表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のカンパニュラ  作者: 9どう?亜依


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/52

視線の衝突

足音の主が現れた瞬間、室内の空気が一段硬くなった。

 智子も結城も、その人物を見て一瞬言葉を失う。

 けれど俺だけは——来ることを知っていたような気がした。


 そいつの靴は静かに床を踏み、青い紙片の前で止まった。

 手はポケットに突っ込んだまま、視線だけが俺を射抜いてくる。

 軽い笑み。

 でも、その奥には何層もの意味が隠れているのがわかる。


「久しぶりだな、大輔」

 声は低く、しかし妙に滑らかだった。

 久しぶり? 確かに顔は見覚えがある。

 でも、その記憶はふわふわと輪郭を持たない。

 まるで“作られた”映像のように。


 智子が口を開きかけたが、その人物は軽く手を上げて制した。

「今は話すな。——まだ提示の途中だ」

 提示、という単語に、背中がひやりとした。

 この言葉を知っているのは、俺と智子、そして……黒幕側の人間だけだ。


 彼は紙片を拾い上げ、俺の目の前に差し出した。

「お前が次だ、大輔。拒むか?」

 拒む——その選択肢が、本当に存在するのか。

 脳裏の奥で、微かに別の映像が流れ始める。

 灰色の紙片。

 まだ触れていないはずなのに、指先がその質感を知っている。


「……拒まないとどうなる」

「全部、見える」

 その答えに、息が詰まった。

 見える——その響きは、警告にも、誘惑にも聞こえる。


 俺は紙片から視線を外し、智子を見た。

 彼女の瞳には、迷いと、わずかな覚悟が混ざっていた。

 ——きっと、俺も同じ顔をしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