第25話 三者三様
部屋に入ると、車椅子に座った状態の真紀の姿があった。
「お母さん?でいいのよね。」
真紀は真紀のカラダに話しかける。
「そうよ、真紀。」
真紀のカラダから発する真紀の声なのに、そこにしっかりと母の意志があるのが伝わってくる。
瞬間、真紀の頬を涙が伝わる。
「お母さん、ごめんね。お母さんにつらいことばかりさせちゃって…。」
ワタシのカラダは静かに首を横に振り、包み込むような優しい目を向けてくる。
やばっ。真紀ってこんな素敵な表情ができるのね。元に戻れた時のためにちゃんと覚えておかなきゃ。
引き寄せられるように近付くと、ワタシのカラダに優しく抱き寄せられる。
んな゛っ!?何かしら。このカラダの奥から込み上げてくるような得も言われぬ気持ち良さというか悦びというか…あ、これって一人エッチでイっちゃうときの感じに似てるんだ。
「真紀…あんたなんて顔してんのよ。」
気が付くと母が蔑むような目で見てた。こんな顔もできるのね。覚えとこ。
真紀は我に返るとさっきの感覚について考えてみた。
ここまでリハビリを続けてきたけど、美紀のカラダは相変わらず意識外から触られることに慣れることはなかったわ。
それどころか、感覚が馴染むにつれて絶対恐怖領域に入らせまいと過剰に反応しちゃうようになったわよ。
なのに、さっきは吸い寄せられるように自分から近付いて、剰え抱きしめられてイっちゃうなんてどういうことよ。
母だから抱かれるのを拒否してないってぐらいなら理解できるけど、イっちゃうのはさすがにドン引きよね。
「自分に抱かれて軽くイっちゃうなんてとんだ変態さんね。違うか。美紀の真紀好きにも困ったものね。ここまでだったとは思ってなかったわ。」
母にはすべてお見通しだったようだ。
え?そういうことなの。美紀、あんたってばそんなに真紀のこと好きだったの!?
そうしてる間にも母は美紀のカラダをあちこち擦ってくるが、美紀のカラダは嫌がるどころか心地よさに打ち震えているようだわ。
「ちょっとやめてよ、お母さん。娘をイかせてどうしようってのよ。」
なんとか踏み止まって母を制止したところで、母の姿の美紀が車椅子で士郎に連れられて入って来たわ。
「美紀、あんたまだ車椅子使ってるの?そのカラダ、腎臓摘出しただけなんだからとっくにそんなもの必要なくなってるはずでしょうが。」
その様子に母が鋭く切り込む。
「だって…。」
「だってナニよ。士郎さん、あなたもちゃんと美紀に言い聞かせたのかしら。しっかりしなさい。どれだけ経ってると思ってるのよ。」
ワタシが母や士郎をしかりつける様子を見ることになるとは夢にも思わなかったわね。
母の姿の美紀は今にも泣きだしそうな顔をするし、士郎はアワアワしちゃってるしで見たことのない空間が広がってるのがとても不思議で思わず吹き出しちゃったわ。
そんな真紀に母が声をかける。
「真紀、美紀に言いたいことあるんじゃないの。この際だから全部吐き出しちゃいなさい。」
確かに次に美紀に会った時に何を話そうか、この三週間いろいろ考えてはいたの。
でも母の姿でしおらしくしている美紀を見たら、なんかもうどうでもよくなっちゃった。
「美紀、一言だけいい?」
「なに?」
母が涙目ながら真紀に向き直る。
その顔目掛けて思い切りアカンベェしてやる。
「バーカ。美紀のカラダ返してあげないからね。」
「あ、いいわね。それ乗った。お母さんもこのまま真紀のカラダ使わせてもらうわ。」
「えー、どうして美紀がお母さんのカラダなのよ〜。酷すぎるよ〜。」
「どこがひどいのよ。病院の仕事も任せたからね。キリキリ働くのよ。お母さんは若い体を堪能させてもらうから。」
「美紀が真紀のカラダに入るはずだったのにあんまりよ。お母さん、先っぽだけでいいから代わってよ~。」
先っぽだけってどういうことなのかしら。
美紀って本当に何考えてるのか判んないわ。




