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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~【改訂版】  作者: 青雲あゆむ
第4章 太平洋戦争編

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63.ハワイ攻撃作戦

昭和16年(1940年)11月 東京砲兵工廠


「ドーリットル隊の空襲はどうたったんだ?」

「少しだけ房総半島を爆撃されたが、人的被害はない。B25は全部落としたしな」

「そうか。防げたんなら、何よりだ」

「だよな~。だけど世論の冷却には、利用するんだろ?」

「そりゃあ、そうさ。アメリカの強大さを知らしめておいた方が、後々やりやすいからな」


 今月の初め、ドーリットル隊による空襲があった。

 未来を知る俺たちは、当然それに備えていた。

 洋上に潜水艦を含む哨戒網を構築し、敵の動きを監視していたのだ。


 史実ではこの哨戒艇にけっこうな被害が出たので、レーダー搭載の潜水艦を前線に配置した。

 その隙間を埋めるよう、やはりレーダーを積んだ哨戒艇に警戒させることで、敵を見失うことはなかった。

 そして各地に配備されていた戦闘機が出撃し、全機撃墜を成し遂げたって寸法だ。


 ただし大本営発表では、今後も敵の攻撃があり得ると、国民の不安をあおった。

 それはマリアナ沖の大勝で浮かれていた世論に、水を差すには十分だ。

 大本営はここぞとばかりにアメリカの強大さを説き、日本が困難な状況にあることを訴えた。



 そんな本土襲撃による動揺も落ち着いてきた翌月、今度は欧州で動きがあった。


「とうとうイギリスも参戦か」

「アメリカがマリアナ沖で、大負けしたからな。さすがに欧州戦線を支える余裕が、なくなったんだろうよ」


 アメリカが多大な援助を条件に、イギリスの対独参戦を引き出したのだ。

 元々、イギリスもドイツの暴挙には憤っていたのだろう。

 しかし第1次大戦の泥沼の記憶と、アメリカへの警戒感から参戦を思いとどまっていた。


 ルーズベルトはそんなイギリスに、かなり苛立っていたはずだ。

 しかしマリアナ沖の大敗で、フランスを支える余裕が無くなってしまう。

 そこでルーズベルトは兵器や物資を援助する代わりに、フランス戦線に加わるよう、イギリスへ要請したのだ。

 本来は後から代金を回収するレンドリースも、無償もしくは破格の安値で提供するらしい。


 さすがに幾つもの国が蹂躙されている状況で、イギリスだけ知らん顔はできない。

 結局、アメリカの要請をいれて、イギリスはドイツに宣戦布告した。

 その加勢によってフランスは、北東部領土の大半を失いながらも、態勢の立て直しに成功する。


 そしてイギリスは、日本にとって重要な決断もしていた。


「イギリスが中立を保つと言ってくれたのは、良かったな」

「まったくだ。いかに打診してあったとはいえ、ヒヤヒヤもんだったからな」

「さすがに今のアメリカには、付けないってことでしょ」

「それもそうだ」


 イギリスは参戦するに当たって、日本に対しては中立を保つと宣言してくれた。

 あくまで欧州の戦乱を鎮めるための参戦であり、アメリカのための参戦ではないということだ。

 アメリカは難色を示したものの、最終的には受け入れている。


「それで、ウェークとミッドウェーの制圧は順調なのか?」

「ああ、第1と第2機動艦隊の支援を受けて、それぞれ制圧した。今は工兵隊も入って、要塞化を進めてる」

「そっか……そうなると次は、ハワイ攻撃だね」

「ああ、ボッコボコに叩いて、しばらく使えないようにしてやる。後は潜水艦でシーレーンを締め上げれば、そうそう復旧もできないだろう」

「アハハ、まあ、占領するほどの余裕はないから、そうするしかないだろうね」

「せやな。そしたらルーズベルトは、どんな顔をするんやろ?」

「めっちゃ悔しがるだろう」

「いやいや、下手すると、倒れるんじゃねえ」

「「「ハハハハハ!」」」


 日本海軍は先のマリアナ沖海戦での消耗を補充し、すでに次の作戦に移っている。

 それはアメリカ軍の支配するウェーク、ミッドウェー両島の占領だ。


 現状で日本に対抗できる艦隊を持たない米軍に、それを阻止する手段はない。

 我が軍はあっさりと両島を攻略し、次のハワイ作戦に備えて、ミッドウェー近海に集結しつつあった。

 いずれはハワイを強襲し、その基地機能を大きく削り取る予定だ。


 一応、アメリカにもまだ、10隻近い戦艦と4隻の空母がある。

 しかし大西洋にも敵を抱えているし、どう見ても日本相手には力不足だ。

 この隙にハワイを蹂躙してやれば、アメリカ国民は震え上がるだろう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


