第11話:【賽の目】―宿命のトーナメント表―
「全学年合同トーナメント――本選ブロック組み合わせ決定!」
中央コロシアムの巨大なホログラムモニターに、眩い光とともにトーナメント表が一気に打ち出された。
会場に詰めかけた数万人の生徒たちから、どよめきと悲鳴が巻き起こる。
「おい見ろよ……! Aブロックの頭に、あの『Fランクの怪物』小鳥遊頼斗がいるぞ!」
「Cブロックのトップは白波葵……あいつの試合、対戦相手が全員泡吹いて運ばれてるんだろ……?」
「そしてDブロックの山頂には……生徒会長、神代錬次郎!」
モニターを見上げる頼斗の瞳に、刻まれた名前が鮮明に映り込む。
【 Aブロック 】 小鳥遊 頼斗(1年) ──┐
├── 準決勝[第1試合] ──┐
【 Bブロック 】 3年最優秀ランカー ───┘
【 Cブロック 】 白波 葵(1年) ──┐
├── 準決勝[第2試合] ──┘
【 Dブロック 】 神代 錬次郎(3年) ──┘
「準決勝で……葵ちゃんと、生徒会長がぶつかる……?」
頼斗の胸が激しく高鳴った。
頼斗がAブロックを勝ち上がった場合、準決勝で待ち受けるのはBブロックの覇者。
そして、反対側のヤマ――Cブロックの葵と、Dブロックの神代錬次郎。二人が勝ち上がれば、準決勝の第2試合で『H.A.D.E.S.』と『オーディン』が激突する。
そして、その死闘を制した「最後の覇者」だけが、決勝戦で頼斗と対峙することになるのだ。
(葵ちゃんと生徒会長が、準決勝で……!?)
神代の『オーディン』が誇る【絶対言語(事象の強制書き換え)】。
葵の『H.A.D.E.S.』が誇る【精神催眠(思考の絶対支配)】。
もし葵が神代を破れば、決勝戦は「自分を過保護な狂気で支配しようとする幼馴染」との直接対決。
もし神代が葵を叩き潰せば、決勝戦は「学園のルールそのものを体現する絶対的な神」との最終決戦。
どちらに転んでも、頼斗にとって回避不可能な絶望のカードだった。
「ふふ……見て、頼斗」
背後から、すっと細く冷たい腕が伸びてきて、頼斗の首元を優しく抱きしめた。
白波葵だ。彼女は頼斗の肩に顎を乗せ、眩しいホログラムモニターを見つめながら、恍惚とした笑みを浮かべている。
「ボクが準決勝で生徒会長を『お掃除』してあげるね。あの人が頼斗に手出しなんてできないように、頭の中をぜんぶ真っ黒にして壊してあげる」
「あ、葵ちゃん……っ」
葵の吐息が耳元を掠める。その肌の冷たさと、体温の温もりのギャップに、頼斗の背筋が凍りつく。
「だからね、頼斗。君は安心してAブロックを勝ち上がってきて? 決勝戦のステージで、ボクが君を優しく迎えてあげるから。……君の腕も、脚も、その『Z.E.U.S.』も、ぜんぶボクの牢獄(H.A.D.E.S.)の中で守ってあげる」
(葵ちゃんは……本気だ。生徒会長を壊して、ボクを完全に自分のものにするつもりだ……!)
頼斗はポケットの中の『Z.E.U.S.』を強く握りしめた。
ヒビ折れた画面の奥で、第二解放の黄金の光が、静かに、だが力強く脈動している。
(負けられない……! 葵ちゃんにも、生徒会長にも! ボクは……ボクの力で、この戦いを終わらせてみせる!)
その時、遠く離れた生徒会専用観覧席から、神代錬次郎の冷徹な視線が二人へと注がれていた。
胸元のEXランク『オーディン』が、嵐の前触れのように重厚な金色の光を放っている。
神の思考(Z.E.U.S.)、冥府の支配(H.A.D.E.S.)、そして絶対の言語。
三つの頂点が激突するトーナメント本選の火蓋が、ついに切って落とされようとしていた。




