第19話 告白する時は校舎裏って相場が決まってる。
それは突然始まりを告げた。
「どうする?体験入部。」
それは、放課後の時間だった。
「…そうですね。部室を手に入れた今、参加する旨味は…。それに期間中に私達が部を作って参入するのも物理的に不可能ですし…。」
これからの予定を友人と決めるなんて事の無い時間。
「それなら、取り敢えず手当たり次第に声を掛けてみるか?」
「そうですね。それが良い…。」
「倉瀬さん!少しお時間宜しいでしょうか!」
「はい?私ですか?少しなら大丈夫ですが…。」
声を掛けて来た男は何度か見知った顔だ。
(クラスの男子の、えーと、名前なんて言ったかなー。…そうだ、山田だ。)
その山田が倉瀬に何の様だ?いや、このパターンはアレに決まっている!
「その、ここだと話難いので、場所を変えませんか?」
チラりとこちらの方を見た。はいはい、分かってますよ。俺は邪魔で御座いますね…。
「あ、はい。分かりました。浩志くん、すみませんが少し席を外します。」
「いってらー。」
倉瀬も察しがついたのだろう。しょうがないと言った感じで俺に断りを入れると山田に着いて行った。
(舞台は校舎裏、シチュエーションとしては完璧だな。)
些かテンプレ気味だが、寧ろそこが良い。そして当然、後を着けている訳だが…、
これは美鈴を心配しての事であって、どんな告白をするのかが気になると言った下世話なソレとは違うというのを留意してもらいたい。
このパターンを覗…観察していると中学時代の事を思い出すな…。あの時の嘘告は結構きつかった。
数日飯が喉を通らなかったし…。
「それで山本くん。何の話かな?」
気付かない振りをして相手の言葉を引き出そうとしている美鈴。それと山本だった。すまん山本!
「えっと…。」
山本は握り拳を少し震わせていた。言葉を海の中から必死に掬い上げようとしているのだろう。その気持ちは痛い程わかる。同じように俺にも罪悪感が出て来る。
(ここからはプライベートの問題だから、教室に帰ろう。ごめんな山本。)
踵を帰えし、教室に戻ろうとした俺をある一言が足を止まらせた。
「ごめんなさい、山本くん。貴方の気持ちは嬉しいけど…私、好きな人がいるんだ。だから、貴方の気持ちには答えられない。」
申し訳無さそうに美鈴は言った。山本は握り拳を解き、脱力した声で美鈴に問う。
「そうなんだ。一つ聞かせてくれないか?好きな人って誰なんだ?やっぱり萩原とかかな?」
俺は固唾を呑んで聞き耳を立てる。
(だ、誰だよ!萩原って!)
「いえ?違いますけど…。」
「じゃあ、誰なんだ、教えてくれ!」
「それは秘密です。女の娘は秘密がある方が魅力的に写るものなんですよ。」
「そうか…、確かに俺に言う必要はないもんな。手間をかけさせてごめん。」
山本はがっくりと肩を落として、その場を後にする。その後ろ姿は一部始終を観なくても、何があったのかを察する事が出来るだろう…。
だが、俺は奴の事を気に掛ける余裕等無い程に悶々としていた。自然と鞄を持っている手に力が入る。
(あいつ好きな奴とか居たのかよ!俺知らなかったぞ!いや、俺に言う必要は無いかもしれないけど…、何かモヤモヤするな。)
自分の中にある感情に検討もつかず、その場でのたうち回る。そのせいか、近づく気配に気が付く事が出来なかった。
「覗き見とは不躾な人ですね。バレバレですよ。」
美鈴にバレたのだ。
「何時から?」
「浩志くんが良く分からない動きをした時から…と言いたいところですが、最初からですよ。」
「え、嘘だろ?」
「本当ですよ。私、こんな見た目をしているんで人の視線とか気配に敏感なんです。」
フフンと胸に手を当てる。という事はマジに最初から?ヤバイ、めちゃ恥ずかしいんだけど…。
「そ、そうか。確かに山本には悪い事をしたな。後で謝らなきゃ。」
「そうですよ。一世一代の告白なんですから。幾ら私が心配だからって。気持ちは嬉しいですけど…。」
「合ってるけど美鈴に言われるのは釈だな。別に良いけど。」
「良いですね良いですね。名前呼びが板に付いてきたじゃないですか。分かりますよ、仲がいい女の子が取られるかと思って居ても立っても居られない気持ち。」
美鈴はニヤニヤとした笑みで俺を嘲笑う。
「調子に乗るなよ。そんなんじゃないから。心配だっただけ。断じてそんな感情では無い!」
「いいですよ照れなくても♪いやー、愛されてるな私!」
「もういい!心配して損をした。今日はもう帰るから部活の人数集めはまた明日だ。」
「ええー!…もうしょうがないな浩志くんは。じゃあ鞄を取りに教室に…。ってあれ?そう言えば浩志くんなんで荷物を既に?…あー!さては勝手に帰るつもりでしたね!」
バレた。流石に告白された後では部員募集をする空気では無くなるだろうと踏んでいた。
「高校からといえこれが帰宅部の本気ってやつだ。」
「意味が分からない事を言わないの!一緒に帰るからちょっと待ってて下さい!直ぐに教室に取りに行きますから!」
美鈴はダッシュで駆けて行く。一瞬で見えなくなった。
…そう言えばあいつの好きな人ってどんな奴なんだろ?想像もつかないな…。
ここまでお読みいただきありがとうございます美鈴ちゃんの好意が隠しきれていないどころか、ほぼ直球な気もしますが、鈍感陰キャ男子の壁は厚いようです。今後も二人のじれったい距離感を描いていきますので、気に入っていただけましたらブックマーク、ポイント評価をぜひよろしくお願いいたします!明日も18時に投稿予定です!




