第20話 『【悲報】車内の乗客、男子高校生の仕返しによる極上のイチャつきを特等席で見せつけられる』
「ねぇねぇ?何で告白するところ観てたんですか?」
放課後、一緒に(不可抗力)帰っていると美鈴はニヤニヤした表情で尋ねてきた。
「だ・か・ら!何度も言ってるだろ!何かあったら心配だったからって!」
「本当に〜?それだけですか〜?」
余程嬉しかったのか、いつもよりグイグイくる。若干、いやかなりウザい。いつもの5割増しくらいには。
「他に何があるんだよ。俺が教えて欲しいくらいだよ。」
「またまた〜。本当は分かってる癖に。いいんですか、あるんでしょ?聞きたい事。」
「うっ!」
図星を突かれる。この状況になっても、あの言葉が頭に残っているのを見透かされている様だ。
「話を聞いていたんじゃ、当然気になりますよね?わ・た・しの好きな人が誰なのか。」
全てお見通しといった様子で煽る美鈴。その顔を観ると腹が立つ事この上無いが、生憎その表情を変えるカードを持っていないのが現状である。
「分かったよ…。降参だ、気になってるよ。お前の好きな人。」
駅のホームで電車を待ちながら、懺悔をする様に全てを解き放した。
「やっぱりそうだ〜!浩志くんって本当に分かりやすいですよね!いつもは斜に構えてるのに。そういうところ可愛くて好きですよ私は。」
(うぜ〜。何とか痛い目を見せたいな…。)
「どうしようかな〜?言っちゃおうかな〜?でも恥ずかしいな〜。でもどうしてもって頼まれたからな〜。」
手を顔に当て、ほんのり紅色に染まる頬を揺らす。これを観るとふかしという訳ではないらしい。
「どうしてもなんて言って無いし。別に気になるっちゃなるけど、そこまでじゃないし…。」
つい強がってしまう。ぶっちゃけ滅茶苦茶気になる。
「ふふ、意地を張らないの。分かってますから。天邪鬼なひ・ろ・し君」
「はいはい。ほら、電車が着たぞ。馬鹿な事やってると乗り過ごすぞ。」
俺達は開いたホームドアからいち早く乗り込むと、疎らにある空席に座り込んだ。
「それで私の好きな人はですね〜…」
「その話まだするのね。…ちょっと待った!」
「どうしたんですか?心の準備が必要なタイプでした?」
「違う違う。いやね、良い事を思いついた訳よ。」
妙案がぴーんと浮かぶ。
「ほうほう。その心は?」
「二人で同時に言うのはどう?好きな人。」
「ほう。良いでしょう。同時公開という訳ですね…。……同時?…えっ待って、浩志くんにも好きな人いるの?」
さっきと打ってかわり、豹変する美鈴。
「それは男子高校生なんだし…好きな女子の一人や二人くらいは…なぁ。」
「一人や二人!!ちょっと!どういう事ですか!?聞いてませんよそんなの!」
「だって〜、言って無いし〜。お前が勝手にヒートアップして自分の事ばかり言うからそんな暇無かったし〜。」
当てつけの様にさっきの美鈴の態度や口調を真似てこれ見よがしに煽る。
「むかむか〜!何ですか!その飄々とした態度はシャッキリしなさい!」
(さっきまでのお前じゃ!)
「まぁ〜良いじゃないか?どうせ今、この場で発表するんだろ。遅かれ早けれだ。」
「ちょっ〜と待って!ストップ!考える時間を下さい!」
「何だよ…。お前が先に…。」
「いいから!少し黙る!」
さっきまでとは裏腹に取り乱しテンパる美鈴。その様子から俺は企みの成功を確信した。
「……高校に入ってから浩志くんは私以外仲の良い人はいないし…。女子と話していのも観たこと無いし…。」
何か俺の悪口の様なものが聞こえているが今は気にしないで置こう。
「でもそれは私が知らないだけで…。実は中学時代から付き合っている人がいたりして…、でもこんな捻くれ者を好きになるのは私くらい…。でも、もしかしたら…、私ってピエロだったんじゃ…。」
神妙な面持ちでブツブツと独り言が長い。
(これは…勝ったな!)
勝利への愉悦、出し抜いた快感、それらが同時に心の器にそそられる。
やがて、美鈴の独り言が止んだ。
「……少し質問良いですか?」
「そちらからの回答にはお答えできませんよ。」
「…ほんのちょっとだけ!」
「しょうがないな…。何だ?」
「その相手って…私の知っている人ですか?」
真剣な表情。曇りなき眼差しには一言一句聞き逃さないという意思が感じられる。
「う〜ん。直接的な表現になっちゃうからな〜。ていうかこれから言い合うんだから誰でも…。」
「非常に重要な事なんですよ!私達の関係性が変わる重大事項なんです!」
「んな大袈裟な…。」
「全然そんな事無いですよ!!」
「分かったよ。そうだな〜、お前の交友関係を把握して無いからなんとも…。」
「そんな〜。」
酷くショックを受けている。まぁ…仕返し出来たし…この辺で許してやるか。
「ぷっ、ははは。冗談だよ。嘘嘘、俺に好きな人なんて居ないよ。」
堪えた笑いが空気の抜けた風船の様に漏れ出す。
「…は?」
ポカンと口を開けたままの美鈴。なんと間抜けに見える事か。
「ふ、ふざけないで下さい!こっちは真剣なんですから!」
「ごめんごめん。誂って、…叩かないで!」
口を膨らませた美鈴がポカポカと叩いてきた。
「もう知りません!駅に着いたので、私は帰ります。また明日。」
開いたドアから一目散に飛び出して行く。少しやり過ぎたかな?
「俺も帰るか…。」
「すげーイチャついてやがるな。なんだ?あの二人」
静かに向かいに座る男性はそう息を漏らしていた。
ご一読いただきありがとうございました!二人にとってはただの意地張り合いですが、周囲から見れば完全にただのバカップルですね。
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