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声無きゼウスと冥府のハデス 〜学園最弱の僕は思考だけで無双する〜  作者: 狐月
【第一部】学園トーナメント・覚醒編 〜ボロスマホと嘲笑された少年が、0.000秒の思考で学園の頂点を踏み荒らす〜

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第17話:【絆】―解けた呪縛と、新しい歩み―

静寂に包まれた夜の学園医務室。

月光が差し込むベッドの上で、白波葵はそっと長い睫毛まつげを揺らし、目を開けた。


「……ん……っ」


かすむ視界の中、真っ先に飛び込んできたのは、ベッドの脇で丸いパイプ椅子に座り、自分の手を両手でぎゅっと握りしめたままうたた寝をしている頼斗の姿だった。


ボロボロの制服は応急処置が施され、顔や腕には痛々しい包帯が巻かれている。

だが、その寝顔はどこか穏やかで、己の戦いを最後までやり遂げた男の顔つきになっていた。


「頼斗……」


葵がかすれた声で呟くと、頼斗の身体が跳ねるように揺れ、すぐに目を大きく開けた。


「葵ちゃん……! 目が覚めたんだね……っ!」


「うん……。ボク、どれくらい眠ってた……?」


「半日くらい……かな。体調はどう? 痛むところはない……?」


必死な顔で覗き込んでくる頼斗に、葵は胸の奥が温かくなるのを感じた。

だが、すぐに神代錬次郎との決絶な敗北の記憶が蘇り、葵の表情が少しだけ陰る。


「……ごめんね、頼斗」


葵は握られた頼斗の手を、弱々しく握り返した。


「ボク、生徒会長を倒して頼斗を守るって言ったのに……負けちゃった。頼斗を一番近くで守る資格、ボクには無かったのかな……」


「そんなことないよ!」


頼斗は強く首を振った。


「葵ちゃんがボクを想ってくれてたのは、すごく伝わってた。でもね……ボク、分かったんだ。守られるだけの存在じゃ、誰も救えないし、本当の意味で一緒に歩けないって」


頼斗はポケットから、使い込まれてボロボロになったスマホを取り出した。

幾重にも傷が刻まれた画面の奥で、『Z.E.U.S.』の光が優しく温かな黄金色に揺れている。


「ボク、優勝したよ。生徒会長に勝ったんだ」


「え……?」


葵の目が丸くなる。


「ボクの力で……自分の脚で立ったんだ。だからね、葵ちゃん。これからはボクが君を守る。葵ちゃんが一人で全部の苦しみを抱え込んで、誰かを力で縛り付けなくてもいいように……ボクが隣で、君の腕を引っ張るから」


頼斗の瞳には、かつての弱々しさは微塵もなかった。

自分を縛り付けていた過保護な「檻」を突き破り、ひとりの対等な存在として言葉を紡ぐ頼斗。


葵は息を飲んだ。

歪んだ執着と執拗な支配欲で頼斗を囲い込もうとしていた己の愚かさが、頼斗のまっすぐな光によって優しく解かされていく感覚。


「頼斗……君、本当に強くなったんだね……」


葵の瞳から、ぽろぽろと大粒の涙がこぼれ落ちた。

それは悔し涙でも、狂気の涙でもなく、救われた少女の心からの涙だった。


「ズルいよ……そんな顔されたら、ボク……もう頼斗を子ども扱いできないじゃないか……」


葵は涙を拭い、照れくさそうに、でも今までで一番素直な笑みを浮かべた。


「おめでとう、頼斗。……ボクの大好きな、世界で一番かっこいい優勝者ヒーロー


「あはは……ありがとう、葵ちゃん」


窓の外では、夜空を彩る月明かりが二人を優しく照らしていた。


Fランクのポンコツと呼ばれた少年と、狂気の愛に囚われていた少女。

無数の死闘と激突を経て、二人の関係は「支配と依存」から、共に歩む「真のパートナー」へと、確かな一歩を踏み出したのだった。


―第一部・完―

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