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君のカンパニュラ  作者: 9どう?亜依


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30/52

重なり始めた輪郭

旧企画室の空気は、重く、乾いていた。

 けれど鼻腔を抜ける匂いは、なぜか知らないはずの記憶を呼び起こす。

 引き出しの奥に詰まった紙の匂い。

 その中で、一枚だけ際立つ青。


 紙片を見た瞬間、胸の奥で何かがきしんだ。

 それは智子の視線を通して感じたきしみと、

 ほぼ同じ形をしていた。

 ……いや、同じだ。

 誰かが、俺たちを同じ形に揃えている。


 紙には、見覚えのない文字が並んでいた。

 けれど読んだ途端、理解が流れ込む。

 「Bellflower_00は記録ではない。これは提示だ」

 意味はわからないはずなのに、どこか納得してしまう。


 視界の端で、結城が紙を拾い上げる。

 その手の動きに合わせるように、

 俺の頭の中にも別の映像が差し込まれた。


 ——古い木の引き出し。

 青い紙片が幾重にも重なり、端がすべて揃っている。

 埃はなく、光の当たり方さえ完璧。

 “作られた記録”というより、“見せるための絵”だ。


 その不自然さに気づいた瞬間、背筋を冷たいものが走った。

 誰かが、俺たちの記憶の形を操作している。

 しかも——それは今日が初めてじゃない。

 もっと前から、同じ仕組みの中にいたような感覚がある。


 扉の外で足音が止まる。

 智子でも結城でもない。

 でも、どこかで会ったことのある気配。


 振り返る前に、胸の奥で囁きが響く。

 「次は、お前だ」

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