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君のカンパニュラ  作者: 9どう?亜依


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28/52

境界のない映像

——視界が勝手に切り替わる。

 自分の目で見ているはずなのに、時折、大輔の視線や、

 知らない男——結城の目線に引きずり込まれる。


 旧企画室の扉を開ける瞬間、私は二度、自分の心臓の音を聞いた。

 ひとつは私の胸から、もうひとつは大輔の胸から。

 その拍動が同じリズムで重なる。


 部屋の中央に置かれた青い紙片。

 私が視界の端でそれを確認した瞬間、

 大輔と結城の視線も同じ紙へと収束する。

 ……いや、これは視線じゃない。

 誰かが意図的に“同じ方向”へと導いている感覚。


 紙に記された文字が浮かび上がる。


> 「Bellflower_00は記録ではない。これは提示だ」


 意味はわからない。

 でも、この言葉が“大輔にも”見えていることだけは、確信できた。


映像が、私の記憶と混ざっていく。

 いや、これは私のものじゃない。

 大輔の視線、大輔の呼吸、大輔の胸の奥のざらついた感情が、

 そのまま私の中に入り込んでくる。


 机の向こう、結城が青い紙を手にしている。

 その瞬間——

 私の中に、見覚えのない風景が差し込まれた。


 古びた木の引き出しの中。

 同じ青い紙片が何十枚も重なっている。

 ひとつひとつに、異なる日付と時刻が記されている。


 けれど、その映像は妙に“きれいすぎる”のだ。

 埃ひとつなく、紙の端まで均等に光が当たり、

 まるで誰かが「見せるため」に作ったような記録。


 ——作られた記憶。


 その気づきと同時に、大輔の感情も流れ込んでくる。

 焦り。疑念。そして——何かを思い出しかけている感触。


 私は思わず、その感情を掴もうと手を伸ばした。

 しかし次の瞬間、映像は断ち切られ、

 自分の目だけが残った現実に戻っていた。


 旧企画室の扉は、開いたまま静まり返っている。

 けれど私の中では、まだ大輔の呼吸が聞こえていた。

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