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レジデント・サーガ   作者: サンダル先生
22/24

22 ハチのように、SAS?


 キイ、とカンファレンスルームを開けるユウキ研修医。

「失礼しまーす、と一応」

「グオオッ!」

「わっ!」


クマか何かかと思ったら…遠くのソファで斜め横に寝ている巨体。顔は天井を斜めに見上げている。白衣を着ているから、医者なのだろう。


「だれだ、このオッサンは・・」

「グオオ!グガガ!」ピタッ!と息が止まる。そして・・・


「ンゴッ!グガガ!」無呼吸か。まあ、この体格じゃあな。


それにしても、なぜ誰も入ってこない。荷物さえ、なにもない。さきほどのメンツは病棟中をあちこち移動してるみたいだが。院生の雑用でも頼まれただろうか。


ユウキは、病棟から院内カルテを持ってきた。看護記録など、目を通す。

「・・・・・そうだ、。転科に合わせての、サマリーを書かなきゃ」


カバンからワープロを取り出し、パカッと開ける。やることはノートPCのワードとそう変わらない。


「・・・・・・・」カチカチカチ、と雛形ファイルに合わせて打っていく。

「グオッ!」

カチカチカッ

「ゴ!」カチカチカ!「グオッ!」


キー打ちと、イビキのコラボレーションだ。


隙間から、間宮が見ている。

「院生の先生は、許してくれるってラーメンの件・・・・な?何やってんの?」小声だが、十分届いている。

「これか?見てろ」


カチカチカ!「グオッ!」カチチカチ!「グオッ!」


「ぷ!」間宮は吹き出しそうになったが、顔は恐怖に満ちている。


カチカチ「グオオオオオオオ!」


チチチ! ユウキは両手を挙げて、立って間宮におじぎした。


「サマリー終了!」パタン、とワープロが閉じられた。

「すごい・・・」間宮は珍しく怒らなかった。むしろ赤面している。


「この人、だれ?」

「その先生・・あっ。ポケベル呼ばれた」

「名前だけでも」小声。

「すぎ、あっごめん!」間宮は詰所へダッシュした。


廊下の外にいた若いナースが、呆然と立っている。

「す、好きって。いま、すきって」


このなり立てナースは、田宮の彼女・・・の1人らしい。彼によると、本命らしい。一緒にダンスコンテスト出たりとか、地方の雑誌にも載ったらしい。今でいうAAAメンバーのような。しかし当時は、そのとき流行のイーストアンドプラス・・で例えられた。


アイドル顔負けの彼女はおでこを広げることで、ありふれようと努めていた。今は目立たず、先輩方を見よう見まねで。心細いのは、新人が自分1人だけということ。でも彼女には田宮がいる。サポートしてあげたいのと、浮気を防止できるというメリットもある。


田宮は、彼女とすれ違いざまに何かささやく。今なら携帯で簡単にメッセージだろうが、端末のない恋人同士は、むしろその不便さでドラマを作り出していた。自分の都合のよいように。


向こうから、田宮が小さく口パクする。

「ユウキ、まだいる?」

「いる」

「今日も22時。ロイホで」

「わかった。ちゃんと来てよ・・」


誰も見てない瞬間、彼女は指で彼の背中をグリグリ。白衣が食い込み、彼はよじれた。彼女の白い歯が一瞬だが濡れこぼれた。


大学だけに限らないが、どんな忙しい職場でも、そこに雄と雌がいる限り・・・・互いの生存本能を急ぎ求め。さまよう。


杉山は時差ボケが抜けられず、とうとう深い眠りのまま。イビキ、無呼吸を繰り返す。ポトッ、と落ちたメモ帳がヒラヒラと開く。今日の予定は・・・


「あす朝の抄読会担当。コベンと今日中に作成すること」とある。


ユウキは帰り、そして・・・

誰もいなくなった。


プチッ、とカンファルームの中は真っ暗に。

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