第13話 女子高生のスカート丈は議論の余地がある
「はぁ〜、恥ずかしい。もしかして昨日から私、みっともなく映っていたのでは…。」
教室に着いてからも倉瀬は、さっきの事を気にしているご様子でスカート丈を長く直していた。
「どうだろ。あまり気にしてないんじゃね。初日だし。聞き捨てだけど、確かに女子高生ってスカートを短くするイメージがあるな。」
「私もよく分かりませんけど…やっぱり可愛いからじゃないですかね。」
「そう言うもんなのかね。」
実際何でなんだろう。帰ったら美波にでも聴いてみるか…。
「中学の時は皆凄く長かったので、密かに憧れていたんですよ。でも加減が分からなかったから。」
男としては嬉しい限りなのかも知れないが、こいつが他の奴からそういう眼で観られるのは何か釈に障る。
「流石にこの時間だと、私達以外は居ませんね。」
静まり返った教室には俺達だけの言葉が反響し、朝日に照らされてノスタルジックな気分にさせる。丸でこの世界には俺達二人だけしか居ないように錯覚させるのだ。
もっとも、直ぐに別の生徒が来て、その空間を閉ざしてしまう訳だが…それはヤボってもんだ。
「直ぐに騒がしくなるさ。それより体験入部の件、見学する部活は決まっているのか?」
「はい、まずは文芸部にしようと思っています。」
文芸部…。名前は知っていても具体的な活動はよく知らないんだよな…。確か、文化祭とかに部誌を発行したりするイメージだけど…。正直よく分からない。
「意外だな。もっと、茶道部とか華道部みたいな如何にも教養があります。みたいなのかと思った。」
「…そこら辺は中学時代のカリキュラムで一通りやってしまったんです。あれは辛かった。」
何か嫌な記憶を呼び覚ましてしまったようだ…。
先述の通り、この学校は人数も多く、それに比例してか部活動の数もめちゃくちゃ多い。文化部、運動部、強豪、弱小、メジャー、マイナー、数限り無い。
倉瀬が新しい部活を作るなら人数も集まりそうなものだが、如何せんまだ、重要な内容が決まっていない。
「それ以外にはないのか?」
「もちろん、文芸部だけじゃなく文化部を全網羅しますよ!」
「…約束したはいいが、俺の疲労も考えてくれるとありがたいな…。」
その後、続々と生徒が教室に入って来た。授業が始まり、二日目とはいえ浮き足立った雰囲気は無く、通常授業へと歩みを進めて行く。
途中、俺達が早く学校へ来た事がどうやら担任に周知されたらしく、帰りのHRの際には「感心感心と」褒められてしまった。
「さっ、秋元さん行きましょう!!」
HRが終わるや否や、テンションの高い倉瀬に引っ張られて教室を後にする。
クラスの男子の恨めしそうな顔が頭に焼き付いているが、精神衛生上良くはないので忘れる事にしよう。
「というわけでこちらが文芸部の活動場所になります。」
倉瀬に連れて来られたのは部室棟の3階。文化系の部活は大体この部室棟が活動場所になっている。 俺達のクラスがある建物からは一回外を経由しなければ行けないが距離は然程遠くない。
倉瀬はコンコンとドアを数回叩く。何だっけ?こういうのは作法があるとか何とか、面接の練習の時にやった記憶があるが見事に忘れている。
「すいません。見学宜しいでしょうか?」
叩いても反応は無い為、口頭で確認する倉瀬。それでも中からは返答すらない。…それどころか人の気配が丸でしない。
「これだけ言ったんだし勝手に入れば?怒られはしないだろ。」
「もう…秋元さんはせっかちですね…。分かりました。失礼しますよ。」
待ち惚けを喰らう俺に愛想を尽かした倉瀬は取手に手を掛けた。
ガラガラと建て付けの悪い音が鼓膜を刺激する。
衝撃で埃がこちらに向かって来た。
「ごほっ!何だよ。めっちゃ埃まみれじゃないか!本当にこの場所であってるのか。人が居た形跡すらないぞ!」
「おかしいですね。聴いた話だとここに文芸部の部室があるって…。」
目の前には大きな長机が一つと椅子が数脚。どれも木製の使い古したような傷が遠くからも確認出来た。
「おいおい…デマ掴まされたんじゃないのか。」
「いや、確かに担任の白山先生に聞いたんですが…。」
何か嫌な予感がする。俺、こういうの意外と当たるんだよな〜。
「あ〜いたいた。秋元、倉瀬、もう来ていたのか。若い奴は行動力があって羨ましいね。」
廊下の端から聴こえてきた野太い声。聞き馴染みのある声に振り向くと担任の白山が現れた。
「ふ〜、この階まで来るのは年々きつくなっている気がするな。お前らも油断しているとこうなってしまうぞ。はっはっは。」
白山は自らの腹を誇張して叩く仕草をして大袈裟に笑う。…嫌な予感がより濃く強くなる。
「あの先生…。この教室は文芸部の部室何じゃ…。こう言ってもなんですけど…活動している形跡が…。」
恐る恐る倉瀬は尋ねる。
「それがな〜、すまん!あれ嘘なんだ!もう廃部している。」
「えぇ〜、どうしてそんな事するんですか!」
「それがな〜…。」
白山はチラっと教室の方を観た。何となく分かって来たぞ。俺達は雑用係という事か
「済まんがここの管理を任されてしまってな〜。掃除を手伝ってくれないか?体験入部ならまだ期間もあるし…。」
何て奴だ!教師の風上にも置けん!誰がやるか!
「頼むよ!手伝ってくれたら、ここの部室を自由にして良いからさ!」
「何ですって?」
高級な餌にまんまと釣られようとしている魚が一匹、隣に泳いでいたらしい。
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