昭和16年(1941年)1月 東京砲兵工廠


 年が明けて、ハワイ攻撃が始まった。

 まず6隻の空母を飛び立った戦闘機群が、数機の”彩雲”に導かれてハワイに到達する。

 当然、迎撃に上がってきたアメリカ軍機と、殴り合いになった。


 アメリカは可能な限りのP39、P40、F4Fなどを、ハワイにかき集めていた。

 その総数は実に400機にものぼったが、日本側も負けていない。

 やはり400機近い97艦戦と、レーダー付き彩雲の指揮管制により、戦闘を優位に進める。


 基本的に97艦戦の方が性能は上だし、搭乗員もマリアナ沖海戦などで鍛えられている。

 そのうえで組織的な空戦を繰り広げたのだから、負ける要素は少なかった。

 さすがに数十機の被害は出たものの、敵航空戦力をほぼ駆逐してのける。


 ちなみにこの時、アメリカ艦隊は何をしていたかというと、西海岸の主要港湾を警備していた。

 本来なら全てをハワイに集め、敵わないながらも、日本艦隊と戦わせたかっただろう。

 しかし西海岸の世論が、それを許さなかったらしい。


 すでにウェークとミッドウェーが陥落したことは、アメリカで知れ渡っている。

 もし日本軍に攻められたらという恐怖心が、西海岸に充満した。

 その結果、西海岸を基盤とする政治家が軍艦の配備を要求し、なんと分散配置されてしまったのだ。

 実は我が軍の謀略課が、そうなるよう仕向けたというのもある。


 ルーズベルトはさぞ落胆しただろう。

 彼は昨年の大統領選挙に勝利し、今もホワイトハウスの主ではあるが、マリアナ沖海戦の大敗で足元が怪しくなっている。

 おかげで強い指導力を発揮することもできず、反撃のチャンスを失った形だ。


 そしてハワイの航空戦力が排除されると、いよいよ地上施設への攻撃だ。

 出せる限りの艦攻・艦爆に加え、97艦戦も爆弾を抱えて、軍事施設を攻撃した。

 その攻撃は何度も繰り返され、ハワイ各地にある空港、港湾施設、造船ドック、重油タンクなどが、次々に破壊されていく。


 当然ながら、それは航空攻撃に留まらなかった。

 第1・第2機動艦隊から分離された戦艦・重巡部隊が、ハワイに接近し、砲撃を実施したのだ。

 金剛型の14インチ砲と、長門・大和型の16インチ砲が、無数の砲弾を撃ちだし、ハワイの大地をえぐる。


 32門の14インチ砲と、54門の16インチ砲から吐き出された砲弾は、実に5千トンにものぼった。

 その圧倒的な暴力に、アメリカ軍人とハワイ住民は、大きく打ちのめされたことだろう。


 一方、空と陸の戦いの陰で、海中の戦いも繰り広げられていた。

 ハワイに集められていたアメリカ潜水艦が、日本艦隊に攻撃を加えるべく、動いていたのだ。

 敵潜水艦は静かに海中に潜み、そして果敢に攻撃を試みる。


 しかしすでにマイクロ波レーダーを実用化している日本艦隊に、それは通じなかった。

 潜望鏡を海上に出した時点で、日本艦隊はそれを察知し、即座に動きだす。

 日本版のヘッジホッグが火を噴くか、対潜航空機の爆弾によって、アメリカ潜水艦は追い詰められていく。


 もちろん、そう簡単に撃沈できるわけがない。

 それどころか敵の魚雷発射を許し、逃亡されることもあった。

 しかし主力艦の被害は皆無であったし、20隻以上の敵潜水艦が沈没したそうだ。


 その熾烈な戦いを生き延びたアメリカ潜水艦は、ほうほうの体で西海岸へ逃げ帰った。

 そしてその代わりに日本の潜水艦が、東太平洋へ入りこむ。

 ミッドウェー島を拠点とする50隻もの潜水艦が、ハワイや西海岸へ押し出したのだ。


 今後、日本は西海岸やハワイ周辺での無制限潜水艦作戦を宣言し、敵のシーレーンを締め上げる。

 日本はアメリカにケンカを売られた事を喧伝しつつ、淡々と通商破壊を継続する予定だ。

 それは確実に、アメリカ国民の厭戦気分を高めていくであろう。


 そして俺たちは、一日も早く停戦に持ちこむため、どんなことでもやるつもりだった。

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