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闇の中で蠢く光

月光の下、白刃と漆黒の大剣が火花を散らしながら、幾度となく交わる。

「ギギギ……ギリ……ッ!!」

金属が激しく軋み、火花がリュウガの頬をかすめる。

「……何故だ、何故そこまで魔王を憎む! 亡者となってまで、貴様を突き動かすものは何だ! 答えたらどうなんだッ!!」

リュウガの叫びに対し、暗黒騎士魔王は言葉を返さない。ただ、その漆黒の兜の奥で、業火のような紅い瞳がリュウガを冷酷に射抜くだけだ。振り下ろされる大剣の一撃一撃が、ムーン・サウンドの堅牢な城壁を紙細工のように粉砕し、地響きを立てる。

リュウガの細剣が鋭い銀光を放ち、暗黒騎士の関節の隙間を突く。だが、その重厚な鎧は傷一つつかない。それどころか、暗黒騎士はリュウガが放つ上位魔法をあえてその身で受け止め、肉を切らせて骨を断つ勢いで距離を詰めてくる。

「くっ……これほどの怨念、尋常ではない……! 攻撃が、まるで『憎悪の塊』を斬っているようだ!」

追い詰められ、背後に崩れた尖塔を背負ったリュウガの前で、暗黒騎士がその大剣をゆっくりと天に掲げた。

その瞬間、周囲の空気が一変する。立ち込めていた不浄な闇の魔力ではなく、清冽せいれつで、しかしあまりに苛烈な「光」の波動が大剣の切っ先に集束していく。

「馬鹿な……その構え、まさか……嘘だろ!?」

暗黒騎士が放ったのは、魔王が最も恐れるべき、人類最強の「聖なる奥義」。

『聖剣奥義・極星十文字斬』!!

「な……勇者の技だと!? 貴様、魔王ではなかったのか……!!」

放たれた白銀の十字閃光が、夜の闇を白昼のごとく照らし、リュウガを呑み込む。

リュウガは咄嗟に月光の盾を展開したが、防ぎきれない衝撃が全身の骨を軋ませ、意識を激しく遠のかせる。

「ガハッ……ぁ、あぁ……ッ!!」

血を吐きながら膝をつくリュウガ。端正な顔は泥と血に汚れ、呼吸は荒い。だが、ここで終わるわけにはいかない。

「……美しい僕が、こんな泥臭い負け方をするなど……断じて認めん……ッ!! それに……かつて一度敗れた相手に、再び敗北感を味わわされるのは……どうも後味が悪いんだよ!」

リュウガは折れかけた細剣を支えに、震える足で立ち上がった。彼は瞳を閉じ、残された全魔力、全存在を剣尖の一点に凝縮する。月の魔力と、彼自身の矜持が混ざり合い、青白く、しかし太陽よりも熱い輝きを放ち始めた。

「これで、お別れだ、怨霊……! ムーンライト・レクイエム!!」

一閃。

リュウガの放った「光の突き」が、猛然と突進してくる暗黒騎士の胸元を真っ向から貫いた。

金属が砕け散る凄まじい轟音。難攻不落を誇った漆黒の鎧が、内側から溢れ出す圧倒的な浄化の光に耐えきれず、爆発するように弾け飛ぶ。

「……はぁ……はぁ……、やった、か……?」

霧散していく鎧の破片。その奥からゆっくりと現れた「本体」の姿を見た瞬間、リュウガの思考は完全に凍りついた。

そこにいたのは、腐り果てた魔物の王などではない。

かつてリュウガと高みを目指して競い合い、そして誰よりも魔王を憎み、正義のために全てを捧げたはずの若き勇者。

「ア……ラン……? 嘘だろ、君が何故、こんな姿に……」

そこにいたのは、暗黒騎士の怨念に精神を乗っ取られ、理性を失い、魔力に侵食された勇者アランの成れの果てだった。親友であり、超えるべき宿敵でもあった男の無残な姿に、リュウガの握る剣が、生まれて初めて激しく震え始めた。

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