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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第4章 太平洋戦争編

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幕間:海中の放火犯

昭和16年(1941年)5月 ロサンゼルスから200km沖合


【木梨鷹一《きなしたかかず》】


 私は伊400潜の艦長を務める、日本海軍の少佐だ。

 それが何の因果か、今は太平洋を渡って火付けをしている。


「よ~し、潜望鏡深度へ浮上するぞ。到達しだい、アンテナと潜望鏡を展開」

「了解。潜望鏡深度へ浮上~!」


 私の指示に従い、伊400潜が浮上を開始する。

 潜望鏡深度に到達すると、すかさず電探・逆探のアンテナと、潜望鏡が海上に伸ばされる。


「逆探および電探に感なし!」

「よし、周囲に艦影もないな。海面に浮上して、”桜花《おうか》”をぶちかますぞ」

「了解。海面に浮上~。水雷班は配置に付け~!」


 すぐに海面へ出ると、乗員たちが慌ただしく動きはじめる。

 私もすかさず航海艦橋へ上がり、周囲の警戒に入った。

 ちなみに時刻は真夜中で、周囲は満天の星空だった。


 やがて水密格納筒が開かれると、”桜花”が引き出されてくる。

 この”桜花”とは、敵地攻撃用に開発した新兵器だ。


【零式飛行爆弾 ”桜花” 焼夷型】

長さ・幅・高さ:7✕5✕1m

最大速度   :毎時650km

航続距離   :250km


 それはジェットエンジンで250kmも空を飛び、敵地を焼き払う飛行爆弾である。

 ただし撃ったら誘導もできない運任せの兵器であり、精密な攻撃には向かない。

 当初は都市部に向けて撃ちこむ予定だったが、人道的にそれはまずかろうという話が出た。


 戦争をしているのに、人道も何もないと思うのだが、国際世論は無視できないそうだ。

 それで山林や農地を標的にすればいいとなり、爆薬を焼夷剤に代えた焼夷型が開発された。

 そんな桜花を運用するために造られた潜水艦が、この伊400型である。


【伊400型潜水艦】

全長・全幅:109✕9m

基準排水量:水上2180トン、水中3560トン

最大速力 :水上15ノット、水中16ノット

主要兵装 :45センチ魚雷発射管 艦首4門、魚雷数20本

      水密格納筒に桜花3機を搭載


 かつてないほど巨大で高性能な艦だが、それでやる事が放火とは、ちと情けない気がしたものだ。

 しかし今はその重要性を、しっかりと理解している。


「3号機、設置完了」

「よし、翼を伸ばして固定せよ」

「はっ」


 桜花をカタパルトに載せると、折りたたまれていた翼を広げて固定する。

 それを確認した水雷長が、次の指示を出した。


「翼展開よ~し。エンジン始動!」

「エンジン始動~!」


 エンジンに火が入ると、甲高いジェット音が響きはじめる。

 やがて十分に推力が高まったところで、発射命令が出た。


「発射!」

「発射!」


 油圧でカタパルトが作動すると、桜花がすごい勢いで撃ち出された。

 そのまま飛び上がると同時に、支えていた台車が分離して海中に落ちる。

 ちょっともったいない気もするが、迅速に発射するには、使い捨てが一番だ。


 桜花はグングンと高度を上げ、500mほどの高度で水雷長が指示を出す。


「よし、水平飛行へ移行!」

「水平飛行へ移行~」


 無線操作で桜花が上昇をやめ、水平飛行に入る。

 後はジャイロセンサーで高度を維持し、まっすぐ飛ぶだけだ。

 双眼鏡で桜花を見送ると、私は時計で発射に掛かった時間を確認した。


「だいぶ早くなったな、水雷長」

「はっ、恐縮であります」

「うん、ご苦労さん。それでは敵が来る前に、退散するとしよう。潜行準備」

「潜行準備~!」


 すぐに乗員が艦内に引っこむと、潜行を開始する。

 深度30mまで潜って水平航行に移り、その場を後にした。


「ふう、これでひと安心だな」

「ええ、水雷班もだいぶ手際が良くなってきたんで、安心して見てられますね」

「最初は手間取って、危うく攻撃されかけたからな」

「あれはヤバかったですね。まあ、敵さんも必死なんでしょうが」

「そうだな。俺たちはにっくき放火犯だ」

「ハハハ、しかし先に戦争を仕掛けてきたのは、あちらですからね。自業自得ですよ」

「まったくだ。さて、桜花も撃ち尽くしたことだし、母艦と合流しようか」

「了解です」


 その後、敵の哨戒圏を抜けると、浮上して母艦との合流地点へ向かう。

 新鮮な空気を吸えるのは、それだけで幸福と感じる。

 やがて連絡のついた潜水母艦”迅鯨《じんげい》”と、洋上で合流した。


 母艦がここまで出てきてくれるおかげで、ミッドウェー島まで戻らなくてすむ。

 護衛がついてるとはいえ、敵地の近くまで来てくれる彼らに感謝だ。


「お疲れさまです、木梨艦長」

「やあ、そっちこそ補給任務、ご苦労さん」


 迅鯨と接舷した我が艦は、ただちに補給を開始する。

 ”桜花”だけでなく、燃料や食料、日用品など、さまざまなものが艦内に飲みこまれていく。

 それを行う乗員たちの顔は明るい。

 これでまた新鮮で美味い飯が、食べられるのだからな。


 すると迅鯨の艦長が出てきたので、あいさつをする。


「どうも、佐藤艦長。いつもお世話になります」

「なに、最前線でがんばってる皆さんのためなら、火の中水の中ですよ」

「それは頼もしい。ところでアメリカの状況は、どうなってるか分かりますか?」

「木梨艦長たちのおかげで、大慌てだそうですよ。あちこちで山火事がおきて、右往左往しているようですな」

「それは何よりの知らせです。今後もがんばれますよ」

「ええ、がんばってください。こちらもお呼びとあれば、いつでも駆けつけますから」

「はい、またお願いします」


 どうやら我々の活動は、ちゃんと成果を挙げているようだ。

 これなら辛い任務にも、耐えられるというものだ。

 交替まであと1ヶ月ほどだが、気合いを入れていくか。

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― 新着の感想 ―
この時代に、ドローン爆弾を食わせられるアメリカ国民。爆音+炎、さぞかし怖いでしょうな。いずれワシントンも?
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