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第24話 炸裂

「カラダをうまく動かせないのって、脳移植がうまくいってないのかしら。」


「そんなはずはない。君の脳のために誠心誠意、つなぐべき神経や血管を丁寧に処置したのだから。」


士郎は誇らしげに胸を張って応えてみせるが、真紀(ワタシ)に対する申し訳なさとか何もないのかしら。

誇るより先に謝って然るべきだと思うのだけど。

そうよ。ここまで一度も謝罪の意を示してもらっていないじゃない。

この調子だと真紀(ワタシ)に対する罪悪感なんて微塵もないんじゃないかしら。

よし、決めたわ。カラダが思うように動かせるようになったら、真っ先に士郎に一発いいのをお見舞いすることにするわ。


「目覚めた時はカラダを自発的にちょっと動かすこともできなかったわよ。声も出せなかったし。」


「脳がカラダに馴染むまで時間がかかるのかもしれないですね。そこら辺をもっと詳しく話していただけませんか。」


士郎が目をキラキラさせながら顔を近づけてきて情報の提供を求めてくる。

あくまでも脳移植の成果を追い求めるってわけね。

とんでもない男ね。今更ながらちょっとキモイわ。

真紀(ワタシ)が元の自分のカラダに戻れたとしても、士郎と結婚生活を続けるなんてもう考えられないかも。


「ちゃんと話してくれないと、元に戻る再手術の時にまた同じことが起きることになりますよ。今のうちにいろいろデータを取っておけば、対策も立てられるかもしれないですし。だから、ね?」


真紀(ワタシ)が訝しげにしているのも構わずに士郎がぐいぐい詰めてくる。

この人、こんなに図々しいところあったかしら。

違うわね。多分、自分の興味のあるものに対して真っ直ぐなだけだったのね。

真紀(ワタシ)と結婚したのも、真紀(ワタシ)と美紀の脳移植をしたかっただけなんだわ。

真紀(ワタシ)に優しいと思っていたのも真紀(ワタシ)の完全な勘違いなのね。

さっきも「君のため」じゃなくて「君の脳のため」なんて言ってたじゃない。

士郎はずーっと「真紀(ワタシ)」じゃなくて「真紀(ワタシ)の脳」を見てたのね。

そうと気が付けば真紀(ワタシ)が余計なことを考える必要なんてこれっぽっちもないわね。

仕方がないので覚えている限りを話して、今後の検査にも積極的に協力することにしたわ。

もう一度脳移植が行われるなら、問題点が解消されているに越したことはないものね。

ただし、いいのをお見舞いするのは一発じゃ済まさないわ。

デンプシーロールからの連打を覚悟することね。

ある程度カラダが動くようになったらジムに通いましょ。

近くに良いジムあったかしら。


それからあっという間に三週間が過ぎ、真紀(ワタシ)は行動の自由を手に入れると見事なまでの復讐を成し遂げたわ。もちろん士郎に対してよ。

思いっきりデンプシーロールからの連打をお見舞いしてやりたかったけど、士郎の脳に万が一後遺症でも残ったら再手術に影響しちゃうから我慢したのよ。

真紀(ワタシ)の病室に入ってきた士郎の後ろにそっと忍び寄って、股間を思い切り蹴り上げてやったわ。


「う゛っ。」


士郎は呻き声をあげてその場に蹲ったわ。「いい気味ね」と思ったけど、後ろにいた人間が誰だかわかると半ば嬉しそうな顔をするのがとても気持ち悪かったわね。

どういう心境だったのかしら。真紀(ワタシ)にはどうでもいいことだし知りたくもないけど。


「なんで僕がこんな目に遭うのか判らないですけど、真紀が喜んでくれるなら受け入れようじゃないか。」


あら、真紀(ワタシ)ってばそんな表情してたのかしら。へー、そうなんだ。


「それじゃあ、由紀さんと美紀さんに会いに行きましょうか。」


この三週間で、真紀(ワタシ)のカラダの治療もほぼほぼ終わったわ。

ここまで母の中の美紀、真紀(ワタシ)の中の母と一度も会っていなかったけど、今日はこの後、三人で会うことになってるの。

どういう結末になるのかしらね。


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