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過去の栄光

「ふん……別に、あちきは機巧テクニックに頼ってないさ。

あれはあくまで、効率的に沢山の敵を倒すため、あるいは面倒事を片付けるために使用しているだけに過ぎない……。

いわば自動魔導システムみたいなものさぁ

道具に依存しているとでも思ったかい? 甘いねぇ」


キーラはデスサイズと化したキセルを肩に担ぎ、ミマリを冷徹な視線で見据える。

そして、信じられない光景が広がる。アイアン・ハーツの街全体に張り巡らされていた、キーラの魔力を分散させていた魔導ネットが、一瞬にして収縮。

分散されていた膨大な魔力が、滝のようにキーラの本体へと逆流していく。

彼女の全身から、これまでの比ではない、目に見えるぐらいの圧倒的な魔力が嵐のように吹き荒れた。

「でもさぁ……それらを全部捨て去ると、とんでもない事になるのさぁ。

ま、今のあんたには理解できないだろうけどね」

キーラの瞳は深淵の青い炎を宿し、肌は陶器のように透き通り、その存在そのものが「絶対」へと変貌していく。

それは、花魁の妖艶さと死神の冷酷さが同居する、究極の美。

「初めまして。あちきが……真の最強魔王、キーラだよ」

キーラのデスサイズに、収束した全ての魔力が注ぎ込まれる。漆黒の刃は銀河を閉じ込めたかのように瞬き、禍々しい輝きを放ち始めた。

「な、なんだこのデタラメな魔力は……!?

私の本能が こいつを危険だと吐き出し続けている……!

そんな馬鹿な…存在しないはずの出力……!?」

ミマリの顔は恐怖に歪み、その指先が震え始める。彼女の「技術」が、キーラのあまりにも規格外な「力」の前で、完全にその意味を失っていた。

「さあ、見せてあげるよ。あちきの本当の『舞』をね。――機巧奥義・デスサイズ・極光乱舞きょっこうらんぶ!!」

シュンッ、シュンッ、シュンッ!!

キーラの姿が空間から完全に消失した。残像ではない。

光速すら超える移動速度。ミマリの視界は、キーラの姿を捉えることができない。

「どこだ……!? どこに消えた!? 私のシステムは、何も感知できないだと!?」

ミマリが焦燥に駆られて周囲に魔力糸を張り巡らせるが、それは全て空を切る。

次の瞬間、彼女の背後に、キーラのデスサイズの刃が静かに、殺意を伴って現れた。

「遅いね。この速度は、あちきにしか踏み込めない領域ディメンションだよ。……一つ」

ザンッ!!


「えっ!?」


ミマリの肩から腕が切り離され、影のように霧散する。痛みすら感じさせない、あまりにも速すぎる斬撃。


「ぐ、あああああああああッ!?」


「二つ」


ザンッ!!

ミマリのもう一方の腕が、肩から切り離される。

「バ、馬鹿な……! 私の『技術』が、なぜ……なぜ通用しない……!」

「あんたは勘違いしているのさ。あちきの『機巧』は、所詮この世界の物理法則に準じているだけ。でも、今のあちきの『力』は、その法則さえ書き換える。あんたの技術は、その上でしか機能しない。……つまり、あちきの敵じゃないのさ」

キーラはデスサイズを優雅に回し、ミマリの周囲を舞い続ける。その舞踏は、見る者にとっては芸術的でありながら、ミマリにとっては死の宣告だった。

「これで、三つ」

ザンッ!!

ミマリの両足が、膝から切り離される。彼女は宙を舞い、そのまま地面へと崩れ落ちた。もはや、伝説の左腕としての矜持は、見る影もなかった。

「……最後だよ、亡霊。あんたの未練ごと、あちきが完全に絶ち切ってあげる」

キーラはデスサイズを大きく振り上げ、輝く刃をミマリのコアへと向かって振り下ろした。

「消えな。――機巧奥義・断罪のジャッジメント・サイズ!!」

ドォォォォォォォォォンッ!!!!!

光と闇が交錯する爆発が起こり、ミマリの存在は、そのコアに残っていたわずかな怨念すら残さず、完全に消滅した。アイアン・ハーツの歯車と影の迷宮は、一瞬にして浄化され、キーラの圧倒的な勝利を証明する静寂が訪れた。


「あんたたちが最凶だったのは あちきたちがいなかった遠い昔の話しさぁ


…ふぅ。これで一人、お片付け完了だね」

キーラはデスサイズを再びキセルの姿に戻し、煙をゆっくりと吐き出した。その表情には、一切の疲労の色は見えず、ただ女王としての絶対的な余裕が浮かんでいた。

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