ギャルとキセルと盾と刀
ズドォォォォォォンッ!!!!
アイアン・ハーツの広場に、光と熱の巨大な柱が突き立つ。だが、その直後、爆煙の中から二人の少女の罵り合いが響いた。
「あっ……0.2秒はやかった……。あちきの計算だと、今のタイミングで誘爆するはずだったのに!」
「ったく、息が合わないねぇ! あんた、魔力を乗せるタイミングが早すぎるんだよ! 理系の理屈を戦場に持ち込むんじゃないよッ!」
キーラは悪態をつきながらも、指先でピアノを叩くように空を舞わせる。彼女の思考に同期し、宙に浮かぶ数十柱の魔導ビットが扇状に展開。ビットの銃身が赤熱し、高密度の魔導レーザーが雨あられと降り注ぐ。それは蘇った亡者たちの四肢をミリ単位の精度で正確に焼き切り、再再生の暇さえ与えない。
「いいじゃない、結果オーライだし! ほら、追い打ち行くよー! シャッターチャンス逃さないでね!」
サヤカはキーラの文句をさらりといなし、空中を跳ねるように舞いながら、指先で極彩色の光を刻む。キーラが放った青白いレーザーの軌道に合わせ、サヤカが独自の『映え魔力』――超高彩度の魔力粒子を霧のように散布した。
ドォォォォォォンッ!!!!!
ビットの魔導弾が敵に接触した瞬間、サヤカの粒子が触媒となって起爆。本来の破壊力を数倍に跳ね上げた**『連鎖爆裂』**が、戦場を極彩色の地獄へと変える。亡者たちの軍勢は、逃げる間もなく光と炎の渦に呑み込まれ、未練ごと塵へと帰していった。
「ふん……。まあ、及第点だね。あちきの演算を補強する分には、あんたの出鱈目な魔力も使い道があるよ」
「でしょ? キーラちゃんの精密射撃に、私のド派手な爆破! これ、マジで最強のコンビなんじゃない? ユニット組んじゃう?」
二人が言い争い、背中を預け合って前線を蹂躙する一方で、街の中央広場では、静かなる絶望の壁が立ちはだかっていた。
「……ここから先は一歩も通さぬ。アイアン・ハーツは、我が盾の守護領域だ」
ズゥゥゥゥンッ!!
数体の亡者魔王が放つ、大気を腐らせるような呪いの魔弾。それを、ガン・シールダーは巨大な銀盾一枚で、眉一つ動かさずに受け止める。物理的な衝撃を盾の魔導回路が全て無効化し、それどころか吸収したエネルギーをカウンターへと変換していく。
「蓄積完了。……排出しな」
シールドの側面から禍々しい砲身がせり出し、魔砲ガンの銃口から一気に凝縮された光が放出される。
ズドオーン!!!!!
轟音と共に放たれた一撃は、重戦車のような亡者たちの隊列を一直線に貫通し、一瞬で消滅させた。
鉄壁の防御が街の心臓部を死守し、二人の魔王が前線を押し上げる。ぎくしゃくした関係のはずが、実力者同士の「あいつにだけは負けたくない」という意地が、奇跡的なまでの超連携を生んでいた。
その様子を、ムーン・サウンドのカフェで魔導映像越しに眺めていたシェリーは、パフェの頂上に鎮座していたチェリーを口に運び、種をペッと吐き出した。
「へぇ……意外とやれているじゃないか。特にあのガキ二人、口が止まらない割には手も止まってないねぇ。お互いの欠点を、最悪の性格で補い合ってるよ」
シェリーは小さく笑い、満足げにパフェのグラスを空にした。だが、彼女の紫の瞳は、すぐにモニターの隅――アイアン・ハーツの地下深層から湧き出でる「より深い闇」の予兆を捉えた。
「……さて。あの子たちには少し優しすぎたかね? 仲良しごっこで終わらせちゃあ、守護者の名が泣くってもんさ」
彼女が指をパチンと鳴らすと、カフェの空気が一気に凍りついた。
「そろそろ本命を投入してあげようかねぇ。……死してもなお飢える、本物の『暴君』たちをね」
シェリーの底知れぬ「期待」という名の過酷な試練が、さらなるギアを上げていく。アイアン・ハーツの地下から、これまでの亡者とは一線を画す、圧倒的な質量を持った「何か」が這い出そうとしていた。




