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第16話 強欲な女の娘も可愛いと思う。

 「それでは私はこれで。この件は後ほど。」


 それだけ言い残すと、平泉先輩は部室から出ていった。


 「終わった…。」


 「いやぁ…何とか誤解は解けましたね。」


 「ああ、一先ずはな…。」


 実際、どこまで信用して貰えたんだか…。あの様子だと、全部って事は無いだろう。


 「はぁ〜疲れた。もう帰ろうぜ。」


 「そうですね。お掃除も一段落しましたし。」


 「先生に鍵の返却と掃除の完了の報告をしてくるか。」


 せっせと掃除用具を片付け、下校の準備に取り掛かり、教室がある棟の職員室まで、足を運んだ。


 

 「すいません。白山先生は居ますか?」


 「白山先生なら今、来客の応対で席を外しているよ。」


 「え、マジですか。タイミングが悪いな…。」


 「まぁ、そんなに時間は掛からないと思うから、少し待っているといい。」


 「じゃあ、そうします。」


 初老の男性教師に促され、邪魔にならないように倉瀬と共に待機する。

 部屋には珈琲の香りに満ちており、各々の教師が仕事に邁進していた。


 「…なんだか二人で怒られているみたいですね。」

 

 倉瀬が教師に聴こえないように耳打ちをしてくる。耳に息が当たってこそばゆいし、こいつのこういう仕草にドキドキしてしまう自分が悔しい…。


 「そうだな。馬鹿な女子生徒と巻き込まれる可哀想な男子生徒には見えないだろうな。」


 俺の嫌味に倉瀬はムスッと、顔を膨らませる。丸で向日葵の種を口一杯に頬張るハムスターのようで可愛い。


 「もう…秋元さんは本当に素直じゃありませんね。そんな事は言っても内心ではラッキーと思っているくせに。」


 「はいはい…。」 


 「投げ槍に返事しない!もっと誠意を持って。構って下さい!」


 「ウザ…。それはそうと、俺には少し気になる事がある。」


 「…何ですか?」 


 「これの事だ。」


 見せたのは手に持っている鍵。文芸部とタグに書いてある。


 「この鍵がどういう?」


 「当初の話では、俺達はこの鍵を貰う事で同意した。」


 「ええ、文芸部の部室は私達のものになりますね。」


 「その後、どうするつもりだ?」


 「それは…文芸部を復活させても良いですし…、また別の部活を新しく作るのでも構いませんが…。」


 「やっぱり忘れているな。お前の頭の中だと、部員は俺達二人だけになっているだろう?」


 「ええ、そのつもりですが…。もしかして?」


 「そうだ。部を設立するでも、継続するにも部員の人数が足りない。」


 「…と言う事は私二人でやる事は不可能…。」


  想像以上にがっかりしている倉瀬はよく分からないが…、やる事は決まっている。


 「どちらでも選んでもどの道部員集めは必須だ。倉瀬は誰か当てはあるのか?」


 「…一人はいます。部活動の最低人数は何人ではしたっけ?」


 「5人だ。後二人か〜。しんどいな。」


 正直なところ…、倉瀬が居るなら人数を集める事事態は簡単だ。このルックスなら女子は無理でと男子の一人や二人、見繕うのは可能性だろう。

 

 でも、何かな〜。倉瀬狙いの下心あり男子を入れるのは少し憚られる。背に腹は代えられないというのに…。


 「お〜、済まん済まん。少し混みいった話で長引いてしまったよ。」


 白山が職員室のドアを開けながら入って来る。


 「掃除、しっかり終わらせましたよ。」


 俺は使い終わった鍵を不躾に返却した。


 「済まん、助かったよお前達。」 


 (済まん済まんって、本当に思っているのか?)


 「そ、その白山先生、何て言うか〜、部室の鍵の件、とかって〜、憶えてます?」


 倉瀬がわざとらしく手を擦りながら、古典的なごま擦りをしながら、尋ねる。


 「おう!勿論、憶えているぞ。この鍵をやる約束だよな。」


 「そうですそうです!」


 「この鍵、あ〜、タグは一応文芸部になっているのか…。まぁ、このままでも大丈夫だろ。文芸部を再興させるのか?」


 「そこはまだ考え中でございます。」


 「早めに考えて置いた方が良いぞ!体験入部の期間が終われば、多くの生徒が身の振り方を決める。せっかく部員を募集しようにも人数がいないなら話にならないからな!」


 白山の言う通りだ。作るしろ、復活させるにしても早めに行動を起こした方が良いのは明白だ。


 「御高説痛み入ります。それじゃ私達はこれで。」


 「おう、気を付けて帰れよ。」


 失礼しましたと言い残し、俺達は職員室を後にする。


 「さて、どうしようかね。」


 「取り敢えず、文芸部の方向性で進めましょうか。後から何かアイデアが浮かべば良いですけど…。」


 「大丈夫かそれ?お前のいるか分からない友達は良いとしても後、2人の部員がそれに納得するとは思えないが…。」


 「一度入部させちゃえば、よっぽどの事をしなくちゃ大丈夫ですよ。それに文芸部の活動も一緒にやれば良いんですよ。制約は無いんだし。」


 何か凄い事を言ってる気がするが、一理はあるな。確かに、〜部と付いているからって、それだけをやらないといけない校則は無いだろう。


 「そんな強欲な事するのはお前ぐらいなもんだよ。この欲張りさんめ。」


 「はい!私は妥協しませんよ。青春を謳歌する為ですから!」


 「そうだったな。じゃあ、これから俺の家で作戦会議でもどうだ?」


 「秋元さんのお家に!?」


 倉瀬がこれまた素っ頓狂な声を出す。そんな変な事言ったか…?

 




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