これがギャル魔王スタイル
アイアン・ハーツの地下深層、重力が泥のようにのしかかる戦場。
サヤカは膝をつき、肩で激しく息をしていた。
右腕のカイエンが放つ紅蓮の剣圧が、彼女の自慢の衣装を容赦なく切り裂いていく。
「あはは……もう、マジ最悪。
髪はボサボサだし、服もボロボロ。全然『映え』てないじゃん……。
あいつ、マジで力がバグりすぎだよ……」
「ハッ、口ほどにもない! 軟弱な魔法に頼る小娘が、大魔王の右腕に勝てると思ったか! 塵に還れ、無能な魔王め!」
カイエンが巨大な剣を天に掲げ、とどめの一撃を振り下ろそうとした
その時。
街の北側から、空間を震わせるほどの重厚な衝撃波と、ガン・シールダーの咆哮が届いた。
『――俺の盾は、防御ではないと言ったはずだッ!!』
その轟音を聞いた瞬間、サヤカの瞳に宿っていた諦めの色が、一気に黄金の魔力へと塗り替えられた。
「……そっか。盾じゃない、か。あはっ、シールダーくん、超カッコいいじゃん。……あんなの見せられたら、私だけ『負けましたー☆』なんて、口が裂けても言えないよねッ!」
サヤカは地面を叩き、重力魔法の呪縛を力ずくで引き剥がして立ち上がった。
「おい、紅蓮のゴリラ。
あんた、私のこと魔法しかできないと思ってた?
……残念でした!
私、こう見えて『努力型』のギャルなんだから!」
サヤカが空いた両手を後ろにまわす。
「現世にいた時、自分磨きの一環で『通信講座』で取ったのよね。――無外無我流剣術、免許皆伝!」
「何を……戯言をッ!」
「まだあるよ! この世界に来て魔導フォンができるまでの暇つぶしに 何してたと思う?
――異世界流星二刀流、奥義皆伝!」
サヤカの左右の手に、純白の魔力と漆黒の影が凝縮し、二振りの美しい宝剣が形成された。
彼女はそれを軽やかに回し、不敵な笑みを浮かべる。
「魔法と剣術のハイブリッド――これが
『ギャル魔王』のスタイルだよッ!!」
シュンッ!!
サヤカの姿が消えた。重力下とは思えない超高速の踏み込み。カイエンの紅蓮の剣がサヤカの頭上スレスレを走る、
次の瞬間には サヤカが彼の懐に潜り込んでいた。
「遅いよッ! 『現世流・一ノ太刀・一閃』!!」
一閃。カイエンの重厚な鎧が紙細工のように切り裂かれる。
「グアッ……!? な、なんだこの剣筋は……重力の影響を受けていない……!?」
「当たり前じゃん! 心頭滅却すれば火もまた涼し、ってね!
さあ、次は異世界の味を教えてあげる。――『星屑二刀流・双龍旋・乱華』!!」
サヤカの剣舞が始まった。右手の白剣が光の粒子を撒き散らし、左手の黒剣が影の斬撃を刻む。魔法で敵の動きをコンマ秒単位で拘束し、その隙間に免許皆伝の剣技を叩き込む、魔武複合の蹂躙。
「オラオラオラ! どうしたの!? 伝説の右腕さん! 動きが止まって見えるよ!」
「お、おのれぇ……小癪な小娘がぁぁぁッ!!」
カイエンが狂ったように剣を振り回すが、サヤカは蝶のように舞い、蜂のように刺す。もはや戦場は彼女の独壇場、独り舞台と化していた。
「最後は最高に『映える』フィニッシュで行くよ! 魔力最大出力!
――『極大奥義・銀河一文字』!!」
サヤカが二つの剣を十字に交差させ、全魔力を込めて一気に振り抜いた。極太の光の十字架がカイエンを真っ向から切り裂き、その背後の建物ごと彼を爆砕した。
「……ふぅ。……見た? これが私の、ガチの姿なんだから」
サヤカは剣を霧散させ、腰に手を当ててふんぞり返る。その背後で、アイアン・ハーツの夜空に特大の魔法爆発が花開いた。




