第27話 「これってデート、ですよね」——小説のネタ探しという大義名分を得た俺は、銀髪美少女と出かけることにしました
「う〜ん、何も思い浮かばない…。」
机に座り、頭を悩ませる。目の前には一枚の紙。そう、原稿用紙だ。
「いきなり書けって言われても無理だろ…。」
時は土曜日の昼下がり。学生や社会人は大抵は休日だろうか…。その至福の時間に、唸る一人の男。事は昨日に遡る。
文芸部を始めるに至ったものの、活動実績が乏しい俺達は急務に追われていた。
「文化祭等で部誌を発行、またはコンクールに出品すると書いてありますよ。」
スマホを片手に先輩が呟く。
「文化祭って6月とかだろ、流石にそこまで活動実績が無いんじゃ、不味くない?」
「コンクールもいきなりはハードルが高いよ…。」
「万事休すか…。」
「待って下さい。文化祭での発布はあくまで代表的な活動の一つです。中には週に一回部誌を発布する勢力的な学校もあるそうです。」
「週間かよ。すげーやる気だな。」
所謂、強豪校(?)ってやつなのか?
「流石に週間はきつくない?」
俺は口を挟む。
「確かに…。月に一回が現実的なところでしょう。」
先輩は風紀委員を兼任している。俺と美鈴だって学級委員をやっているんだ。予定がいつでもと空くとは限らない。
「では、月一での部誌の発行。これが今後の目標と言う事で異論ありませんね。」
美鈴が纏める。
「異議なし」
全員が賛同した。
「では、決まりです。先辺って明日から休日ですから、皆さんにはその間に一本、短編小説を書いてもらいます。」
「えー!急過ぎない?」
「いえ、決まったなら行動あるのみ。これは部長命令です。分かりましたね、皆さん。」
部長になって張り切っているんだか…、皆、思い思いの考えの中、渋々了承した。
そして、今に至る。
「やべー…、何も浮かばない。何か取っ掛かりは無いか。」
椅子にもたれ掛かり項垂れる。そもそも小説等書いた事が無い。素人そのものだ。
「読書感想文なら小学生の時に書いたな〜。」
現実逃避も虚しく消えていく。せめて、何か題材でも決まれば…そのまま勢いでなんとか。
「そんな都合の良い話がある訳が…。」
その時、バタンッとドアが開く。
「お兄ちゃん…ちょっと良い…、って!何やってるの?」
いきなり部屋に入って来た俺の痴態を美波に観られる。
「考え事〜。美波さぁ〜、せめてノックはしよ。お兄ちゃんも年頃だしさ。」
「なにそれ…、キモ。」
「俺が許可も無しにお前の部屋に入ったら嫌だろう。」
「一生口聞かない。」
「何だ?」
「この後予定ある?」
「お兄ちゃんとデートしたいのか?いいぞ別に、今煮詰まったいるところだから。」
「冗談でも変な事言うのやめて、そうじゃなくて…この後、栞ちゃんと家で遊ぶんつもりだけど…」
栞ちゃん…。あの銀髪美少女か〜。
「良いんじゃないか?あれだったら、俺は外に出てるし…。」
このまま机に向かっていても良いアイデアは浮かびそうも無い。ぶらぶら街を歩けば、何か取っ掛かりが見つかれば幸いだ。
「ううん…、寧ろ、栞ちゃんがお兄ちゃんに会いたがっているの。」
「へっ!?俺にどうして?」
「私が聞きたいよ〜。お兄ちゃん、やっぱりこの前、何かしたでしょ…。」
疑念の眼で俺を訝しむ。まさか妹に疑われるとは…。
「ほんとのほんとに、神に誓ってやってないから…!」
「そうだよね。お兄ちゃんがそんな積極的なら、彼女くらいとっくに出来ているはずだし…。なんでなんだろ。」
その通りだけど、フォローの仕方が…。それにしてもマジに分からん。そんなに俺に興味津々なのか?
「せっかくのお誘いだけど…俺は執筆があるから…、街でネタ探しでもしてくるわ。」
「えっ!小説書いてるの!意外。」
「自分でもそう思う。まさか俺が文芸部に入るなんて。」
「本当に、お兄ちゃんが高校で部活やるなんて…、それじゃ、邪魔しちゃ悪いし…栞ちゃんには私から断わっておくね。」
「ああ、よろし…。」
その瞬間、脳内に電流が走った。その衝撃は全身の神経に伸び、まさに天啓、その二文字が頭に浮かんだ。
「いや、待ってくれ。予定変更、暇だと伝えてくれ。」
「急にどうしたの?」
「ふふふ、妹よ。俺はもしかしなくても天才だったのかもしれない。」
「えっ、何?怖。」
「お兄さん!久し振りですね!て言っても数日振りだからそこまでじゃないか。」
1時間後、栞ちゃんはうちに遊びに来てくれた。
「やぁー栞ちゃん!いらっしゃい!そのワンピース似合ったているね。」
栞ちゃんは薄水色のフリルの付いたワンピースを着ていた。凄く可愛らしいく、左側にあるワンポイントのリボンの髪留めも良いアクセントだ。
「本当ですか!?やったー!」
無邪気に顔をほころばせる。まさに天真爛漫を体現した様だ。
「これお気に入りのやつ何ですよ。お兄さんに会えるって聞いて、気合入れてオシャレしちゃいました!」
「それは嬉しいね〜。そんなに俺に会いたかったの?」
「はい!」
弾ける笑顔に若干罪悪感を憶える。
(ごめんね栞ちゃん。これも小説の為なんだ…。)
「それでさっき美波と相談したんだけどさ。俺達3人で何処か行かない?」
「勿論!楽しみだな〜。これってデート、ですよね。」
う〜ん、それはどうだろ…?




