEATH PROCESSOR ]
[ TARGET: RECOVERY OF ALL 12 ORIGIN DEVICES ]
「接触したデバイスのコードを永久的に破滅・消去する【アヌビス】……。彼らは他の神級デバイスを狩り、すべてを統合しようとしてるみたいだ」
「頼斗の『Z.E.U.S.』も、ボクの『H.A.D.E.S.』も、彼らにとっては最大の獲物ってことだね」
頼斗はバキバキのスマホを力強く握りしめた。
画面の奥で、『Z.E.U.S.』が黄金の粒子を静かに揺らし、アガルタのデータ空間へ向けて威嚇するように脈動している。
「相手がどれだけ強大でも、ボクたちは退かない。……葵ちゃん、明日から本格的に調査を開始しよう。まずはウォーターフロント区の『海動航』からだ!」
「ふふっ、了解だよ、相棒」
夜の静寂の中、二人は固い笑みを交わし合い、アガルタの頂点を目指す過酷な戦いへと意識を研ぎ澄ませるのだった。




