それは沸き立つマグマのように
それは、自宅の玄関前にあった。
いや、あるという表現はおかしい。
本来であれば、”いた”と表現するべきだ。
抱き合うように、うずくまる人達。
その人達の中で一番大柄なセミロングの女性が両腕で抱え込むように、長い髪の小柄な女の子と、短髪の中柄の女性を抱いていた。
だが、それは人というには、出来過ぎていた。
飛び抜けて美しいわけじゃない。
例えるなら、彫刻などの芸術品と同じだ。
作られたような、人間臭さを感じさせない存在達。
それが、俺の家の玄関前にあった。
デジャヴのような、奇妙な感覚がある。
『なんだ、これは?』
恐る恐る近づき様子を見るが、ピクリとも動かない。
生気はないが、死人にも見えない。
俺には───いや、俺だからこそなのかもしれないが───目の前のものが人形にしか見えなかった。
そう、これは”精巧に作られた”人間だ。
「ッ───」
ズクリと、心臓が疼く。
マグマのように沸き立つその疼きを抑えるように、胸をさする。
「くそ……」
嫌な気分が喉元まで湧き上がってきた。
こんなものを、見たからだ。
見てしまったから、疼くんだ。
こんな、”追い求めていた完成系”を見てしまったから。
「うぁ……」
突然ソレから発せられた声にビクリと体が跳ねる。
小さな小さな声。
その蚊の鳴くような声は、俺の目の前。
つまりは、玄関前に置かれたモノから聞こえた。
一番大柄なソレが、油の切れた人形のような動きで俺を見上げた。
「たす……けて……」
ガラス玉のような瞳が、俺を見つめる。
「追われ……て───」
不意に、ガクリと。
ビデオの一時停止を押したように止まる。
「……どうした?」
俺の問いかけに答えることもなく、虚ろな瞳が俺を見つめ続ける。
「……」
目の前で手を振るが、ソレは何も反応を返さなかった。
「止まった……のか?」
もう動かないソレを見ながら呟く。
「追われているって、何からだ?」
会話とも呼べないやり取りを思い出しながら、頭をかいた。
周りを見回す。
幸いというべきか、人の気配は無い。
「……はぁ」
ため息一つ。
「なんだよ、面倒なことになったな」
悪態をつくように呟くが、それが本心ではないことは自分でも分かっている。
胸の中の疼きが、いっそう激しくなる。
「二度と触れまいと思って捨て去ったものが、向こうから帰って来るとは。そういう運命なのか」
そう呟き、とりあえずは大柄なモノのまぶたを手で閉じ、腕を下ろさせる。
そして、大柄の腕の中から小柄を抱き上げる、が。
「お、重ッ!」
見た目には不釣り合いな重さ。
百五十センチメートルにも満たないであろう小柄な体に対し、体重は優に六十キログラムを超えているように思える。
「全く、こっちは仕事で疲れてるってのに……」
愚痴りながら、家の中へと運び込んだ。




