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君のカンパニュラ  作者: 9どう?亜依


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27/52

同期の渦

視界が三重に揺れる。

 自分の目、智子の目、そして見知らぬ男——結城の目。

 それらが秒単位で切り替わり、時に同時に重なって、

 現実の輪郭を溶かしていく。


 旧企画室。

 存在しないはずのその扉が、結城の視界で確かにそこにある。

 気づけば、俺の足は勝手に動き出していた。

 まるでそこに行かなきゃならない理由が、

 昔から埋め込まれていたみたいに。


 廊下の角を曲がる瞬間、視界が智子のそれに変わる。

 俺の背中を見つめる視点。

 その智子の目にも、青い紙片が映っていた。

 床に落ちたそれは、ほんのり湿っていて、

 見覚えのある手書きの数字がにじんでいる。


 数字の並びを見た瞬間、頭の奥で別の映像が弾けた。

 ——Bellflower_06。

 そこに映っていた机の端にも、同じ紙片があった。

 だとすると、この青い紙は……ただの偶然じゃない。


 廊下の先に、結城の視界が戻ってくる。

 扉に手をかける彼の感触が、俺の指先にも伝わった。


結城の手が扉を押し開ける。

 同時に、俺の手も——智子の視界の中の俺の手も——

 同じ動きで扉を押していた。


 薄暗い室内。

 埃っぽい匂いが鼻を突き、古い木の机やロッカーが並ぶ。

 それは確かに、数年前に閉鎖されたはずの“旧企画室”だった。

 だが、俺の記憶では、この部屋はもう存在していない。


 机の中央に、一枚の青い紙片。

 さっき廊下で拾ったものと同じ色、同じ質感。

 結城がそれを手に取ると、智子の視界にも、俺の視界にも、

 同じ瞬間に“中身”が映った。


 白い紙に、黒インクの文字——

 そこには、こう書かれていた。


> 「Bellflower_00は記録ではない。これは提示だ」


 言葉の意味を理解する前に、視界がぐにゃりと歪む。

 結城の記憶、智子の記憶、そして俺の記憶が

 ひとつの映像に混ざり合っていく。


 それは——誰かが意図的に作った「記憶の映像」だった。


 その時、頭の中で聞こえた結城の声が

 現実なのか、同期の産物なのか、判別できなかった。


 ——「ようやく、こっちを見たな」


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