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14.これはちょっとやり過ぎじゃない?



 急に空中で停止したかと思うと、わたしは再びエネルギーをぐんぐん吸い取られるような感覚に襲われる。どうやら魔物どもの上空に着いたみたいね。チラッと下を見ると、まさに大軍団のちょうど真ん中辺りにいるみたい。

 あれは、サイクロプスとかトロールっていうやつなんでしょうね。土煙のせいで大半の魔物の姿は見えないけど、大型の魔物だけは上半身をはっきりと確認することができた。


「この辺りだったら一気に全部いけそうだな」


 古代語っていうやつなのかしら? アッシュは、そう言うなり再びわけの分からない長い呪文を唱え始める。


~イフスラーノヨノック リジェミニアイーシャドネットバース エットモゥアラキットラブアーラ イフサールアトモゥアイカヒアッド ソボールオーウィケトサナドアイニュアーウ~

 

~この世に在りし全ての大精霊に命じる、荒ぶる力をもって大破壊をもたらし我に仇なす敵を滅ぼせ~


爆裂滅壊(アルテナダイナム)!」


 アッシュがそう最後の決め台詞を言うと、周囲の大気は激しく震えだす。いえ、違うわ。まるで世界全体が震えてるみたいな感じ。

 土煙が立っていても分かったわ。魔物の大群がいる大地は、広範囲にわたり激しく隆起と陥没を繰返している。その周辺には、無数の青紫に光るプラズマのような物が怪しい輝きを放っていた。

 一つが爆発すると、それらは次々と誘爆していく。地上はまさに地獄絵図と化していった。


 三十秒くらいだったかしら? 凄まじい爆発の嵐はようやく止み、大気に撒き散らされた爆煙は次第に晴れていく。


「まぁ、降りて確認するまでもねーな。魔物どもの大群は、今ので全滅しただろ。生命反応もまるで感じないしな」


 アッシュは、そう言ちるなり町に向かって移動し始める。

 わたしは、あまりにも恐ろしい光景に一言も発することができなかった。


 城壁の上から大勢の兵士たちがこちらを窺っている。

 歓声をあげて向かえてくれるかと思いきや、とても静まり返っている様子だった。

 あんな恐ろしい光景を目の当たりにしたんだから、当然よね。場合によっては、魔物の軍団が壊滅した事すらまだ認識できていないのかもしれない。

 それとは対照的に、街の様子はかなり騒がしいものとなっていた。

 外の状況が分からないうえに、激しい爆発音が続いたんだもの。一般の人たちはきっと、すごく怖かったに違いないわ。


「ちょっとアッシュ、流石に今の魔法はオーバーキルっていうやつだったんじゃないの?」


 せっかく頑張ってくれたのに、私ってば何をいっているんだろう。少し落ち着いた私は、ついそんな言葉を漏らしてしまった。

 でも彼は、特に気分を害した様子もみせず。意外と普通に受け答えを始める。


「別に何もない荒野を破壊したからって、どうってことないだろ」

「確かにそうかもしれないけど、あれはちょっとやり過ぎよ。もう少しスマートな魔法だってあったんじゃないかな?」

「あんだけの数を殲滅するのに、これほど適した魔法が他にあるってのか? まぁ町ごと吹っ飛ばしても良かったってんなら、もっと強力な魔法はいくらでも有ったけどな」


 あれより強力な魔法って。それがどんな魔法なのか全く想像もつかないわ。あれでも彼なりに考えて、一応セーブしていたってことなのかしら。

 でもそう考えると、この人を怒らせたら本当にヤバいってことだけは十分に理解したわ。わたしが彼を、人間の敵に回らないようしっかり導いていかないとだね。


 人々が大混乱に陥るなか、騎士の一団が「道を明けよ」と絶叫しながら移動に困っている様子が見てとれる。

 たぶんたけど、あれはシェンカさんの一団ね。もうとっくに終わってるのに、まだ城門の所までたどり着くことすらできてなかったみたい。


「さっきの奴だな。別にあいつに対して用なんてないし、無視してこのまま大神官の所に行くぞ!」


 せめて結果くらい知らせてあげれば良いのに。

 そんなことを思う私の気持ちを余所に、アッシュは本当にそのまま無視して再び庁舎の方へと移動しはじめた。

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