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幕間:愛国商会

【川島健吾】


 なんの因果か、誰の差し金か、俺たちは明治日本へタイムスリップした。

 当初は戸惑ったが、気の置けない仲間と一緒だったのが幸いだ。

 おまけに天皇陛下の後ろ盾も得て、俺たちは悲惨な未来を回避するべく、動きだした。


「川島健吾と申します。以後、よろしくお願いします」

「うむ、伏見宮貞愛ふしみのみやさだなるである。こちらこそ頼む」


 皆に宣言したように、俺は金稼ぎと情報収集のため、商会を立ち上げることにした。

 その看板になってくれるのが、目の前の親王殿下だ。


「早速だが、今後の話をしよう。まず君の持つ、未来の文物というのを、見せてもらえないか?」

「はっ、こちらになります」


 俺は準備しておいたパソコンを広げ、未来の写真や映像を披露する。

 それを確認した殿下が、ため息と共に感想を漏らす。


「はぁ……これはまた、想像以上だな。これを見れば、君の話を信じるほかない。そしてそれは、未来で300万人の国民が犠牲になる可能性があると、そういう事だな?」

「はい、その通りです。今、我々がここにいるのは、その悲劇を回避してみろと、言われたものと解釈しています」

「何か神のような存在、か。否定はできんな……よかろう。それでは実務の話に移ろうか」

「は、それでは――」


 それから俺の構想を説明する。

 まずは成長しそうな企業に支援を申し出て、株式の値上がり益で資産を増やす。

 ある程度、資産が増えたら支店を開いて、商社としての業務を拡大していく。

 それと並行して、国内で災害や飢饉が発生すれば、寄付や炊き出しを行い、社会に利益を還元する姿勢も見せる、といったものだ。


「ふ~む、そんなに上手くいくものかな?」

「通常なら難しいですが、私には未来の情報があります。もちろん完璧な資産運用ではありませんが、さほど待たずに利益は出せるでしょう」

「そうか。まあ、陛下からも協力するよう、言われている。まずはほどほどの額を運用して、成果を出してくれ」

「はい、お任せください」


 こうして殿下の了承を得て、商会が動き出す。

 ちなみに商会名は、殿下のお名前から一字もらって、”愛国商会”とした。

 さて、これから忙しくなるぞ。



 まず一等地に店舗を構えると、目をつけていた企業に支援を申し出ていく。

 日本初のドライクリーニングを開発する企業や、ビール製造業が合併した企業など、候補はいくらでもある。

 基本的に成長が約束されてる企業ばかりだが、いきなり大金を出されて、勘違いすることもあるだろう。


 この時代の協力者と相談しながら、リスクを分散することも忘れない。

 しかしさすがに親王殿下が顧問なだけあって、信用を得るのも早かった。

 おかげで想像以上に早く軌道に乗り、それなりの利益が見えている。

 もっと掛かるかとも思ったが、嬉しい誤算だな。


 とはいえ、楽なことばかりじゃない。


「いや~、今日の訪問客もしつこかったね」

「ええ、ここを打ち出の小槌か何かと、勘違いしてるようです」

「かといって、あまりぞんざいに扱えば、殿下の評判に傷がつくしな」

「そうですね。しかし今後は、それなりの紹介者がいない客はお断りしましょう。仕事が進みませんから」

「ああ、そうするとしよう」


 そんな話をしているのは、名目上の商会長である山田さんだ。

 政府の筋からの紹介であり、それなりの経験と信用のある人物だという。

 俺が特殊な存在である事は、よく言い含められており、ちゃんと話を聞いてくれる。


 そして最近、増えてきているのが、身の程知らずな出資要請だった。

 うちがあちこちに出資していることをどこかで聞きつけ、そのおこぼれにあずかろうとする連中だ。

 たしかに元手がなくて諦めている話も多いのだろうが、寄ってくるのは詐欺師みたいな奴らばかりだ。


 そのため異様にしつこくて、相手をするのにうんざりしてきた。

 そこで今後の面会者には、それなりに信用のある人の紹介状を持ってくるよう、提案する。

 こうすれば詐欺師みたいな連中の多くが、足切りできる。


 有望だが金に困っている人の発掘なんかは、今後の課題にしておけばいい。

 そう思っていたら、祐一から出資要請があった。


「実は今、準国産車を造ってる人たちがいるんだ。来年にはモノになるはずだから、川島の方で投資を検討してくれないかな?」

「う~ん、支援してやりたいけど、まだこの時期ではビジネスにならないだろう。うちもまだ、余裕があるわけじゃないからな」

「そうかぁ……俺がアドバイスすれば、史実よりはマシにできると思うんだけどな」

「なら、ちょっと考えてみるよ。後で情報を教えてくれ」


 とは言ったものの、今は難しいかな。

 たしかに祐一がサポートすれば、多少は伸びるかもしれないが。

 なにしろ日本の工業力が貧弱すぎて、ちょっとやそっとで軌道に乗りそうにない。


 さすがに山田さんも、首を縦に振ってくれないだろう。

 だけど多少は種をまいとかないと、今後の発展も望めないし。

 まずは山田さんに相談してみるか。

 いずれ利益が出てくれば、多少は資金を回せるようになるだろう。

 そのためにも、まずは稼がないとな。

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