決別
復興の槌音が響き、ようやく活気を取り戻しつつあったメテオの街。だが、その平穏を切り裂くように、再びあのドス黒い怨嗟の霧が地を這い、空を覆った。
シェリーの強引な魔力によって黄泉路から引きずり戻された、先代メテ王。
もはや人の形すら保てず、肥大化した肉体からは腐敗した魔力が滴り落ちる。「未練」そのものが歩いているようなその姿に、住民たちは恐怖に凍りついた。
「あ……あ……領土……我が、権力……! 貴様ら……家畜の分際で……我が椅子に座るなぁぁッ!!」
言葉にならない呪詛を撒き散らし、不浄の巨躯が進撃を開始する。だが、街の境界線に触れた瞬間、まばゆい白銀の光壁がバチィィィンッ! と火花を散らし、その侵攻を押し返した。
「この忌まわしき魔力……。性懲りもなく、また現れましたか。不浄の魔王……いいえ、未練の塊よ」
街の中央、一段高い壇上で印を結ぶのは、陰陽魔王・清兵衛。かつての魔王軍幹部としての冷徹な計算と、新たに得た清浄な魔力が、メテオの街を巨大な聖域へと変貌させていた。
「今のメテオは、あなたの好き勝手にできる『私物』ではありません。……ここは既に、民の希望と我らの絆で守られた国です! 亡霊は、土の下で眠っていなさい!」
「清兵衛さん、ここは僕たちがやるよ! メテオの未来は、もうあんな奴には渡さない!」
「そうだよ! せっかく綺麗になり始めた街を、またゴミ屋敷にさせないんだから!」
清兵衛の左右から、**真雄と桜花**が飛び出す。二人の肩には、最強の相棒、ニャ王ま神とニャーま神が、その瞳に鋭い神光を宿して鎮座していた。
「行くぞ、相棒! 魂の熱量全開だ! ――『紅蓮憑依』!!」
「あたしたちも! 穢れをすべて、光に変えちゃうよ! ――『清浄憑依』!!」
刹那、二人の幼き魔王の姿が激しい光に包まれる。真雄は爆発するような熱気と共に、燃え盛る紅蓮の甲冑を纏い、その拳には地獄の業火が渦巻く。対する桜花は、天から降り注ぐ光を束ねた純白の法衣を身に宿し、その周囲には汚れを一切寄せ付けない清廉な風が吹き荒れた。
「不浄の王よ、二度目の死を教えてやるッ!! 『爆炎・ニャ王拳』!!」
真雄が音速で踏み込み、不浄の肉塊へと拳を叩き込む。ドォォォォンッ! と爆炎が上がり、メテ王の怨嗟が物理的に焼き切られていく。
「おのれ……ガキが……我を、愚弄するかぁぁぁッ!!」
「愚弄してるのは、あなたのその醜い心だよ! ――『天光・ニャーま旋風』!!」
桜花が優雅に舞うと、純白の光の渦がメテ王を包み込む。不浄の魔王が放つ呪詛の波動が、その光に触れた端から中和され、キラキラとした塵に変わっていく。
「素晴らしい……。真雄くんの破壊力と、桜花ちゃんの浄化力。これこそが、次世代の魔王の形です」
清兵衛は冷静に戦況を分析しながら、印を組み替える。
「――陰陽奥義・『八卦封霊陣』!!」
街の四方に配置された魔導符が一斉に輝き、メテ王の逃げ道を完全に封鎖した。
「さあ、仕上げです。過去の執着ごと、光の彼方へ還りなさい!」
「「これで……終わりだぁぁぁッ!!」」
真雄の紅蓮の炎と、桜花の清浄な光が合体し、巨大な火の鳥のようなエネルギー体となってメテ王を貫いた。
「グアァァァァァァッ!! 我が……我が、栄光……がぁぁぁ……ッ!!」
断末魔と共に、不浄の魔王は今度こそ完全に霧散し、メテオの空には澄み渡るような星空が戻った。




