27.私なんか敵うはずないよね
藁にもすがる思いで視線を向けると、何故か慌てた様子で目を逸らすシェンカさん。
私だって召喚者のはずだけど、単に精鋭五人の意見が優先されるって考えなのかしらね。
確かにランクの差は大きいし、私にはこれといった実績もない。でもだからといって、この一方的な空気はちょっと異常すぎるわよ。
それって、私の立場だからそう感じてしまうだけ? いえ、違うわ。いくら発言力のある明王寺くん達だからって、この場にいる異世界人たちと何の打ち合わせもなしに、いきなりこんな話をしだすとはとても思えない。
多少の違和感を覚えつつも、それを口に出す事がどうしてもできない。なんの根拠もない事だし、私にそれを言う資格もないのよね。
裏切られたような気持ちにはなるけど。アッシュがその方がいいって言うなら、それを止める権利なんて私には元々ないんだもの。
完全に、勝ち誇った様子の北条さん。
やっぱり女好きなのね。アッシュの顔を見ると、彼は北条さんと、彼女とは親友の安達さんに対して嫌らしい目を向けている。
安達悠愛って子も、なかなかの美少女。私ほどじゃないけど胸も大きいし、スタイルもそこそこな感じ。そんな彼女は、クラスの男子たちの間では北条さんと人気を二分する存在。
普通に考えて、私なんかがこの二人に敵うはずなんてないのは分かってる。
二人に対してマウントを取れるところがあるとしたら、それは胸の大きさだけ。
「それじゃ、俺たちに協力してもらえるって事で良いんですね?」
安堵の表情を浮かべた明王寺くんが、アッシュに対してそう問いかける。
「これからは猪俣さんに代わって、わたしがあなたのパートナーになりますね」
そう言って、勝ち誇ったかのように前に進み出る北条さん。彼女がわたしに向ける目はまるで、早く彼から離れなさいよ、とでも言いたげな感じだった。
「はぁん? お前らが、なに勝手に決めてやがんだ。そんなに抱かれてーってんなら、いくらでも抱いてやって構わねーけどな。だが、てめぇのパートナーになる奴は、俺様自身が決めることだ!」
急にそんな事を言い出すアッシュの言葉に、北条さんの表情は歪む。何故か明王寺くんは、少しだけホッとした表情を浮かべているように見えた。
「魔人様が決めるとおっしゃるなら、こちらとしては誰を選んでもらっても構いませんが。能力の高さだけなら、この中で俺が一番だと思いますよ」
もう慣れたもんだけど、急にどうしたのかしら。明王寺くんがそう言うなり、何故かアッシュは私のお尻を撫で回しはじめる。それと同時に深く溜め息をつくと、薄ら笑いを浮かべながらやれやれといった感じで口を開いた。
「だから、勘違いすんのも大概にしろってんだ。パートナーが野郎なんて真っ平ごめんだし、そこの女二人も俺様の望みに一切かなっちゃいねー。俺様の条件に合う女がいるとしたら、今のところこの女しか考えられねーな」
えっ? うそ……ひょっとしてわたし、この二人に勝ったの? 言い方はちょっと引っ掛かるけど、アッシュは私を選んでくれたってこと? でもさっき、二人に対して嫌らしい目を向けていたじゃない。
それは単に性的な興味を示しただけの話で、どっちをパートナーにするか迷っていたわけじゃなく。言葉のとおり、抱いてやってもいいくらいにしか思ってなくて。力の相性とかについては、合わないってだけの話にすぎないのかしら。
だとしても、彼がわたしを選んでくれたのは素直に嬉しい。この二人には絶対に敵いっこないって思ってたし、どうせいつもの事よね、くらいに思って諦めの境地に達していたのよ。
急激な感情のジェットコースターに襲われ、わたしは半ば放心状態。
安堵の気持ちから一転。馬鹿にしてるような言葉を浴びせられた明王寺くんは、さすがに苛立ちを隠せない様子。
望みにかなってない、とハッキリ言われてしまった北条さんと安達さんの二人は、ムカつく気持ちをどうしても抑えきれないみたい。美人が台無しよって言いたくなるほど、彼女たちの顔には怒りの感情がストレートに表れていた。




