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煙管と鎌

アイアン・ハーツの歯車と影の迷宮。キーラは、自身の魔導ネットを乗っ取られ、万華鏡のように増殖する自身のビットに包囲されていた。

「くっ……! まさか、あちきのシステムが、ここまで深く侵食されるなんてねぇ……!」

キーラの額に脂汗が滲む。対峙する左腕のミマリは、優雅に指先を動かし、キーラの魔導炉の出力を徐々に絞っていく。

「ふふ……。左腕は『技術』の象徴。お前の機巧は、私の指先で操る操り人形。その命綱、私が握っているのだ」

ミマリの声が、キーラの脳内に直接響く。魔導ネットを介して、憎悪や絶望といった負の感情が流れ込んできた。

「機巧の女王よ。お前は、自分の道具に裏切られる絶望を味わいながら死ぬのだ……」

「……黙りなよ。あんたみたいな『旧世代の亡霊』に、あちきの感情をハッキングできるとでも思ってるのかい? あちきは……ただの人間じゃないんだよッ!」

キーラは咆哮するが、ミマリは冷酷に微笑むだけだった。キーラの全身を覆う和風ゴシックの衣装が、徐々に自身の魔導ビットから放たれるレーザーによって焦げ付き始める。

「魔導炉、臨界点突破……っ! メインシステム、オーバーロード寸前……! このままじゃ、あちきごと爆発する……!?」

キーラの瞳に、初めて「敗北」の二文字がよぎった。最強魔王と謳われた彼女も、ミマリのあまりにも巧妙で多角的なハッキング技術には、対応しきれていない。自身の『機巧』が、最も信頼していた武器が、今や最大の凶器となって彼女に襲いかかる。

「……諦めるのさ。お前はもう、詰んでいる」

ミマリがトドメとばかりに指を弾いた。数百の魔導ビットが一斉にキーラの心臓へと狙いを定める。万事休す――。

その瞬間、キーラはふと、口元に不敵な笑みを浮かべた。

「……ふん。残念だったね、亡霊。あちきは、そんな『既定路線』で死ぬような女じゃないよ」

キーラは咥えていたキセルを、ゆっくりと口から離した。

「あんたは知らないだろうけど、あちきは機巧の女王であると同時に、『花魁』でもあるのさ。そして、花魁は……**『死神』**を演じるのも得意なんだよ」

キーラがキセルの羅宇らうを掴み、一気に振り抜いた。鈍色の煙管が、見る間に禍々しい黒い大鎌へと変貌する。柄には龍の彫刻が刻まれ、その刃は月光を吸い込むかのように漆黒に輝いていた。

「このキセルは、あちきのコアと直結した『真の最終兵装』さ……。あんたごとき雑魚が、ハッキングで操れる代物じゃないよ!」

「機巧奥義・デスサイズ・乱舞らんぶ!!」

キーラは覚醒した。デスサイズと化したキセルが唸りを上げ、自身を包囲していた魔導ビットの群れを一閃で両断する。彼女の身体から溢れる魔力が、まるで黒い炎のように燃え上がった。

「な、なんだと……!? そのキセルは、私のシステムに干渉できない……!? まさか、機巧でありながら、私の『技術』が通じないだと!?」

ミマリの顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。彼女の最大の武器であるハッキングが、全く通用しない。

「残念だったね。あちきの本当の力は、道具の数じゃなくて、この『魂』にあるのさ。さあ、今からあんたに、地獄の遊廓を案内してあげるよ」

キーラはデスサイズを軽々と回し、ミマリへと向かって優雅に、殺意を込めて舞い始めた。鋼鉄の街の歯車が、死神の鎌の軌道に共鳴するように、狂ったように回転速度を上げていく。

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