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16.帰れるのなら



 アッシュは、わたし自慢のFカップを流れるような動作でまさぐり始める。そう、わたしの胸はそこそこの巨乳。形だって良い方だし、これだけは自分に対して唯一自信が持てる部分。


 彼の吐息がかかる。

 甘噛みっていうやつね。次に彼は自然な感じで耳をかじってくる。

 男の人にこんな事されるの初めてだし、もうドキドキが止まんない。

 これから、あんなことやこんなことをされちゃう。そんな風に思ったら、口から心臓が飛びだしてしまいそうになるわ。


 ちょっとだけ怖いけど実は満更でもなかったりする。

 でも彼は、それ以上の行いをしてくることはなく。ただひたすらに私の胸をまさぐり続けるばかりだった。


「ねぇアッシュ……わたしのこと犯すんじゃなかったの?」


 少し期待はずれだったこともあり、思わず私はそんな言葉を漏らしてしまう。


「なんだよカナエ。そんなに犯されたいのか?」

「べべっ、別にそんなこと思ってないわよ」

「なら、今はそんな気分じゃないんだ。抱き枕にちょうど良さそうだったからな。しばらくの間こうさせてくれ」


 抱き枕ってなによ! 肉感がちょうど良さそうだとでも言いたいわけ? そんなに私、ぽっちゃりなんてしてないわよ! むしろ体型はスリムな方なんだけど。

 でも、男の人とベッドの上でこんな事をするのも初めて。

 思ったよりもソフトな感じでしてくれてるし、こうしているのもそんなに悪い気分ではないわね。


「なぁカナエ。お前、召喚者なんだよな? もし、元の世界に戻る方法があるって聞いたら、やっぱり帰りたいと思うか?」


 唐突にそんなことを言い出すアッシュ。

 そりゃ、もちろん帰りたいわよ。でも、急に何でそんな事を訊いてきたりしたんだろ。ひょっとして、方法はあるけど私にずっといて欲しいって思ってる?


「闇の帝王って奴を倒す以外に、帰る方法ってあるの?」

「ハーウェの信者どもがそう言ったのか? だったらそんなのは嘘っぱちだ。元の世界に戻りたきゃ、本来あっちの世界で再召喚してもらう以外他に方法はないんだぞ」


 衝撃の事実を知らされ、わたしはショックで言葉を失ってしまう。聖教会の人たちが言うことを信じて、ここまで命懸けで魔物どもと戦ってきたのに……そんなのって酷すぎる。あんまりだわ!


 しばらく固まっている様子の私を、じっと見つめるアッシュ。なんだか少し、ショーケースの中で買い手を待つ子犬みたいな目。

 少し躊躇うような感じだったけど、軽く溜め息をついた彼は言葉を続ける。


「まぁ、俺が知っている方法以外にはないって事だけどな」

「じゃあ、アッシュなら戻る方法を知っているってことなの? そりゃ確かに、帰りたいって思う気持ちはかなり強いけど……」


 正直わたしも、自分自身どうしたいのかよく分からない。彼が私を必要としてくれるなら、このままずっと彼の女でいても良い気さえする。

 家族の事はすごく気になるけど。こんな経験をしてきて、元の世界で元の生活にすんなり戻れる自信があまり持てないのも確か。


「ずっとこの世界で、俺の女のまま居続けたくなったか?」

「なによ! わたしのこと、ちゃんと大切に扱ってくれるの?」

「ああ、当然だ。一度てめぇの女って決めた相手だけは大事に扱うさ」


 そんな風に耳元で囁かれたりしたら、本気で好きになっちゃいそうになるじゃない! 元の世界に戻りたい、なんて気持ちも完全に吹っ飛んでしまう勢いだわ。

 でも、両親はきっと私のこと心配してるよね。せめて私が、別の世界で取りあえず生きてるって事実だけでも伝えることができたら……。


「俺が真の力を取り戻す事ができたなら、どんな世界でも自由に往き来できるようになるぞ。まぁその前に、お前に取り憑いてる天使をどうにかしないとだけどな」


 アッシュの口から飛び出した言葉に、わたしは希望の光を見いだす。

 具体的に何をすれば良いのかは分からないけど。その話が事実なら、要は彼が真の力を取り戻せるよう手伝えば良いってわけね。

 上手くそれを実現させる事さえできれば、両親に無事を知らせることもできるし、彼ともずっと一緒にいられて万々歳じゃない。


「どうすれば真の力を取り戻す事ができるの?」

「なんだ、ようやくその気になったのか? だったら、詳しい話はまた後でな」


 アッシュはそう言うなり、私の耳を甘噛みしながら再び胸をまさぐり始める。


 兎に角、これからどんどん良い方に向かっていきそうな感じね。

 そんな風に思いなんだか嬉しくなった私は、完全にこの身を彼に委ねても良いという気持ちになっていた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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