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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第4章 太平洋戦争編

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64.西海岸を脅かせ

昭和16年(1941年)2月 東京砲兵工廠


 ハワイ攻撃からすでに1ヶ月。

 日本海軍はミッドウェーを拠点として、潜水艦によるシーレーン妨害に勤《いそ》しんでいた。

 これでハワイへの補給はほぼ断たれ、物資不足が発生しているそうだ。


 そのためハワイの軍事施設復旧は進まず、敵の反撃も滞っている。

 爆撃機によるミッドウェー攻撃も無いではないが、近接信管を使った対空砲撃で撃退していた。

 逆にこちらの潜水艦基地は分厚いコンクリートで守られており、その機能を維持している。


 おかげで我が軍の潜水艦は、良好な状態でハワイ近海や西海岸を荒らし回っていた。

 それは魚雷による輸送船攻撃だけでなく、主要港への機雷敷設も合わせて、シーレーンにダメージを与えている。


 もちろん、アメリカも黙っているはずがなかった。

 航空機も動員して、大規模な潜水艦狩りを試みている。

 とはいえ、アメリカもまだ参戦したばかりで、大した対潜戦術などありはしない。


 対する日本の潜水艦は、レーダーや聴音機などの装備で5年は先を行っている。

 それに加え、潜水艦には魚雷攻撃用のアナログコンピューターを搭載していた。

 これは機械式の計算機だが、自動で魚雷に必要な諸元を入力し、命中率を高める事ができる。


 実はアメリカが開発したTDC(魚雷諸元計算機)のパクリなのだが、その命中率は日本やドイツとは一線を画すほどだ。

 大戦後期に日本の魚雷被害が異常に増えたのも、このTDCの働きが大きかった。


 そんな計算機も駆使して、日本潜水艦隊は通商破壊に励んでいた。

 このために量産された多数の潜水艦が、ミッドウェーから西海岸へ送りこまれたのだ。

 しかも使う魚雷は、45センチ径の通常魚雷である。


 これは99式航空誘導魚雷と多くの部品を共有するが、誘導機能が無い分、速度と破壊力を強化していた。

 そして低速で脆弱な輸送船には、これで十分な戦果が得られた。

 しかも従来の53センチ魚雷に比べ、体積は半分近くになるので、より多く搭載できる。

 まさに安い、速い、小さいの三拍子だ。


 一応、99式のような誘導魚雷も積んでいるが、これは敵の水上艦と交戦する場合のお守りみたいなものだ。

 基本的に我が潜水艦隊は隠密を旨とし、偵察と通商破壊に専念するためである。

 しかしそれでも敵に追い詰められる場合はあるので、いざという時は誘導魚雷で反撃する。


 おかげで西海岸のシーレーン攻撃は一向に収まらず、米船舶に多大な被害を出していた。

 そんな状況は、西海岸の住民にパニックを引き起こすのに十分だ。

 すでに太平洋艦隊の大半は壊滅し、さらにハワイの軍事施設も瓦礫と化している。

 次は自分たちの番かと、震え上がるのも当然であろう。


「それでアメリカの世論は、どんな感じなんだ?」

「だいぶ混乱はしているな。だけどまだ、停戦しようってほどでもない」

「陸上での被害は、まだないからなぁ。そうなると、例の作戦をやらなくちゃいけないのか?」


 川島に聞く限り、米国民はまだ停戦を言い出すほどではないらしい。

 そこでさらなる作戦が用意されているのだが……


「西海岸攻撃作戦な」

「だけどさすがに無差別で攻撃するのって、どうなの? 国際法的に、まずいんじゃない?」

「その辺はちゃんと考えてる。さすがに都市部は狙わないし、警告もする。なにより、先に無差別攻撃を始めたのは、アメリカだからな。日本がやられるばかりじゃないって事を、思い知らせる必要もあるんだ」


