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足音
廊下の照明は半分が消えていた。
薄暗い床に、自分の靴音だけが規則正しく響く。
そのリズムは意図的にゆっくり——旧企画室の中の人間に、確実に届くように。
扉の隙間から、青い光が漏れている。
あれは紙片ではない。
映像の光が、壁や机に反射しているのだ。
“提示”を受けている最中——そう考えるだけで、胸の奥に冷たい高揚が走った。
俺はこの場に呼ばれたわけじゃない。
だが、呼ばれなくても来る理由があった。
この中に、大輔がいる。
そして、その大輔が“次”に選ばれることを、もう知っている。
ドアノブに指をかける。
金属の冷たさが手のひらに吸い付くように馴染む。
開ければ、計画は早まるかもしれない。
だが、それも悪くない——むしろ望むところだ。
深呼吸ひとつ。
ゆっくりと扉を押し開けた瞬間、
中の空気が外へ流れ出し、
視界の端に青い紙片と三人の影が重なって見えた。
その中で、大輔の視線だけが、真っすぐこちらに向いていた。
まるで、俺が来ることを知っていたみたいに。




