表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/57

33.新生日本の大戦略2

昭和2年(1927年)1月 東京砲兵工廠


 今後の戦略について話す中、潜水艦による西海岸攻撃の話になる。

 すると佐島が茶化すように、後島を煽った。


「ふ~ん、でもそれやと、戦艦大好きな慎二には、物足りないんとちゃうか?」

「いやいや、そんな事ないって。ちゃんと正面装備も揃えないと、舐められるからな。ここはやっぱり、46センチ砲を搭載する大和型を、ドカンとだな」


 その的外れな意見に、皆が呆れた目を向ける。


「えっ、何この空気? 大和は必要だよね? 祐一」

「いや~、大和を造るにしても、46センチ砲はないだろう。俺はアイオワみたいな、16インチ(40.6センチ)砲の高速戦艦を押すね」

「いやいやいや。大和は日本海軍の象徴だよ。だったら46センチ砲じゃないと」


 すると他の奴らも、呆れた様子で口を開く。


「出たよ、慎二の大艦巨砲ロマン」

「ほんまや。現実と妄想の区別ができとらへん」

「気持ちは分かるけど、胸の中に留めておいたら?」

「ぐはっ、正三にまで裏切られた」

「裏切ったなんて、人聞きの悪い」


 話が脱線したので、ここで引き戻す。


「まあまあ、夢の話は後にしようぜ。現実問題として、戦艦や空母も造るべきだ」

「空母は当然として、戦艦も造る必要、あるのか? すでに金剛型や長門型があるだろう」

「いや、海外に誤解させておくためにも、多少は新造する必要があるんだ。なあ、慎二」


 川島の問いに応えつつ、後島に振れば、彼が大きくうなずく。


「もちろんさ。日本が航空主兵に舵を切ったと悟られないよう、戦艦の建造は絶対に必要だ」

「ええ~、そんなに重要? どうせ第2次大戦では、空母が主力になるんでしょ」

「もちろんそうなんだけど、最初は戦艦が主役だと考えられてるんだ。空母は制空権を取ったり、潜水艦を警戒するための補助って認識だな」

「そうそう。日本が空母の集中運用で成果を上げてから、アメリカも航空主兵に転換するんだ。だから日本も戦艦主体だと思わせるため、戦艦は造っとく必要がある」

「ふ~ん」


 あまり納得がいかない様子の中島に、俺は言葉を続ける。


「それ以上に、国内を納得させる必要もあるしな」

「え、国内って、海軍?」

「おおむねそうだ。戦艦を造らないで、空母や潜水艦だけ増強しようものなら、発狂する奴らがいるからな」

「うへ~、信じられないな」

「まだ戦艦が主役だと信じられてるんだから、仕方ない。そういうわけで、内外を納得させるためにも、戦艦は造る。18インチ砲はいらないけどな」

「そんな~」

「「「アハハ」」」


 情けない声を上げる後島に、皆が笑う。

 すると川島が懸念の声を上げた。


「でも、そんなに物分かりが悪い奴がいるんじゃ、いざ戦争ってときにヤバくないか?」

「う~ん、その可能性はあるけど、教育が進めば大丈夫だと思う。頭の硬いのは徐々に居なくなってるし、若手も育ちつつあるから」

「そうか。ならいいんだが」


 川島が引き下がると、今度は佐島だ。


「戦艦にしろ潜水艦にしろ、今後は電子機器の重要性が高まるやろ? 正三の方は大丈夫なんか?」

「あ~、それね。正直いって、ちょっと自信ないかな」

「おいおい、そんな頼りないこっちゃ、困るで」

「そうは言ってもさ、やる事が多すぎるんだよ。どこまでやれるかなんて、分からないよ」


 開き直る中島に、俺は建設的な案を提示する。


「それじゃあ、後で開発のロードマップを作ろうぜ。今後、必要になる技術を洗い出して、優先度と期限を設定するんだ。正三の手が回らなそうなとこは、俺たちが手伝うか、外部の企業や研究室に投げよう」

「あ、それやってくれると、助かるかも。ずいぶんと気が楽になるよ」

「おお、そうだな。これからはそれを基準にして、開発を進めていこうぜ」

「よっしゃ。やったるか」


 俺たちが盛り上がっていると、川島が遠慮がちに切り出した。


「あ~、それも大切だと思うが、原爆の開発はどうする?」

「え、開発するの?」

「いざという時のために、やはり作っておくべきだろう」

「「「う~ん」」」


 これについてはすでに何回か、話し合ってきた。

 そのたびに議論が紛糾し、状況を見て判断しようと言って、先送りしてきたのだ。


「最大の問題は、日本人を信用できるかどうか、だな」

「それやんな~。下手に核を持って、自制できるもんか」

「かと言って、他国に先行されれば、大きく不利になるし……」

「理想はいつでも作れるよう、寸止めしておくことだけど……」

「それができれば、苦労はしないよ。僕たちは専門家じゃないし」

「そうなんだよな~」


 もし俺たちが核の専門家なら、開発のコントロールも不可能ではないだろう。

 しかし実際にそうではないし、開発は国家規模になる。

 そうなれば俺たちの意志が介在する余地など、ほとんどなくなるだろう。


 そんな状況に行き詰まっていると、川島が思い切ったように話す。


「みんなの懸念も分かるが、俺はプルトニウム爆弾を開発するべきだと思う。これなら原子炉さえあれば量産できるし、爆縮レンズを俺たちで設計すれば、歯止めにもなるだろう」

「結局そうなるのか…………だけどそろそろ、決断しなきゃいけないんだろうな」

「ああ、そうだ」


 その案は以前から、川島が提案していたものだ。

 しかし核兵器への忌避感から、どうしても決断できなかった。

 皆の顔を見回すと、誰もが暗い顔をしている。


 自分たちの手で大量破壊兵器を生み出すと思えば、それも無理はない。

 もちろん川島もだが、彼の瞳には強い意志がこめられていた。

 それを見て俺も、決断をくだす。


「よし、やろう。どうせ俺たちがやらなくても、人類はそこへ行き着くんだ。ならば日本を守るため、その罪も飲みこもう。毒を喰らわば皿までだ」

「ああ、そのとおりだ」

「せやな。せっかくこの時代に来て、それをやらなんだら手落ちっちゅうもんや」

「う~ん……仕方ないな」

「……」


 佐島や後島も賛成したが、中島だけはうなずかない。

 そんな彼に、川島が決断を迫る。


「正三、気が進まないのは分かるがな、いつかは決断しなきゃいけないんだ。それにこの開発には、誰よりもお前の力が必要だ。覚悟を決めてくれ」

「…………分かったよ。やるよ。日本を守るために」

「よし。決めたからには、しっかり頼むぞ」


 かくして俺たちの腹は決まった。

 後は不退転の決意をもって、進むだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
艦隊決戦にロマンという個人のわがままで死ななくていい水兵殺した提督は犠牲者全呼び上げて軍籍剥奪のうえ絞首刑が妥当。神童天才左団扇レールの王道行ってた打算の大砲屋が半生かけて積み上げたものが今日から要ら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