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君のカンパニュラ  作者: 9どう?亜依


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33/52

通達役

“通達”はいつだって短い言葉で足りる。

 長く語れば、受け取る側に疑問が生まれるからだ。

 俺の仕事は、疑問を与えることじゃない——決意を促すことだ。


 旧企画室の中で、大輔の視線は予想以上に鋭かった。

 紙片を差し出したときの反応——あれはすでに何かを掴んでいる目だ。

 だからこそ、次の段階に進める価値がある。


 俺は黒幕じゃない。

 “黒幕”を名乗る連中の下にもう一段階、影の階層がある。

 俺はそこから派遣される、いわば選別役だ。

 誰が“次”に進めるか、その場で見極める。


 淡い灰色の紙片がポケットの中で温もりを帯びる。

 これを渡すときは、対象が自分で扉を開けようとした瞬間だ。

 無理やり押し込めば拒絶される。

 自分の意思だと思わせて差し出す——それがこの仕事の肝だ。


 大輔の目は、迷いながらもこちらを逃さない。

 智子の表情は、何かを察しながらも言葉を飲み込んでいる。

 ……面白い組み合わせだ。

 次の提示で、この二人はきっと別の顔を見せる。


 ドアの外、廊下の奥で微かな気配が動いた。

 俺を監視する視線——階層のさらに上からの監視か、それとも別筋か。

 いずれにせよ、この場は予定より早く切り上げたほうがいい。


「準備しておけ、大輔。すぐに“見える”ようになる」

 そう告げて背を向ける。

 残された時間は、もうそう長くない。

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