第22話 もう一つの真実
士郎の今さっきの言葉を改めて噛みしめつつ、真紀は核心に迫る質問をした。
「士郎さん。これはいつからの計画なの?」
士郎の表情が再び硬直するが、直ぐに諦めの境地というか、いつも通りの表情になり、静かに口を開いた。
「今更しらばっくれても意味ないですよね。僕がこちらの病院に移ってくる前からです。」
そっかー。やっぱり、士郎は最初から美紀とグルだったのね。
そんなこととは露知らず、真紀ったらバカみたいじゃない。
まんまと二人の思うままに結婚しちゃって、自分の除膜式はしてもらえず、脳みそを入れ替えられちゃって除膜済みのカラダになっちゃうなんて、あんまりにもあんまりだわ。
え?気にするべきところはそこじゃないって?そんなことなくない?真紀にとってはかなりというか、寧ろ最重要事項よ。
「それで、この後って真紀はどうなっちゃうのかしら。」
「…さぁ?」
何気なく問いかけたが、士郎はアメリカンホームコメディも真っ青になるくらいの惚けた仕草で応える。
「さぁ、ってどういうことよ。この後の計画はどうなってたのよ。こんな大それたことをしておいて、この先は何も考えてないなんてあるわけないじゃない。あってたまるもんですか。」
「僕としては、脳移植をすることと、したその後どうなるかを知ることが全てだったので。」
士郎は熱く語るわけでもなく、滔々と話す。
え゛?
本当に何も考えてなかったの!?
まさか嘘でしょ。
「美紀のカラダの真紀は、美紀として生きるの?それとも真紀として生きるの?それすら考えてなかったなんてことはないわよね。」
「そうですね、脳移植した後の人格がどうなるかすら不確定だったので、今後がどうなるかは本当に考えてませんでしたよ。完全に行き当たりばったりです。」
なんてことかしら。
それじゃあ、実験動物と何も変わらないじゃないのよ。
真紀はこの憤りをどうすればいいのかしら。
「あー。もちろん、ちゃんと皆さんの健康は維持するように努めさせていただきますよ。」
そんなの当たり前じゃないの。
医者としてはもちろん、家族としての最低限の責任は果たしてくれないと困るわ。
というかそれ以前に、やってしまったことへの道義的責任について、あまり感じてないっぽいのがかなり気になるわね。
「っていうか、できたら元通りにしてほしいんだけど。」
「というと、ご自分のカラダに脳を戻したいということでしょうか。」
「当たり前じゃない。」
「うーん、それは今直ぐにはちょっと出来かねます。」
「なんでよ。実際に真紀と美紀を入れ替えたんだから、元に戻すぐらいちゃちゃっとできるんでしょ。」
「ちゃちゃっとって…そんな簡単な手術じゃないですよ。ってそんなことではなくてですね、えーと、由紀さんと契約というか誓約したので。」
は?なんでそこでお母さんの名前が出てくるのよ。
それに、どうして自分のカラダに自分の脳を戻すのに母の許可が下りないなんてことになってんのよ。
そんなことでおけまる水産になると思ってんのかしら。
「わかったわ。士郎さんにお願いしてもダメだっていうなら、お母さんと話すからもう一度会わせてちょうだい。」
「うーん、それも今はちょっと無理ですね。」
「なんでよ。昨日は少しは話せたじゃない。」
あの後、更に具合が悪くでもなったのかしら。
「あー、昨日話された由紀さんですけど、実はあれ、中身は美紀さんなんです。」
へ?なんですと!?
真紀は美紀で、美紀は母!?
ということは母はどこにいっちゃったのよ。
もしかしなくても真紀のカラダ!?




