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君のカンパニュラ  作者: 9どう?亜依


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34/52

変化の兆し

大輔が紙片を受け取った瞬間、空気がひどく重くなった。

 それは温度でも湿度でもなく、目に見えない圧のようなもの——

 私の呼吸さえも、ゆっくり奪っていく。


 足音の人物は去った。

 けれど、大輔の表情はそのまま凍り付いている。

 無表情に近いけれど、ほんの僅かに目の奥が揺れていた。

 あれは、彼が何かを見ている証拠だ。


「大輔……」

 呼びかける声が思ったより弱かった。

 返事はなかったが、視線が一瞬だけ私に向く。

 その視線は、彼が私を“確認”しているかのようで——

 安心か、それとも別の感情かは判別できない。


 机の上の青い紙片が、ふと風もないのに揺れた。

 目の錯覚かもしれない。

 だけど、その揺れは私の心臓に直接触れたみたいに、

 不安を増幅させる。


 大輔は紙片をポケットにしまい、何事もなかったかのように背筋を伸ばした。

 その動作の中に、“変化”が混じっている。

 私が知っている大輔は、面倒ごとを避けたがる。

 だけど今の彼は、まるで自ら足を踏み入れようとしているようだった。


「……どうするつもり?」

 問いは自然に口から出た。

 彼は少しだけ口角を上げて言った。

「可愛い智子に頼みがある」

 ——ああ、この流れ。

 嫌な予感しかしないのに、胸の奥がざわつく。


 この“頼み”が、これまでと違う領域に私たちを連れて行く——

 そんな確信があった。

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