55.勃発、第2次大戦!
昭和14年(1939年)3月 東京砲兵工廠
ヒトラーはオーストリアに続いてチェコスロバキアの多くを併合し、さらにポーランド回廊をも要求した。
史実ではここで英仏がポーランド支持を表明し、それで強気になったポーランド外相が、ドイツの要求を拒否する。
これに業を煮やしたヒトラーがポーランド侵攻を命じ、第2次世界大戦の扉が開くのだ。
しかしこの世界では、少し展開が異なる。
「イギリスはドイツを非難しただけか」
「ああ、フランスと違って、ポーランドと相互防衛条約は結んでない」
「日本の意見を聞いたってこと?」
「それはどうかな。参考にはしただろうが、冷酷に算盤を弾いてるんだろう。第1次大戦のトラウマもあるだろうし」
「ふうん、いずれにしても、ルーズベルトは怒ってるだろうね」
「それは間違いない」
史実ではフランスと共にポーランドを支持したイギリスが、非難声明だけで済ませている。
川島はそれを、冷酷に状況を見極めているに過ぎない、と評する。
そしてこの世界でも英仏を煽ったであろうルーズベルトが、さぞ怒っているのも想像に難くない。
「さて、フランスだけで開戦に至るかな?」
「アメリカが後ろについてるんだから、やるんじゃない?」
「それより問題は、日本がどうするかでしょ」
「そうだね。このままアメリカと戦わないで済むといいなぁ」
「「「それはないだろ」」」
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昭和14年(1939年)9月 東京砲兵工廠
やがて独ソ不可侵条約が結ばれると、ドイツはポーランドへの侵攻を開始した。
これを受けて、ポーランドと相互防衛条約を結んでいたフランスが、ドイツに宣戦布告する。
さらに中旬以降にはソ連もポーランドへ侵攻し、手薄な東部を食い荒らした。
しかしフランスは宣戦布告をしても態勢が整っておらず、国境線でにらみ合うしかできなかった。
言わゆる”まやかし戦争”の状態のまま、数ヶ月が過ぎる。
その間にポーランドは独ソに解体分割され、北欧諸国も蹂躙された。
これに対し、日英はそれぞれ非難声明は出すものの、直接は動かなかった。
独ソへの輸出制限をしつつも、中立の立場を保ったのだ。
ただしナチスがユダヤ人を迫害することは分かっていたので、日本は積極的に保護を表明した。
おかげで欧州各地の日本領事館でビザが発給され、多くのユダヤ人が命を拾うこととなる。
ちなみにその陰で我が国の情報部が暗躍し、優秀な人材を確保しているのは内緒だ。
その一方で、アメリカは特殊な動きをしていた。
国内で中立法を改定しただけでなく、武器貸与法を早々に成立させたのだ。
これは史実なら2年後に成立する法律だが、イギリスが誘いに乗らなかったせいで早まっている。
そしてルーズベルトは”民主主義の兵器廠”になると言って、大量の装備や食料をフランスに送りはじめた。
これは国際法では、参戦しているとみなされてもおかしくない行為だ。
しかしルーズベルトは、”あくまで支援しているだけで、戦争ではない”と言い張った。
ドイツに激しく抗議されても、取り合わない。
その面の皮の厚さときたら、呆れてものも言えないほどだ。
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昭和15年(1940年)5月 東京砲兵工廠
そして翌年5月、ドイツ軍はとうとう西ヨーロッパへの侵攻を開始した。
ルクセンブルク、オランダ、ベルギーを次々と降し、フランスへもなだれ込む。
しかしイギリスの助力がないにもかかわらず、フランスはここで踏ん張ってみせた。
それもアメリカの多大な装備・物資援助あっての結果なのだが、早期には崩れなかった。
しかし6月にはイタリアも参戦し、やがてパリも陥落してしまう。
ここでドイツは傀儡政権を立ち上げて、見せかけの講和を演出する。
するとド・ゴール率いる抗戦派がアルジェリアに脱出し、自由フランス国民委員会を立ち上げた。
アメリカの後押しを受けたド・ゴールは、モロッコ、インドシナ、マダガスカルなどの主要植民地と共に抗戦を叫ぶ。
おかげでフランス本土でもレジスタンス運動が活発化し、ドイツの全土掌握にブレーキが掛かった。
そんな中、黒幕のアメリカは中立法の抜け穴を突きつつ、ドイツを挑発していた。
輸送船に軍艦の護衛を付けて、フランスへ物資を送ったのだ。
そもそも中立法では、アメリカの輸送船は戦闘地域に入れないし、軍艦の護衛は禁止されている。
しかしルーズベルトは戦闘地域であっても、”アメリカの商域”と言い張り、輸送船を送りこんだ。
さらに輸送船団の周囲には、”パトロール”と称して軍艦を哨戒させていた。
そしてドイツの潜水艦を発見すれば躊躇なく爆雷を叩きこみ、”攻撃を受けたため、反撃した”と言ってのける始末だ。
もちろんドイツはすぐに反論したが、ルーズベルトはそれを嘘だと決めつける。
ただしそれでもアメリカの世論は、参戦には傾かなかった。
第1次大戦に巻き込まれたことに、アメリカ国民はほとほと懲りていたからだ。
しかしそうなったら自作自演をするのが、あの国のお家芸である。
「アメリカの駆逐艦が、ドイツに撃沈されたって?」
「ああ、ドイツは偽装工作だって、訴えてるがな」
「いかにもありそうな話や」
アメリカからアルジェリアへ向かう輸送船団を、事実上護衛していたアメリカの駆逐艦が、大西洋で沈んだ。
しかしドイツの主張では、フランス艦に偽装して攻撃してきたので、反撃しただけらしい。
それが事実なら明確な国際法違反であり、いかにもアメリカがやりそうな手法だ。
しかしとうとうこれで、アメリカ国内にも参戦やむなし、という雰囲気ができあがった。
もちろん大多数の国民は懐疑的なのだが、ここまで来れば止まれない。
数日後にアメリカはドイツに宣戦布告し、本格的な世界大戦が始まってしまった。
いまだにそれを静観しているイギリスと日本も、このままでは済まないだろう。
アメリカとの戦争が一層、現実味を増していた。




