第12話 ラッキースケベも程々に
「…そ、そんな訳無いじゃないですか。また冗談きついですよ。ほら、早く教室に向かいましょう。」
バチクソに目が泳いでいるけど…、これは図星かな。
「ふ〜ん…そう、じゃあその友達とやらと一緒に部活でも始めれば? 倉瀬がどうしても俺とやりたいなら話は違うけど…。」
「うっ…、わ、分かりました。降参です。実はこう見えて、そ、その、ちょーと友達が少ないかな…。」
「ちょっと?…お前、良くそれで俺の事煽れたよな…。」
「ま、まだ入学して2日ですから。これからお友達を増やしていく予定ですから。」
予定って…。予定通りに友達を作れるなら、世の中苦労しないと思う。…こいつの場合、先に聞いた通り家が厳しかった…というのもあるのだろう。あまり茶化すのは良くないな。
「そう言う秋元さんはどうなんですか?私以外と友達が居るようには見えませんが…。」
「それはそうだろ。俺はそう言う高校生活を目指していたんだから。」
「うあ〜、哀しくなるような事言ってる〜。良かったですね。私と友達になれて…。」
倉瀬の憐れみを持った眼が俺の心をグサグサと突き刺す。これはクリーンヒットだ。
「憐れむな。そもそも初っ端から誰かさんのせいで破綻したからな…。大体…、待て、今何て言った?」
「はい?友達になれて良かったですねって…。」
「誰と誰が…。」
「私と秋元さんですよ。何言ってるんですか?」
「俺達は友達なのか?」
「いや、そうですよ。頭でも打ちましたか?」
「いや、大丈夫だ。ちょっと信じられなくてな…。」
そうか、そうだよな。友達か…。
「…?そんな事より、体験入部の件、言質取りましたからね。後でやっぱ無しは出来ませんよ。」
「しないわ!俺が約束を反故にする人間に見えるか?」
「う〜ん。」
「そこは即答してくれないと困るなマイフレンド。友達には信頼関係が必要だろ?」
「さっ、早く行きましょうか。」
「無視は酷い。」
軽口を叩きながら、俺は先に行った倉瀬を追い教室へと階段を登り始めた。
まだ、HRには早い時間だからか周りには人が居ない。だが、ものの数分で生徒がぼちぼち増え始めるだろう。
学級委員だからという理由だけで、言われてもいないのにこんなにも早く学校に登校してくる新入生は教師方からはとても真面目で受けが良い事この上ない。
内心では、こういうちょっとした心掛けが教師方の心象を上げ、のちのちの内申が良くなるのではないかという期待もあったりするのだ。(ないしんだけに!!)
「あっ、そうだ。」
思い出したように倉瀬は階段の上から俺に向き直した。
「敬語辞めようと思うんですけど、構いませんか?」
「…?別に良いけど、それってわざわざ確認する程の事か?」
「念の為ですよ。秋元さんがお嬢様みたいな口調が堪らなく好きだ!って思っているかもしれないじゃないですか?」
「下だらん事を言うな。まぁ、同級生に敬語を使われるのはムズ痒くはあるけど…。」
それもあるが…正直、倉瀬のビジュアルでその口調はかなり親和性が高い。黒髪ロング美少女だもんなぁ、こってこてのお嬢様だ。キャラは立っている。…調子に乗って煽られるから本人には絶対言わないけど…。
「じゃあ、これからは…ため口で行きます。あ、間違えた!」
「そう簡単に週間は抜けないってこった。…大体、他のクラスメイトにも敬語なのか?」
「はい、中学はお嬢様学校だったもので…。校則と言うか、規律と言うか…。めちゃくちゃ厳しかったですよ。」
「へぇ〜、お嬢様学校っていう響きだけは何かそそられるものがあるけどな。」
「外観と内面は全然違いますよ!クラスの子なんて、幼馴染の男の子と電話で話しただけで反省文を書かされていました。」
「マジ、流石にやり過ぎじゃない?怖いわ〜。親は納得してるのそれ?」
「寧ろ、それを望んでいる節がありますからね。お金持ちの子ばかりなので、悪い蟲が付かないように…。その代わりに学校側は多額の寄付を貰っているので喜んで厳しくするんですよ。」
「裏事情怖え〜よ。憧れが砕け散ったわ。」
そんな話をしながら俺達は教室へと向かった。
だが、俺はある事に気が付く。それはとってもデリケートな事だ。
(目、目のやり場が!!)
先も言った通り、倉瀬が前を先行している為、必然的に俺がその下に居る訳だが…、ス、スカートがひらひらと俺の視界を迷わせた。
(ヤバイ見えそうだ!!流石に伝えた方が良いよな?軽蔑されるか?でも、言わないと他の奴が!っいうか何でこいつスカートこんなに短いの!)
仮に今何とかなっても、このままじゃいずれ男子達の間で話題になるのは早いだろう。その前に伝えねば!
「なぁ〜倉瀬。凄ーく言いづらい事があるんだが良いか?」
「何ですか?そ、そんな真剣な顔をされたら困りますよ。」
恥ずかしそうに顔をこちらに向ける。
「パンツ見えそうだから、気を付けた方が良いぞ。」
丸でプロ野球選手の150キロの直球が如く、その言葉は投げかけられた。
「あ!!ごめんなさい。気を付けます!」
びっくりしたのか急いでスカートを押さえる。その勢いで生じる風圧は俺に新たな景色を映させた。
(…水色か…。)
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