 開戦後まもなく、東シナ海や南シナ海では日本の商船が沈められていた。

 これは史実でもやられていた事で、アメリカが当初から国際法を守るつもりがないのは明らかだった。

 まさに”勝てば官軍”を、地で行く思考法である。


 そんな連中を相手に、きれい事ばかり言っていては、絶対に勝てはしないであろう。

 ただし、いたずらに海外の反感を買わないよう、それなりのプロパガンダ戦略は考えている。


「まずは西海岸に脅威を与えて、アメリカの厭戦気分を高めないとな」

「悪いのはルーズベルトなのにね」

「奴を大統領に再任したアメリカ国民にだって、責任はあるさ」

「まあ、そうなんだけど……」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昭和16年(1941年)4月 東京砲兵工廠


 一方、冬が明けて雪が溶けると、新たな動きも出てきた。


「ソ連が動きだしたって?」

「ああ、清の北部と、正統ロシアのチタに攻撃を仕掛けてきた。総勢で50万にもなるようだ。本間大将がロシアと協力して、防衛に当たっている」


 昨年暮れにウラン・ウデに集結していたソ連赤軍が、チタに攻めこんできた。

 共産モンゴルもそれに呼応し、清国に攻撃を加えている。

 しかし清国と正統ロシアも、十分に準備を整えていた。

 それに今村大将の満州方面軍に、本間大将のロシア方面軍、そして韓国軍も加勢している。


 しかしソ連軍の攻撃は、なかなかに苛烈だった。

 50万もの軍勢に大量の重砲、そして戦車も多く運用されている。

 戦車はT34やBT7などといったもので、決して侮れない性能だ。


 それに対し、我らが極東同盟も戦車を配備していた。

 以前、原少佐に見せてもらった試製3号戦車を基にした、95式中戦車である。

 これは試製戦車を実用的に改良し、1935年に制式化された。


 試製戦車よりもエンジン馬力を向上し、傾斜装甲を採用するなどして、防御力も増している。

 これを清国と正統ロシアに技術供与し、両国でライセンス生産した。

 現状、それぞれ200両ずつ配備されている。


 今のところ、敵戦車も初期型なので、なんとか戦えているようだ。

 しかし戦時の性能向上の勢いはすさまじいので、改良の手をゆるめることはできない。

 中島のサポートも受けて、さらなる新型の投入も進める予定だ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昭和16年(1941年)5月 東京砲兵工廠


 しかし大陸側の圧力は、早々に緩和されることになった。


「ドイツがソ連に攻めこんだんだって?」

「ああ、さすがはヒトラー。恥も外聞もないやり口だ」


 高確率で予想されてはいたが、やはりドイツがソ連に攻めこんだ。

 独ソ不可侵条約など、ヒトラーにとってはなんの意味もないのだろう。

 しかしスターリンもさすがで、備えを怠ってはいなかった。


 おかげで準備を整えた数百万人ものソ連軍が、それを迎え撃っている。

 今はウクライナの地で、独ソが殴り合いを繰り広げているそうだ。

 極東方面での戦闘も続いているが、これ以上の増援はないと見られ、なんとかしのげそうな状況だ。


「なんかソ連軍が思いのほか、踏んばってない?」

「ああ、俺もそう思う。どうも史実ほど、赤軍の粛清が進んでないらしいな」

「なんで?」

「どうやら正統ロシアの存在が、粛清の歯止めになったようだ。おかげで優秀な将校が、けっこう残っている」

「ああ、そういうこと」

「なるほどねえ」


 史実ではドイツ軍に蹂躙され、焦土作戦を展開するしかなかったソ連軍が、この世界ではかなり善戦していた。

 川島によれば、正統ロシア大公国という怨敵の存在が、スターリンの大粛清に歯止めを掛けたらしい。

 おかげで史実ほど粛清が進んでおらず、赤軍の戦闘能力も高いのだとか。


「この隙になんとか、停戦に持ちこめるといいんだが」

「ああ、だがアメリカは、まだまだしぶといぞ」

「だろうな~」


 いろいろと変わってしまっているこの世界だが、はたして日本の運命はどうなるのか?

 それはまだ、誰にも分からない。

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