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墓地ロック 〜異世界の鎮魂歌がクソだったので、底辺墓守の俺は爆音ライブで魂を救う〜  作者: Kururi


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第9話 勇者は魔王討伐のチケットを手に入れた

「勇者様ー!」

昼の王都。

広場の中心で、勇者ジャスティスは完璧に笑っていた。

白銀の鎧。

腰には国宝『聖剣アークブレイバー』。

誰もが憧れる、この国の英雄。

「握手してください!」

「サインください!」

「魔王も倒してください!」

「もちろんです」

爽やかに答えた瞬間、歓声が上がった。

勇者がいる。

だから大丈夫。

誰もがそう信じている。

そして、その「大丈夫」は全部、彼の背中に乗せられる。

「勇者様! 南の街道でオークの群れが!」

「分かった」

「勇者様! 北の村で盗賊団が!」

「分かった」

「勇者様! 東の森で魔獣が!」

「分かった」

「勇者様! 子供が迷子です!」

「分かった」

「勇者様! 井戸に魔物が!」

「分かった」

「勇者様!」

「勇者様!」

「勇者様!」

「勇者様!!」

――深夜。

ようやく自室に戻ったジャスティスは、鎧のまま椅子へ崩れ落ちた。

机の上には、明日の依頼書。

明後日の討伐計画。

来週の式典案内。

壁には、聖剣アークブレイバー。

勇者だけが抜ける、神に選ばれし者の証。

ジャスティスは、しばらく聖剣を見つめた。

そして。

「お前さぁ」

誰もいない部屋で呟いた。

「選ぶ相手、間違えてないか?」

もちろん返事はない。

ジャスティスは苦笑する。

「剣に選ばれただけなんだぞ、俺は」

聖剣は何も答えない。

沈黙。

そして。

「便利屋じゃないんだぞ……」

頭の中に、声が響く。

勇者様お願いします。

何百回も聞いた言葉だった。

ジャスティスは、昼間とは違う顔で笑った。

「勇者にしかできません、か」

ぽつり。

「それ、褒め言葉じゃないだろ」

月明かりだけが、部屋に差し込んでいる。

「勇者でいるのは……苦しいな。」

コンコン。

扉が叩かれる。

「勇者様」

神官だった。

「王都で奇妙な噂が広まっております」

「噂?」

「第4墓地に、魔王が現れたそうです」

ジャスティスは眉をひそめた。

神官は真顔だった。

「職人が定時帰宅を始めました」

「は?」

「王子が公務中に机を叩き始めました」

「は?」

「聖女様の所在も不明です」

「は?」

神官は一枚の封書を差し出した。

王国印の押された討伐命令書。

魔王討伐。

場所、第4墓地。

ジャスティスはそれを見つめた。

まるで、招待状のようだった。

いや。

地獄へのチケットかもしれない。

「討伐命令です」

ジャスティスは窓の外を見た。

月が浮かんでいる。

そして、誰にも聞こえない声で呟いた。

「……また俺かよ」

その夜。

勇者ジャスティスは聖剣を背負い、第4墓地へ向かった。

魔王を討伐するために。

いや。

本当は、少しだけ気になっていた。

その『魔王』が、どうしてそんなにも人の人生を変えているのか。

墓地の入口に到着する。

奥から聞こえてくる。

重低音。

歓声。

誰かの叫び声。

ジャスティスは聖剣を抜いた。

「魔王……!」

そして墓地へ飛び込む。

目に飛び込んできたのは――

最前列でヘドバンする聖女。

白いドラムの前で、鬼のようにバチを振り下ろす第一王子。

だった。

「……は?」


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