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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第4章 太平洋戦争編

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71.アメリカ分断

昭和17年(1942年)5月 東京砲兵工廠


 ハワイ北方の海戦で、日本海軍は敵艦隊を撃滅したものの、予想以上に大きな被害を受けた。

 その影響で停戦交渉も危ぶまれたが、ここでダメ押しの一手が成功する。


「なんか、東海岸が燃えてるんだって?」

「おう、伊500型潜水艦が、やってくれたらしいぞ」

「そっか~、さすが、慎二たちが苦労した潜水艦だね」

「まあな。これで停戦交渉に乗ってくれればいいんだが」


 日本海軍は西海岸と同様の作戦を、東海岸でも実行した。

 それは昨年、パナマ運河の破壊を成し遂げた、第10潜水艦隊によるものだ。

 5隻の伊500型潜水艦が、はるばる南米大陸を回りこみ、大西洋へと進出。


 その艦内には”晴嵐”攻撃機ではなく、8発もの”桜花”を搭載していた。

 つまり伊500型5隻で、40発の”桜花”を発射可能となるわけだ。

 さすがに”桜花”は撃ちきれば終わりだが、燃料や食料などはイギリスの基地で補給を受けられるようになっている。

 もちろんアメリカには内緒だが、おかげで第10潜水艦隊は、大西洋で活動が可能になった。


 アメリカに対しては、さらなる謀略も進んでいた。


「謀略課の方でも、停戦工作は進めてるんでしょ?」

「もちろんだ。主要都市で噂をばらまいて、ルーズベルトを追いこんでる」

「うわ、めっちゃ悪い顔してる」

「フ、人聞きの悪い」


 アメリカ国内ではビラや海賊放送を用いて、ルーズベルトの不正を糾弾していた。

 謀略課もここが勝負所と、現地資産をつぎ込んでいるそうだ。

 おかげでアメリカ市民の間では、これまでになくルーズベルトへの不信が高まっている。


 もちろん米政府は軍法の下、強引に取り締まっているが、それが余計に反感を煽る。

 このまま進めば、大統領の弾劾か内乱、一部州の独立など、何かが起こるかもしれない。

 日本の命運は、謀略課の働きに懸かっていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昭和17年(1942年)6月 東京砲兵工廠


「アメリカの南部と西部で、15州が合衆国離脱を宣言したぞ。アメリカ連合国の結成だ」

「おお、やったじゃん」

「これで停戦交渉も進みそうだね」

「ああ、すでにメキシコを通じて、外交ルートにも目処をつけてある」

「さっすがスパイオタク」

「オタク言うな。ま、これもみんなで、力を合わせてやってきた成果だ」

「だよな~。これまで本当に長かった」

「おいおい、まだ終わってないぞ」


 とうとう謀略課の工作が成功し、アメリカの一部が合衆国を離脱した。

 それはカリフォルニア、アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、フロリダ、ジョージア、サウスカロライナ、バージニア、オクラホマ、アーカンソー、テネシー、ノースカロライナの15州であり、アメリカ連合国を名乗っている。

 大統領にはカリフォルニアを地盤とする、ハーバート・フーヴァーが就任したそうだ。


「そうか、フーヴァーが大統領にね。彼は戦争に否定的だから、交渉はしやすいかな」

「ああ、たぶんな。ここは外務省の腕の見せどころだ」

「はあ、一日も早く、停戦して欲しい」

「ま、なんとかなるだろ」


 そう言う俺たちの顔は、とても明るかった。

 このまま連合国と講和すれば、合衆国とも講和できる可能性が高まるのだから。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昭和17年(1942年)7月 東京砲兵工廠


 その後、期待どおりにアメリカ連合国との交渉は進み、仮の講和が結ばれた。

 今後は細部を詰めて、正式な条約調印となる予定だ。


 これに対して合衆国は、抗議声明を出すと共に、軍で脅しを掛けようとした。

 しかし15もの州が集まった連合国だ。

 その人口は本来のアメリカの32%にもおよぶ。


 たしかに合衆国の方が工業力も高く、軍の大部分を握ってはいるが、それも一枚岩ではない。

 しかも連合国領出身の兵士から、故郷に銃を向けることを拒否する者が続出した。

 そのため陸海空の多くの部隊が、機能マヒに陥ってしまう。


 加えて厳重に情報統制されていた合衆国領にも、ルーズベルトの悪行が広まっていた。

 おかげで各地で抗議デモが発生し、連合国を攻めるどころではなくなる。


 ここに至ってようやく合衆国中枢からも、大統領に反旗をひるがえす者が現れた。

 大統領選の対立候補だったウェンデル・ウィルキーが、陸軍の一部と共謀し、クーデターを起こしたのだ。

 もちろんその陰には、我らが謀略課の暗躍があった。


 これによって、ルーズベルト派とウィルキー派に分かれた内乱が、ワシントンを中心に勃発。

 小規模な戦闘とにらみ合いが、1週間ほど続いた。

 そして6月末日、とうとうルーズベルト側に裏切りが発生し、ウィルキーが勝利したという。


「さっき合衆国から、正式に停戦の申し入れがあったそうだ。これで太平洋戦争は、終わったも同然だな」

「「「やった~!!」」」


 砲兵工廠の一角に、俺たちの歓声が響き渡る。

 臨時で大統領に就任したウィルキーが、ただちに日本へ停戦を申し入れてきたそうだ。

 ここに事実上、今世の太平洋戦争は、終結したことになる。

 1905年にタイムスリップして、取り組んできたことが成功裏に終わったのだ。

 これほど嬉しいことはない。


 しかし川島がここで釘を刺す。


「とはいえ、まだ大陸ではソ連と戦争中だ。ま、今回の講和で、ソ連も手を引く可能性は高いけどな」

「その分、ドイツのお誘いは強まるだろうけどな。もちろん、その話に乗るつもりはないんだろ」

「当たり前だ」


 ドイツからは内密に、ソ連を東西から攻め潰そうとの打診が来ていた。

 今後、アメリカと正式に講和できれば、その話はより現実味を帯びる。

 しかし日本は、そんな話に乗るつもりはない。


 元々、極東同盟は防衛のみの同盟関係であって、侵略を前提としていないからだ。

 正統ロシアの一部は領土の拡張を望むかもしれないが、日本がそれに協力する義理はない。

 たとえドイツと組んでも、強大なソ連と戦うのは非常に困難なのだから。


 逆にソ連も、東西に敵を抱え続けるのは苦しいだろう。

 いずれあちらから、停戦を持ち出す可能性は高い。

 おそらく極東同盟に有利な条件でも、停戦に応じるのではなかろうか。

 そうなればまたゆっくりと時間を掛けて、国力の増強に努めればいい。


「ま、なんにしろ今日はめでたい日だ。存分に祝おうぜ」

「「「お~っ」」」

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