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15.無茶な要求



 アッシュは庁舎の前に降り立つと、普通に玄関を開け大神官のもとへ直行する。わたしも遅れまいと慌てて彼の後を追った。

 彼より先に私が話をつけないと、すごく面倒なことになってしまいそうよね。

 でも、そんな心配は現実のものとなり。彼は大神官の部屋に入るなり、いきなり報酬の話を始めてしまった。


「やい、ハーウェの神官! 魔物の大群は全部始末してきたぞ! こんだけの事をしてきてやったんだ。礼として、この町に有るありったけの財宝をよこせ!」


 ありったけの財宝って……本気でそんな事を思ってるんだとしたら、最初から私の出る幕なんてなかったわよね。て言うか、いきなりそんな話をしても、大神官だって反応に困ってるじゃない。


「町の財宝か……そんな物を欲しがるなんて、ずいぶんと俗物的な魔人様のようだな。それにしても、こんな短時間で魔物の大群を殲滅してきたというのはとても信じられんが。先ほどの激しい揺れから察するに、天変地異でも起こしてきたといったところか?」


 ようやく口を開いた大神官から、そんな言葉が漏れる。確かに自分で神様であるかのような事を匂わせてるわりに、俗物的な感じなのは間違いないわね。そりゃ信者もいなくなって当然よ。


「んなこたぁどーだっていい! とにかく報酬の用意だ! お前が一番ここで偉い奴なんだろ?」

「報酬はもちろん出そう。だが、もう少し安定するまで協力してはもらえまいか?」


 まぁ、当然の反応よね。相手の戦力をかなり削ったのは確かだろうけど、これで完全に魔物の襲撃が終わったとはとても思えない。

 間違いなく助けになるって分かった以上、私たちにはなるべく長くこの場所にとどまっていて欲しいはずよ。

 でも、このまま守っていてばかりでは、そのうち食料も尽きてみんな飢え死にしちゃう。


「ねぇアッシュ。さっきも言ったけど魔物の大将を倒しちゃえば、心置きなく報酬をもらって別の場所に移動できるんじゃない?」

「ちっ、結局そこまで面倒みてやらにゃならんのかよ。まぁ、カナエがそう言うなら仕方ねーけどな」


 意外とあっさり私の提案を飲むアッシュ。

 わたしを魔力タンクとして必要としているから、わりと意見を聞いてくれるだけなのかしら? そうじゃなく、真のパートナーだと思ってくれているなら嬉しいんだけど。

 なんて事を考えてる場合じゃないわよね。そうと決まったら、早速ボス討伐の話を進めていかないと。


「ありがとうアッシュ。そう言うことで大神官様。報酬の件は、なるべくこちらの希望どおりになるようお願いしますね」

「うむ、善処しよう。戦後の復興資金は必要だが、背に腹はかえられぬのでな」


 大神官も快く了承してくれたのに、アッシュは少し不満げな様子。

 たぶん、わたしが控えめな頼み方をしたせいなんでしょうね。でも流石に、私の口から全部よこせなんてことは言えないわ。

 まぁ、言い方から察して一応アッシュの希望を検討してくれるような感じだし、心配しなくてもそれなりの報酬は期待できそうね。


「それでアッシュ。敵の居どころについてはもう、ある程度の見当はついているんでしょ?」

「当然だ! 俺様を誰だと思ってるんだ?」


 わたしの質問に対して、尊大な態度でそう答えるアッシュ。気配感知の能力があるから一応かまをかけてみたけど、まさか本当に敵の居どころを掴んでいるとまでは思わなかった。



 諸々の報告や会議を経て、私たちは市長の館に案内されていた。

 あの後シェンカさんや町の偉い人たちが集められ、今後の対策会議が開かれたけど。いろいろとアッシュが一人で強引に決めてしまい、彼の力を知った参加者は誰も口出しする事ができなかった。

 会議というよりも、アッシュが口にした内容をそのまま実行させるといった感じね。


 市長に、二つ部屋を用意するって言われたけど。何故かアッシュは、その必要はないと言って強引に一緒の部屋にされてしまった。

 まさかこのあと、本当にいけない事をされたりはしないわよね?


 部屋に入るなりアッシュは服のままベッドに身を投げ出す。

 わたしも疲れきっていたので、この状況に緊張しながらもベッドから少し離れた所にある椅子に腰かけた。


「何でそんな所に座ってんだよ。座るなら俺の隣に座れ」


 いきなりそんな事を言われ、一気に緊張が増すわたし。そういう事をするなら、せめてお風呂に入ってからにして欲しかったわ。

 でも、彼に逆らう事なんてできそうもないし……まだ何かをされると決まったわけじゃないわよね。


 覚悟を決めた私は、黙ってベッドの端に腰かけ直す。その瞬間、私はまるで玩具でも扱うかのように、乱暴な感じで彼に抱き寄せられてしまった。

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