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レジデント・サーガ   作者: サンダル先生
11/24

⑪ ドランクモンキーズ


 みな、入院患者が1人ずつ入りだした。プレゼンののち、総回診。前夜は・・・あれこれしているうちに、徹夜となった。


朝7時ころ、ぼやけた頭のまま・・・研修医5人はまだ頭を抱えていた。


ユウキは相も変わらず腸閉そくの患者の改善がみられておらず・・・

「胃のチューブをそうだ、十二指腸のほうにすすめるのを依頼・・・点滴は抗生剤は、いるかないらないかな」

何度もカンペを書き直す。発表のためのものだ。しかし、本番ではなるべく見ないほうがいい。


「もと主席」間宮は不本意に充てられた、間質性肺炎。血液ガスデータ、運動歩行での評価、画像などすべて終わっている。手元には、いつの間にか作った「間質性肺炎」の自作冊子がある。勝手に見られないよう、ゴムが巻いてあるのが彼女らしい。彼女はデータの暗記みたいなのを・・・つぶやいている。


エリートの野中は、宮川の的確なアドバイスで狭心症患者の対応はバッチリのようだ。心エコー所見をまとめにかかる。エコーグループのカマっぽいドクターが、教授用の写真をピックアップすみ。


少年、田宮は血痰精査の患者らしい。あまり情報がなく、検査はこれからのようだ。そのせいか、準備が少ない。


美女の川口はうっとうしい鼻声で、徹夜とも思えない余裕ぶりだが・・・

「ん?きいぃーっ!」

思い出したように、メモを消したり書いたり。いきなり立ち上がり、不備な点を補強する。

「あるどすてろん、あるどすて、れにん、あんじおて?ん?あんぎお?ん?」


横のユウキは気が散ってしようがない。しかし、良いにおいがする。

「川口さん、もうちょっと静かに・・」

「いーのよ、いーの!教授に怒鳴られたって、怖くないもん!」

「・・・・・」

「あたしはね。むしろ怒られて育つほうが好き。だって、オープンの方が気楽じゃん?カッコつけるより」


野中がコホン、と本を読むのを止めた。

「グッチ、オープンして何もないなら、それはタダのバカってことだぜ」


笑ったのは、田宮くらいだった。

「しかし、学生の時の本をそのまま使うなんてなあ。学力上がってねえし。そりゃそうか」

「ああ。俺たち、いま国家試験受けたら間違いなく落ちるだろうな」

野中も皮肉った。


この2人はアグレッシブなところは似ているが・・田宮は要領の良さ、野中は計算高さといったところか。


ドカン、と掃除のばあさんが入ってくる。

「・・・・・」

机の下を、堂々と拭いてくる。聞くところによると、給料がものすごく良いという。俺たちより・・・そう思い出しながら、ユウキは机をずらしてあげた。


ところが、婆さんは無視してそこだけ拭こうとしなかった。


「あれっ?」何か・・・何か悪いことしたかな俺。あっ・・・

あんなこと、根に持ってんのか!


キイ、と入ってきたのは当直担当だった先生。太った裸に白衣という。

「ぷわあ!おはよう新人くんたち」

ムードメーカーと言われる、平田先生だ。この先生は民間病院で働いていたが、人員不足でいきなり大学へ戻された。


「おお~やっとるやっとる~!」

みんなのカルテなど覗き込む。


「うわっ。へたくそこの写真。だれ?撮ったの?ふうん」

両手で持ってたお札ほどの写真。引っ張りすぎて、破れてしまった!


「あ」

「い!」間宮は困ったが、上下関係の有意差であきらめた。「あーのりのり」


今でいうカンニング竹山ふうの平田先生は、いきなり踊り始めた。

「あ~のりのり。こ~のりのり。ふふふ。ああーっ(せのび・あくび)今日はあけでやすみふあああぁ~い!」


みな自分の仕事中。


「と思ったら回診あるから残っとけとさ!とさ!」

酔っぱらってるような気がする。机の下から、いきなり川口の股から顔を出した。


「とさっ!」

「ひっ!」

「うう~ん。やっぱり若い子の香りはいいなあクウンクン。こっちのナ~ニはあ~まいぞ」


ドン、と間宮は立ち上がった。

「研修医はみな準備で忙しいので、退去していただませんか!」


ムカッと平田は立ち上がった。

「そっちの水にはいかねえよ!」

「けっこうです!」

「教授には言わんといてな、そんで」


バン、と間宮は締め出した。


田宮は口笛で平手を挙げた。

「あれ、絶対飲んでるよな・・・」

野中も頷いてた。


「どうせ呼ばれるのは、下級医師なんだろ。院生や、そのうち俺たちも」

「院生は、下級医師じゃないでしょ」グッチがイラついた。

「能力のことじゃない。ヒエラルキーの基準からもの言ってんだ」

「何よそれ・・・あんたって女のランク付けもそうやって」


ドン、と野中は立ち上がり・・・トイレへと歩いて行った。


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