第5話 美少女に質問責めにされるのも悪くはないな。
「うふふ、ごめんなさい。利用してしまって。」
ちっとも反省の色が見えない謝罪を倉瀬から受けた。
「…なら、笑顔をどうにかしろよな…。まったく、それにしても、ああいう輩を上手くあしらえるんだな。意外。」
もっと世間知らずなお嬢様だと勝手に思っていたが、見た目には寄らないものか…。
「自分で言うのはなんですが、この容姿なのでああいう方が近づいて来るのは慣れているんですよ。中学時代は大変でしたよ〜。毎日は…言い過ぎかもしれないですが、告白ラッシュでした。」
やっぱり美人でも色々大変なんだな…。まぁ、俺には理解出来ない世界ではあるが…。
「そんな中学時代で回避する術を覚えた訳ね。でも、良いのか?あいつ、結構上玉じゃない?カッコいいし、明るい奴に見えたけど…。」
何故、特に知らない奴の肩を持つのか…自分でも疑問に思う。
「私はあまり容姿に拘りは無いもので…、性格は分からないですけど…難波な人は嫌いです。誠実さが足りません。」
誠実ね…。あいつももっと強かに行けばワンチャンあったのかもしれないな。…知らんけど…。
「なら、今はこのクラスに好きな人はいない訳か〜。未だ知り合って時間も経っていないし…。それを聞いたらクラスの男子達は喜ぶんじゃないか?もしかしたら、自分でも〜って。」
俺としては是非、そうなって欲しいものだ。こいつとクラスの誰かが付き合えば、俺は陰に徹する事が出来るからな。
「あ、え〜と、そ、そうですね…。」
「…?何か歯切れが悪いな…。変な事は特に言ってないと思うけど…。」
倉瀬は急に大人しくなり、なんだか顔を紅くしてもじもじし始めてしまった。なんだが、俺の方をチラチラ見ている気がするし…。
「…まぁ、その事は一端置いといて、あ、ほら、もうホームルームが始まりますよ。」
倉瀬の言葉尻に続くように予鈴がなり、教室が入室。変な空気になっていたし、正直ありがたい。とはいえ、確か自己紹介だっけ…。無難に終わらせればいいか。
「よし、さくさくやっていくぞ〜。この時間の内に委員会とか決めとかいかん事が結構あるからな。出席番号順で行くぞ。まずは一番の奴。」
早速俺か…。こういう時は、出席番号が早いのは嫌になる。前の人が言う台詞を少しパク…拝借して良い感じに纏めることが出来ない。…取り敢えずそれっぽくするか。
「鳴海中学から来ました。秋元浩志です。趣味はゲームと漫画です。宜しくお願いします。」
なんて事のないつまらない解答。それゆえにつっこみどころもない素晴らしい解答だ。
疎らな拍手が所々で鳴る。誰も興味が無さそうだ。
「誰か質問がある奴はいないか?いないなら次の奴〜。」
教師が尋ねるが、皆静かだ。俺は自らの目論みの成功を確信し、席に座る体勢を取る。
「はいはい〜。質問良いですか?」
教室に反響する綺麗な声。だが、今はそれが非常に憎たらし音へと耳で変化する。
…声の出所なんて決まっている…。
ゆっくりと顔を横に向ける。倉瀬がニヤニヤした顔をしながら手を上げていた。
「ゲームと漫画って、具体的には何が好きなんですか?」
…野郎…。そんなに俺に恥を掻かせたいか。さっさと終わらせたいのを知っているだろう…。しかも具体名まで言えと、俺を殺したいのか…。そんな事言ったら、今後の渾名が確定するだろう…。
「……。」
暫しの沈黙。考えなくては、この場を切り抜ける方法を…!
「すいませーん。聞こえていますか?」
追い打ちをかけてくる倉瀬を無視し、思考を研ぎ澄ませる。結論から言えば、基本的には漫画は何でも好きだし、ゲームだって同じだ。単純に高校生の趣味なんてそんな物だろう。
適当に大体全部好きと言う事も出来るが、倉瀬のせいで嫌に注目を浴びている状況だ。生半可な解答じゃ、逆にしらけさせるだけだろう。
となれば…。
「えー、そうですね。好きな漫画はバトル漫画、ゲームはfps系が好きですかね。以上です。」
間髪入れずに急いで席に座る。無難な選択といったところか…。如何にも10代の男子が好きそうなジャンルだ。これで目立ちもしないし、記憶にだって残る事は無い。
肝心な倉瀬はというと…。
「…fps?何かの暗号ですか?」
良く分かってない御様子だ。だったら聞くんじゃないよ……。
「……木原瞳です。宜しくお願いします。」
…ぱちぱちぱち……
(あれからテンポ良く進んだな。結局、質問(だる絡み)されたのは、俺だけか…。次は倉瀬の番だな…。)
倉瀬の番が近づくにつれてそれに比例するようにクラス野男子達がそわそわしているのを感じる。色々質問を考えているのだろう…。
まぁ、こいつの容姿は群を抜いている。クラス、学年を飛び越えて学校の誰よりも可愛いかもしれない…。
見た目だけだけど…。
「次の人、お願い。」
「はい、花恋中学から来ました。倉瀬美鈴です。皆さん、仲良くして下さいね。」
うおぉーと歓声が上がる。未だ名前と中学しか言ってないじゃん…。何をそんなに盛り上がってるんだよ…。
「はい、質問良いですか!好きな男性のタイプは?」
一人の男子が早速、手を挙げた。
(いきなりなんてデリカシーの無い事を聞くやつだ…!流石に失礼だろ…!)
「おい!幾ら何でも…。」
「秋元さん…。大丈夫です。」
反論をしようとする俺に倉瀬は小声で言い放つと、何の躊躇いも無く応答した。
「そうですね…。そういったものは考えた事はありませんが…。自分の考えを持っていて、少し面倒くさい拗らせた人でしょうか。」
質問した本人も唖然としていた。恐らく半分冗談で発言したのだろう。倉瀬も受け流す事くらい出来た筈だ。それでも答えたのは、こいつの生来のものなのか、俺には分からない…。
それにしても…。
「お前、男の趣味悪いんだな。」
小声で倉瀬に尋ねると、少しむっとした顔で「バカ…。」と怒られてしまった。
失礼な…こう見えても成績は良いんだぞ…。




