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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第4章 太平洋戦争編

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66.パナマ運河を破壊せよ

昭和16年(1941年)6月 東京砲兵工廠


「アメリカはまだ、交渉の席に着こうとしないのか?」

「ああ、日本を非難するばかりで、話にならん」

「困った話だ。ま、これぐらいで講和に応じるなら、苦労はしないか」


 日本はあらゆる伝手を使って、アメリカに交渉を持ちかけている。

 しかし開戦以来、負けっぱなしのアメリカ政府は、意地になって抗戦を叫んでいた。

 西海岸の通商破壊と山林攻撃により、少なくないダメージを受けているはずなのだが、まだまだ意気軒昂だ。


「ねえ、情報部は長年、アメリカで諜報組織を育ててきたんでしょ。それで謀略を仕掛けられないの?」


 そんな中島の提案に、川島は呆れた顔をする。


「お前なぁ。謀略なんて、そんな簡単にできるもんじゃないんだぞ。たしかにアメリカ国内に資産(諜報組織)はあるけど、あっちのスパイ狩りも激しいんだ。下手に動くと組織ごと潰されかねないから、今は時期を窺ってるんだよ」

「そっかぁ……」


 大本営直轄の情報部では、10年以上前からアメリカへスパイを送りこみ、その支援組織も作っていた。

 現状でも敵の情報を集めたり、軽い噂を流すぐらいはやっているが、あまり派手な動きはできない。

 ルーズベルト指揮下のOWI(戦争情報局)が、やっきになってスパイ狩りをしているからだ。


 少しでも怪しい言動を見せた者は、容赦なく逮捕され、厳しい取り調べに遭うらしい。

 おかげで表向き、社会の不満は抑えられているが、市民の怒りが高まっているのも確実だ。


 そこで俺は川島に訊ねる。


「それで、パナマ運河攻撃は実行されそうなのか?」

「ああ、外交関係のチェックがようやく終わって、許可される見込みだ」

「南米の国とかに影響、ありそうだもんな。そりゃチェックは必要だ」

「軍部が暴走できないって点では正しいけど、ちょっとまだるっこしいね」

「まあ、そう言うなって。軍が国の統制下にあるってのは、正しい状態だ」

「そうなんだけどねぇ」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昭和16年(1941年)7月 東京砲兵工廠


「パナマ運河の破壊に、成功したって?」

「おお、なんとか成功したみたいやぞ」

「凄い成果じゃん。様子を聞かせてよ」


 そこからまた川島の説明が始まった。

 史実では伊400型潜水艦がやろうとした作戦だが、この世界の伊400潜はミサイル発射艦だ。

 そのため、より大型の伊500型潜水艦と、専用攻撃機が開発されていた。


【伊500型潜水艦】

全長・全幅:112✕10m

基準排水量:水上3000トン、水中5000トン

最大速力 :水上15ノット、水中16ノット

主要兵装 :45センチ魚雷発射管✕4門、魚雷数20本

      水密格納筒に攻撃機2機を搭載


 それは伊400型を、ひと回り大きくしたような潜水艦だ。

 史実の潜水空母(水中6560トン)よりは小さいが、攻撃機は2機搭載で性能も優れる。

 その攻撃機である”晴嵐”は、このような機体だ。


【零式水上攻撃機 ”晴嵐”】(フロート無し)

長さ・幅:10.6✕12.3m

出力  :1500馬力

最大速度:毎時560km

航続距離:1000km

武装  :12.7mm機銃✕2

     800kg魚雷もしくは800kg爆弾

乗員  :2名


 本来はフロートを備える水上攻撃機だが、今回はフロートを外して発進した。

 その方が80km/h以上も優速だし、帰還時には海面に不時着して、乗員を回収すればいい。

 機体内には浮袋が備えられていて、すぐには沈まない仕組みになっている。


 万一、余裕があれば機体も回収するが、今回のような作戦では一刻を争う。

 そのため最初から、廃棄を前提にして作戦を立てていた。


 この潜水空母5隻からなる艦隊は、作戦許可が出ると、直ちにミッドウェー基地を出港した。

 それは第10潜水艦隊と呼ばれ、途中までは潜水母艦も同行する。

 やがて母艦と別れると、艦隊は一路、パナマへと向かった。


 しかしミッドウェーからパナマまで、1万km以上もあるのだ。

 順調に水上を航行できても、半月は掛かる。

 そのうえしばしば、敵の哨戒機を避けて潜行しなければならなかった。


 幸いにも高性能な探知機を積んでいるので、敵の回避には苦労しない。

 そうして艦隊は7月初旬、無事にパナマ沖へたどり着いた。


「1万kmも航行したのか。乗員も大変だったろうな」

「ああ、だけど居住性に優れてるから、案外楽だったらしいぞ」

「いや、それでもすげえよ」

「まあ、そうだな」


 そこで第10潜水艦隊は、見事に役目を果たしたという。

 艦隊はまず、パナマ運河から100kmの位置まで接近し、浮上した。

 それから10機の晴嵐が飛び立ち、パナマ運河のミラ・フローレス閘門《こうもん》とペドロ・ミゲル閘門を破壊したのだ。


 もちろん、攻撃隊はすぐに探知され、それなりの出迎えは受けた。

 しかしさすがに潜水空母という発想はアメリカになく、いきなり出現した晴嵐隊に泡を食って、後手に回ったようだ。


 おかげで晴嵐隊は全機が生き残り、予定会合地点へと向かった。

 そしてシュノーケルで潜水航行していた母艦を見つけだし、無事に合流を果たす。

 母艦からは晴嵐を誘導する特殊な電波が出されており、合流もスムーズだったようだ。


 こうして第10潜水艦隊は、ほとんど犠牲も出さずに、パナマ運河の破壊に成功した。

 おかげで運河は最低でも、半年は使えないし、再建に要する労力も半端ではないだろう。


 それ以上に米海軍は、西海岸へ艦艇が回航できなくなり、計画は大混乱しているはずだ。

 これでまた一歩、講和に近づいたと信じたいものだが。

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