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君のカンパニュラ  作者: 9どう?亜依


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24/52

起点の内部

 Bellflower_00。

 クリックした瞬間、モニターは一度真っ暗になり、

 低いノイズと共に、白い文字が浮かび上がった。


> 【視覚同期開始】

【対象A_06、対象T_03——リンク中】


 視界が、映像と現実の境界を失い始める。

 画面の奥に映っているのは、確かに“俺”と“智子”だ。

 だがその映像は、ただの過去記録じゃない。

 俺の呼吸、瞬き、視線の揺れ——すべてがリアルタイムで同期している。


 Bellflower_00は、記録じゃなく、視点そのものだ。

 観察されている俺と、観察する俺が、同じ視野の中で重なり合う。


 横で智子が息を呑む気配がする。

 彼女も同じ映像を見ているのか、

 映像の中の“俺”を通して、別の視界を覗いているような表情だ。


 青い紙片が、画面の中央にふわりと舞い込んだ。

 それは記録の小道具ではなく、映像の鍵だった。

 紙片が映像の奥へ沈むたび、別の時間軸が開いていく。


 Bellflower_01の断片。

 Bellflower_05の旧企画室。

 そして見たことのない——Bellflower_00の“外側”。


紙片の向こうにあったのは、無機質な操作卓と、

 壁一面を埋め尽くすモニター群だった。


 そのどれもが、俺と智子の映像を映している。

 だが——モニターの中の“俺”は、ほんのわずかに遅れて動く。

 映像が、現実を追いかけている。


 椅子に座る影がひとつ。

 背は高く、顔は薄暗くて見えない。

 けれど、そいつは確かにこちらを見返していた。


 視線が交わった瞬間、モニターが一斉に切り替わる。

 Bellflower_01から07までの映像が、

 順不同に、嵐のように切り替わり続ける。


 それは編集ではなく——崩壊だった。

 構造の外側から、誰かが強引に繋ぎ直している。

 映像の中の智子が、俺の名前を呼び、

 現実の智子も同じ言葉を口にした。


 映像と現実が完全に同期した。


 俺は理解した。

 Bellflower_00は「最初の記録」なんかじゃない。

 これは、観察の発生源そのものを覗き込むための窓だ。

 そして今——その窓は、向こうからも開かれている。


 背筋を伝う冷たい感覚の中、

 俺は相手の口の動きを読み取った。


 ——「まだ、続けるか?」


 画面が暗転し、ノイズだけが残った。

 だが俺の中では、確信がひとつ形になっていた。


 これは終わりじゃない。

  観察は、これから本当の意味で始まる。

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