25.意外な反応
大神官にキンダアーモンの件を報告したところで、外の様子が急に騒がしくなりだす。
どうやらシェンカさん達やクラスの連中が、庁舎に続々と入ってきているところみたい。
呼び止められても無視した事を、やっぱり咎められたりするのかしら。もしその事に関して理由を問われたら、何て言って誤魔化そう。
まぁ、あんまり考えても仕方がないし、適当に気付かなかったとでも言っておけばOKよね。
それからしばらく経つと、まずシェンカさんとその側近たちが部屋の中に入ってくる。続いてよく見知った五人組。その内の一人が、わたしの顔を見るなり予想外の言葉をかけてきた。
「猪俣……本当に無事で良かった……向こうから帰る途中、王都が全滅したって聞いたから、死んだんじゃないかって皆で心配してたんだぞ」
普段わたしの事なんて気にも留めない感じなのに、急にそんな風に言ってくるなんて。一体どういう風の吹き回しかなのしら。そう思ってしまうくらい殆ど話したこともない彼は、クラスで一番のイケメン明王寺天音。
たぶん彼の方から私に対して声をかけたのは、これが初めてのことなんじゃないかしらね。クラスの行事とかで、私の方から仕方なく声をかけた事はあったけど。
「やい、てめえ! なに許可もなく、俺様の女に話しかけてんだ?」
明王寺くんの言葉に対して、すぐに反応するアッシュ。一番それを見せたくない連中の前で、通常運転かまされてしまうなんて……私のライフはもうゼロよって叫びたいくらいだわ。
「ちょっと、アッシュ! せっかく気遣いの言葉をかけてくれた相手に対して、そんな態度を取ったりしたらダメでしょ!」
「うるせーなカナエ! お前は俺の言うことだけ聞いてりゃいいんだ!」
わたしの言葉に対して、アッシュはすぐにそう反応する。それと同時に、わたしは彼に乱暴な感じで抱き寄せられてしまった。
当然いつものように片乳も揉まれる。更には、まるで周囲に見せつけるかのように耳たぶまでかじってくる始末。
反応に困ったといった感じの明王寺くん。他の人達も、黙ってこの様子を見守るばかり。
恥ずかしさが限界突破していたけど、抵抗なんてしたら却って逆効果になりそうよね。
「わかった……わかったから、いい加減にしてよアッシュ。わたしは貴方だけの物。それくらいちゃんと分かってるから……」
わたしの口からこんなこと言わせないでよ。クラスメイト達の前で、恥ずかしいったらありゃしない。
乳揉みと耳かじりだけは取りあえず止めてくれたけど、それでも彼は私を抱いたまま離してくれない。
彼になら、独占欲を向けられてもそこまで嫌な気分にはならないのも確か。でも、過去の私を知っている人間たちの前でだけは、こんな事するのほんと勘弁して欲しいわ。
「あなたが噂の魔人様ですね? 許可が必要だというのなら、少し彼女と話をする時間を取らせていただきたいんですが……」
ようやく口を開いた明王寺くんは、苦笑いしながら丁寧な口調でそう訊ねる。
わたしは別に、彼と話したくなんかないんだけどね。
「話があるってんなら、俺がいる前でしたって別に構わないだろ? それとも、俺がいたら何か不都合な話しでもあるのか?」
グッジョブよアッシュ。普通に仲のよい者同士なら、互いの無事を喜びあう場面だし、むしろ気遣えよってところなんだろうけど。何よりわたし本人が、そんなこと微塵も思ってない。
アッシュにそう返された明王寺くんは、何故か他の四人と顔を見合わせる。
本気でただ積もる話しをしたいだけなら、素直に彼の言うとおりにすれば良いだけの話し。でも、その反応を見る限り、何か別の意図があってもおかしくはなさそうね。
明王寺くんの反応を受け、わたしが普段から一番苦手に思う女子がこちら向かって微笑みかける。
清楚系で超がつくほど美形な子。そんな彼女の笑みに、わたしは何か良からぬ事を言い出しそうな雰囲気を感じ取った。




