第30話 どんな状況か分かっていない鈍感主人公と女の子達の熱き死闘!!
「どういう事ですかこれは!!!」
踵を返した美鈴が俺に詰め寄る。凄まじい形相だ。
「どういう事って何の事だよ。」
あまりの気迫に気圧されてしまうが、何とか言葉を絞り出す。
「聞いてませんよ!女の子と一緒にいるなんて!」
「そりゃ言ってないからな…。別に友達が女で悪い事無いだろ。」
「あります!大アリです。不健全です。不潔です
!」
「それなら俺とお前は友達じゃないって事になると思うんだが…。」
「今はそんな事は聞いてない!説明して下さい!事細かに全てを!」
「みーちゃん…。ちょっと落ち着いて。秋元さんが困ってるよ…。」
遅れて戻ってきた佐渡さんが美鈴を静止する。
「甘やかしちゃ駄目だよ霞ちゃん。この浮気者には全部白状させて、しかるべき制裁を…。」
なにか恐ろしい事を口走る。あまりの大声で通行人もこちらを観ている。確かに、こんな修羅場?に遭遇するなんて事態めったにある事ではない。
「ちょっと待ってくれ!俺が浮気者だと。誤解される様な言い方はよせ。俺とお前はそもそもそんな関係じゃないだろ…。」
「えっ…?そうなんですか?私てっきりみーちゃんとお付き合いされているとばかり…。」
おっと…?佐渡さんまでそっち側に行ってしまうのかい…。そりゃないぜ…。
「誤解だ!ただの友達!」
「そうなんですか…。みーちゃんといつもイチャ…仲良さそうなんでつい…。皆も噂していましたし…。」
(ん…、今なんて?それより道理で最近、男子の視線が一層厳しくなったのか分かったわ…。)
感じていた些細な疑問が解けてすっきり…とはいかない!この場を何とか切り抜けなければ!!
「お兄さん…この人、知り合いなの?」
栞ちゃんは騒ぐ美鈴を観たからなのか、少し怯えた表情で俺に尋ねる。
「ああ、そうだぞ。危険だから、あまり関わらない方が安全だ。」
「ちょっと!適当な事を吹き込まないで下さい。私の名前は倉瀬美鈴。こっちの子は佐渡霞。」
「ど、どーも、始めまして。」
「えーと、貴方の名前は…。」
「栞です。潮風栞…。中学三年生です。」
「ちゅ、中学生なんだ。す、凄い。」
ゴクリ、と佐渡さんは唾を飲み込んだ。おい…どこを観て言ってるんだ。
「みーちゃんにも思ってたけど……、それに比べて私は…。」
自らの胸元を擦り、あからさまにショックを受けている。
(大丈夫だよ、佐渡さん。こいつらが外れ値なだけだから…。)
心の中で静かにエールを送った。
「お二人はお兄さんとどういう関係なんですか?」
「私は…同じ部活のメンバーってだけだけど…。」
チラりと、美鈴の方を観る佐渡さん。
「そうですね。私と浩志くんの関係一言で言い表すのはとても難しい…、そんな大人な関係ですかね。」
「もしかして…、彼女さんとか…。」
その言葉を聞いた瞬間、美鈴の目が輝く。
「そう見えます?やっぱりか〜、噂もされてるからな〜。他の人にはそう見えちゃいますか〜。」
息を吹き返すが如く、さっきの態度から軟化する。
「栞ちゃん、こいつの冗談を真に受けちゃいけないよ。俺とこいつはただの友達。」
美鈴にツッコミを入れる様に俺は答えた。
「も〜う、そんな軽く言わなくていいのに〜。」
「なんだ…、お付き合いしてないんだ…。良かった…。」
ぼそっと、零れる言葉を俺は聞き逃す事は出来なかった。
(…良かった?いったいそれはどういう…、いや、まさかね…。)
頭に浮かび上がる可能性を必死に振り解く。
「そ、それで、潮風ちゃんは浩志とどういう関係なんですか?」
「ああ、この娘は妹の友達でな…。今日は妹と三人で遊んでたんだよ。丁度、小説の題材に困ってたところだから…それもかねてね。」
「浩志くん…、一体どんな小説を書こうとしてるんですか…。」
美鈴はどこか軽蔑する様な視線を送る。
「別にそういうジャンルじゃないぞ!」
俺は慌てて否定した。
「そんな事より…お前達は小説は完成したのか?」
「私はもう直ぐ出来ますよ。みーちゃんはもう完成したそうですが。」
「えっへん!楽しみにしていて下さい。」
「成る程…逞しい想像力があれば簡単に書けそうだな。」
俺も帰ったら手をつけ始めないとな…。
「お兄さんの小説読んでみたい。」
「いいぞ!まぁ…これから書くからまた今度だけど…。」
「本当!楽しみにしてるね。…そうだ、そろそろ行かないと美波ちゃん、心配してるよ?」
「そうだそうだ、すっかり忘れていたよ。それじゃ美鈴、佐渡さん、また来週。」
俺が2人に別れの挨拶をしたと同時に栞ちゃんが美鈴の元へと駆け寄っ行った。
「私…負けませんから…。」
「…!私こそ、歳下だろうと渡すつもりはありません。」
(…何か2人が見つめ合ってるが、こっちからじゃ全然分からん。)
眺めていると、佐渡さんがこちらに気づいたのか、慰めている様な顔をされた。
「お兄さん…行きましょう。」
「ああ、挨拶は済んだのか。」
「はい、しっかりと済ませました。…えい!」
そう言うと、栞ちゃんは俺の腕に抱き着いてきた。
「おっと…良くないぞ栞ちゃん、こういう事を男子にやったら…。」
引き離そうとするが、思っているより力が強い。
「…少しだけだぞ?」
「わーい!」
「大丈夫、みーちゃん?」
「俄然、燃えてきた。ぜっったい負けない!」




